サッカー日本代表・現地リポート アジアカップの舞台で成長を遂げるザック・ジャパン
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「アジアで勝つことの難しさがよく分かった」(吉田麻也)
選手たちのコンディションのばらつきと大会直前の槙野智章(ケルン)と酒井高徳(新潟)の負傷離脱、準備期間の不足に悩まされたザック・ジャパン。「今回のアジアカップ(カタール)は厳しい戦いになる」とアルベルト・ザッケローニ監督も大会前から予想していた。ヨルダン、シリア、サウジアラビアとの1次リーグは、まさにそのとおりの展開となった。
最も苦しかったのは9日の初戦・ヨルダン戦だろう。GKに川島永嗣(リールセ)、最終ラインに今野泰幸(FC東京)と長友佑都(チェゼーナ)、ボランチに遠藤保仁(G大阪)、長谷部誠(ヴォルフスブルク)、2列目に松井大輔(グルノーブル)、本田圭佑(CSKAモスクワ)と南アW杯16強経験者を多く揃えた日本だったが、素早い寄せと球際の強さを前面に押し出し、組織的に守るヨルダンを思うように攻略できなかった。選手たちの試合勘が鈍っていたこともあって、日本の攻撃はスピードアップもできなかった。
前半最大の決定機は41分、香川真司(ドルトムント)が巧みに中央をすり抜けGKシャフィと1対1になったシーンだったが、シュートは正面に飛んでしまう。「こういう大会ではワンチャンスを決めないといけないと強く感じた」と本人も反省しきりだった。
そんな最中の前半終了間際、大きなアクシデントが起きる。ヨルダンの右MFアメルを長友と長谷部が止めに行ったところをかわされ、今野のスライディングも空振りに終わった。次の瞬間、中央にいたハサンがパスを受けシュート。止めに行った吉田麻也(VVVフェンロ)の左足に当たってコースが変わりゴール。日本は劣勢に追い込まれた。
「南アで優勝したスペインも初戦負けた。必ずしも初戦の勝利がすべてではない」とザッケローニ監督は話していたものの、黒星は痛い。後半には李忠成(広島)、岡崎慎司(清水)ら持てるカードを次々と切って巻き返しを図る。岡崎が入って2列目の並びが右・本田、中・香川、左・岡崎となってからは攻撃の連動性が上がり、リズムも出てきた。が、肝心な得点が奪えないまま時間が過ぎていく。そんな後半ロスタイム、起死回生の同点弾が生まれる。日本は香川が左ショートコーナーから長谷部へ素早くパス。彼はファーサイドを狙ってクロスを上げた。ここに飛び込んだのが失点に絡んだ吉田。189cmのDFのヘッドが豪快にゴールネットを揺らしたのだ。
中澤佑二(横浜FM)、田中マルクス闘莉王(名古屋)という南アW杯の守備の大黒柱を欠く中、今大会の守備は若い吉田に懸かっている部分があった。その彼がいきなり見せ場を作ったことは大きかった。本人も「同点弾が決まってかなりほっとした。遅れた状況で足を出すとああなってしまう。アジアで勝つことの難しさがよく分かった」と言う。この経験が成長の糧になるのだろう。
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