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新大久保駅3人死亡:日韓の距離縮め10年 26日偲ぶ会

事故のあったJR新大久保駅の現場付近=東京都新宿区百人町1で、池田知広撮影
事故のあったJR新大久保駅の現場付近=東京都新宿区百人町1で、池田知広撮影
JR新大久保駅に設置された、関根さんと李さんの顕彰碑=池田知広撮影
JR新大久保駅に設置された、関根さんと李さんの顕彰碑=池田知広撮影

 東京都新宿区のJR山手線新大久保駅で、ホームから転落した男性を助けようとした韓国人留学生の李秀賢(イ・スヒョン)さん(当時26歳)とカメラマンの関根史郎さん(同47歳)が亡くなってから、26日で10年がたつ。ホームの安全対策に目が向けられるようになったこの事故は、日韓の距離を縮める契機にもなったとされる。26日には都内で、李さんを偲(しの)ぶ会が開かれ、父の李盛大(イ・ソンデ)さん(71)と母辛潤賛(シン・ユンチャン)さん(61)が来日して参加する。高齢の2人に配慮し、公式開催は今年で一区切りにするという。【池田知広】

 事故は01年1月26日午後7時過ぎに起きた。アルバイトを終え、友人に会いに行こうとしていた李さんは、酒に酔って線路に転落した男性を助けようと、関根さんと飛び降り、電車にはねられて3人とも亡くなった。

 李さんが通っていた荒川区の日本語学校「赤門会」の新井時賛(ときよし)理事長は、李さんについて「明るい人気者だった」と話す。00年1月、高麗大を休学して来日。日本とマウンテンバイクが大好きで、「本州を自転車で巡りたい」と、ビザを延長した直後の事故だった。

 李さんらの勇気は大きな反響を呼んだ。政府要人が通夜などに次々と弔問に訪れ、韓国メディアは「前例のない日本社会の動き」と大々的に報じた。李さんを描いた日韓合作映画「あなたを忘れない」も製作された。02年にはサッカー・ワールドカップが両国で開かれ、04年にはドラマ「冬のソナタ」などで韓流ブームに火がつく。新井理事長は「相互に反日、嫌韓感情が残る中、韓国人が日本人のために命をなげうった衝撃が、日本人の韓国人に対する思いを変えたのでは」と指摘する。

 事故直後の01年2月、国土交通省は鉄道事業者に対し、ホーム上の乗客らが押せる非常停止ボタンの整備などを求めた。06年施行のバリアフリー新法は「乗降口の位置がどの車両も同じ」などの条件が合えば、新設駅にホームドアの設置を義務付けた。

 だが、費用などの面から、ホームドアの設置はあまり進んでいない。国交省によると、安全対策が必要とされる利用者1日5000人以上の駅は全国に約2800あるが、10年3月現在、ホームドアが設置されているのは449駅に過ぎない。JR東日本は500億円かけ、山手線全29駅にホームドアを設けるが、完了は18年の予定だ。今月16日には山手線目白駅で全盲のマッサージ師の男性が電車にはねられて亡くなるなど、転落事故はその後も後を絶たない。

 「故李秀賢君を偲ぶ会」は26日午後4時から、東京都千代田区の主婦会館プラザエフで開催される。盛大さんが講演するほか、届いた見舞金を基に02年に設立された「エルエスエイチアジア奨学会」の関係者も出席する。

毎日新聞 2011年1月22日 11時52分(最終更新 1月22日 12時51分)

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