侍の国と呼ばれていた時代が今は昔となってしまった江戸の町、いまではこの国は事実上「天人」と呼ばれる異星人によって支配されているのが現状だ。
そのため今のこの国の有り様に不満を募らす連中、「攘夷浪士」と呼ばれる奴等が現れてしまった。
「攘夷浪士」は「天人」からこの国を救うというお題目の元で行動を行っている、過激な連中なんかはテロ行為も辞さない危険な連中である。
そんな奴等から江戸の治安を守るために、彼等「真選組」という組織は存在している。
軸足に重点を置き、体が前屈みにならないようにしてラケットを構える。
体に余計な力が入らないように意識する、変に力を入れてしまうとシャトルへ力が伝わりにくいのだ。
頭の中でシャトルの軌道をイメージする。
スマッシュを行うための最適な位置へシャトルが来た瞬間、一閃、何千・何万と繰り返して素振りしてきた完璧なフォームよりラケットが空を切る。
見事にスマッシュが決まり、シャトルが開いてコートに叩きつけられるイメージが自然と浮かぶようだ。
「よし、今日も絶好調」
「何が絶好調だ」
「痛っ!?」
ミントンの素振りをしていた最中、何時の間にか後ろに立っていた男に頭を小突かれる。
「何、仕事中にミントンやってるのかなー、山崎くん?」
「ふ、副長!?」
自分に不意打ちを喰らわせたくわえ煙草の男が、自分の上司である土方十四郎である事を理解して男は怯えた。
過去も仕事中にミントンをやっている事がバレて、ボコボコにされた経験がある事を思い出した男は咄嗟に言い訳を始める。
「い、いや…副長!?これは遊んでいたのではなく次の任務に備えて、緊張感を維持をするためにミントンを行なっていただけで…」
「くだらねー言い訳をしてるんじゃねぇ。いいから着いて来い、お前がミントンをしながら備えていた次の任務をして貰うぞ」
「は、はい」
「潜入捜査ですか?」
「そうだ、お前には今日からこの美術館に潜り込んで貰う。何でもその美術館を襲う計画を攘夷浪士が建てているらしいんでな」
ミントンをしていた男、山崎退は真選組の監察方(密偵)の職に就いている。
攘夷浪士の中に潜り込み、計画を阻止する仕事は朝飯前なのだが…どうも今回の仕事に山崎は違和感を感じていた。
「はー、攘夷浪士がですか。奴等が美術館なんかに何の用が有るんですかね、もしかしてその美術館には天人が絡んでるんじゃ…」
攘夷浪士は天人を敵視している、もしその美術館に天人と繋がりが有るのなら襲撃の計画があってもおかしくは無いと山崎は考えた。
しかしその推測は土方によってバッサリと否定されてしまう。
「いや、その可能性は低いだろ。その美術館は鴻上ファウンデーションが経営しているからな」
「えっ、鴻上ファウンデーションってあの財団の…」
鴻上ファウンデーション、それは近年に突然力を付けた謎の巨大財団である。
未だに全貌が掴めていない存在だが、少なくとも「天人」との繋がりが有るという噂は今のところ無い。
そのため攘夷浪士達がテロのターゲットとして選ぶ可能性が無いとも言えないが、少なくとも優先度は極めて低いと考えてもよいだろう。
「でも、天人が絡んで無いなら何で美術館なんかに…」
「それが解らないからお前に探って貰うんだろうが。頼んだぞ、山崎」
「了解です、副長」
鴻上ファウンデーションが経営する美術館に警備員として潜入した山崎、美術館の内部から調査を開始し始めたが…。
(はー。もう潜入してもう二週間になるけど、全くの収穫無しかー)
攘夷浪士達が狙う位なのだから、美術館を装って武器等の保管庫にでもなっているとも思って色々と探ったが、此処に有るのは訳の解らない美術品だけ。
(ヤバイ、マジで手詰まりになってきた!?もう一層、此処に襲ってくる攘夷浪士達を捕まえた方が早いんじゃ…)
思考が警察に有るまじき危険な方向になり始めた山崎だが、同じ警備員の服装を着た男に声を掛けられてその思考を止められる事になった。
「どうしたんですか、山崎さん。そんなに難しい顔をして?」
「ああ、火野くん。 いや、ちょっとウトウトしちゃってね…」
この美術館の警備員をアルバイトでしている、火野映司に声を掛けられる山崎。
どうやらよからぬ考えをしていた事が顔にも出ていたらしく、火野に不審に思われたらしい。
「駄目ですよ、眠っちゃたら。 俺達は今日の夜勤当番なんですから」
「はっは、それもそうだね」
今、山崎は美術館の夜間の警備勤務を行っている。
よくよく考えてみればこの時間には自分達と他数名の警備員しか美術館に居ないため、攘夷浪士達が押し入る絶好の機会と言えるだろう。
(まずい、これは気を引き締めないとな)
攘夷浪士達の意図は結局解らなかったが、真選組として最低でも此処を守らなければならない。
自分に課せられた使命を再確認した山崎は、改めて自分の任務を全うする事を決意するのだった。
「…それでその前の上司が横暴でさー、何につけても言葉と一緒に手が出てくるんだよ」
「へー、それは大変でしたね」
無駄な決意から数十分後、眠気覚ましに興じ始めた火野との雑談で山崎はすっかりと自分の任務を忘れていた。
「いやー、今でもあの上司の事は夢に見るよ。全く、仕事中にミントンぐらい許してくれてもいいじゃんかよ!?」
「し、仕事中にミントンはまずいんじゃないですか…」
火野の朗らかな人柄につい気が緩んでしまい、思いっきり愚痴を始めた山崎。
勿論、山崎の言う前の上司というのはあの鬼の副長である事は言うまでもない。
「本当、火野くんが羨ましいよ。火野くんは世界中を旅してるんでしょ?」
「はい、このバイトも次の旅の資金を集めるためにやっています」
聞く所によるとこの火野という青年は、世界を放浪してい回っていると言う。
本来なら警察官として定職も持たずにフラフラする青年を止めるべきなのだが、
今の環境に不満が溜まりっ放しの山崎には、火野の自由さがとても輝いて見えていた。
「いいよなー、旅。俺も何処か他の場所へ旅立って、こんな面倒な仕事から開放されたいよ…」
「いやー、そうとも限らないですよ、山崎さん」
「えっ!?」
何か思い出しているのか、何処と無く遠くを見つめたような視線で火野は語りだした。
「俺も色々とそこら中を見て回ってきましたが、解った事がひとつだけ有るんです」
「解った事って、一体どんな事が?」
「結局、何処に行っても楽園なんて物は存在しない。皆それなりに苦労して生きていました」
楽して助かる命が無いのは何処も一緒ですよ、そう言い火野は山崎を励ます。
「はー、やっぱりそうだよな。楽して助かる命は無いのは何処も一緒ねー…」
それを聞き、現実の厳しさを教えられて落ち込む山崎であった。
「ぐーがー」
「うーん、土方のアホーー…」
その後、話し疲れた山崎と火野は夜間警備を忘れて眠ってしまった。
この間に同僚の警備員に成りすましていた攘夷浪士達が、美術品を盗難しようとしていた事。
そして美術品の一つに封印されていた欲望の化身、「グリード」と呼ばれる怪人たちが目覚めた事に気付かぬまま…。
「なんじゃこりゃーーーー!!」
目が覚めた山崎は無残にも荒れ果てた美術館を目撃し、驚愕の声を轟かせた。
「えっ、マジ!? 俺が寝ている間に攘夷浪士達が美術館を滅茶苦茶にしちゃったのかー!!」
正確には攘夷浪士のちょっかいによって目覚めたグリード達と鴻上の私兵であるライドベンダー隊との戦闘の結果なのだが、勿論暢気に眠りこけていた山崎が知る筈も無い。
「ヤバイ、これはマジでヤバイぞ…。この事か副長にバレたら、職務放棄とみなされて確実に斬られる!?」
この美術館を襲う計画を建てていた攘夷浪士達を探る筈がまんまも出し抜かれてしまい、しかも事件中に自分は眠っていたという不始末。
このままでは確実に行われるであろう鬼の副長の制裁を逃れるため、山崎は必死に考えた。
「どうする、どうするー! はっ、そうだ、俺が一人で犯人を捕まえればいいんだ」
常識的に考えて今から犯人を追っても、容易く捕まる筈無いのだがテンパリ中の山崎はそこまで気が回らない。
「よし、そうと決まったら早速、犯人を追っかけないとな 」
その場から駆け出そうとしたら山崎、しかし足元かから金属を弾いた音を聞いて足を止めた。
どうやら何かを蹴飛ばしたらしく、山崎は自分の足元に視線を降ろす。
そこには鳥の紋様が描かれた赤いメダルが落ちていた、山崎は思わずそのメダルを拾って眺めた。
「これは…、何かのメダルか? …あ、こんな事をしている場合じゃ無い!?」
自分が危機的状況に瀕している事に気づいた山崎は、拾ったメダルをポケットに入れてそのまま駆け出した。
とある路地裏で明らかに人と異なる造形の存在、封印より目覚めた3体グリード達は苛立っていた。
「どういう事だ、何故俺のコアメダルが足りない!!」
体中のあちこちに昆虫の特徴を持つ緑色の怪人、ウヴァが自分の激情のままに叫ぶ。
しかしウヴァの下半身は上半身の意匠と比べ、何故か貧相な姿をしていた。
「メズール、何処だー」
他のグリードたちの比べて一回り巨大な下半身を持つ銀色の怪人、ガメルは何かを求めるように視線を彷徨わせる。
ガメルの上半身も下半身のそれと違い、貧弱な造形になっていた。
「コアメダルの在処なら解るよ、どうやらあいつが持っていったらしい」
全体的に猫科のイメージを思わす姿をした怪人、カザリがウヴァの疑問に答えた。
ウヴァの体も他と同じように、上半身が貧しい物となっている。
「何、あいつがか!? くそっ、姿が見えないと思ったら、そんな事をしてたの
「本当、よくやるよね。コアを殆ど失った状態で復活した癖に…」
彼らグリードと呼ばれる存在は、コアメダルと呼ばれる9枚のメダルによって構成されている。
しかし美術館にあった石碑による800年間の封印から開放された時、グリード達は自分たちのコアメダルが何枚か欠けている事に気づいた。
そのため体の一部が不完全な状態、「セルメン」と呼ばれる姿で復活をしてしまったのだ。
「くそっ、コアメダルを取り返してやるぞ」
自分のコアメダルを取り戻すため、ウヴァが動き出した。
山崎は当ても無く江戸を彷徨い、美術館を襲ったであろう攘夷浪士達を探していた。
事件を起こした犯人が街中をうろついている訳が無いのだが、自分の命が掛かっている山崎は気付かない。
「はぁ、はぁ…。くそっ、何処にも見当たらないぞ」
走りつかれて息が切れかけて、その場に立ち止まった山崎は何処からか悲鳴を聞きつけた。
「きゃっ!?」
「えっ、あの声は?」
市民を守る警察の一員である山崎は、すぐさま悲鳴の聞こえた方向へ走り出す。
「何だあれ、新種の天人か!?」
悲鳴が聞こえた現場に辿り着いた山崎、そこで彼は少女に襲い掛かる謎の怪人を目撃する。
青い服を着た少女が何かに苦しむように蹲り、カマキリを擬人化したような姿の怪人が少女と何か話しているようだ。
「くっ、ウヴァのヤミーか?」
「何故コアメダルを奪い、我々から離れたのだ? アンクなら兎も角、お前がそのような行動に出るとはな…」
「ふん、所詮グリードは欲望の化身よ。こんな状態では、カザリ辺りにカモにされるのが目に見えていたからね」
「まあ理由などどうでもいい、コアメダルを返して貰うぞ」
ウヴァによって生み出された緑色の怪人、カマキリヤミーが少女に今にも襲い掛かろうとしていた。
事情が解らないが少女を守るため、山崎はカマキリヤミーに向かって駆け出す。
「止めろ、婦女暴行の罪で逮捕する!!」
「がっ!?」
カマキリヤミーに不意打ちを与えた山崎だが…。
「何だお前は!」
「うわぁーーーーーー!?」
人を大きく上回る強大な力を持つヤミーに歯が立たず、あっさりと返り討ちになってしまた。
「何なのよ、貴方は?」
「安心しろ、俺は警察だ。 此処は俺が引き受けるから、君は早く逃げるんだ」
突然の乱入者に驚く少女に対して、山崎は逃げるように指示をする。
そのまま少女を追い掛けようとするカマキリヤミーに、山崎は再び立ち向かった。
「邪魔をするなー!!」
「ぐへぁーーーーーー!?」
力の差は歴然なのに関わらず、山崎はカマキリヤミーに立ち向かい続けた。
その姿を見ていた少女は、謎の乱入者の正体にこう結論を付けた。
「何だ、ただの馬鹿か」
「ちょっと待て!? 君のピンチに颯爽と現れた俺に対して、馬鹿呼ばわりとはどういう事だー!!」
少女の自分に対しての扱いに思わず抗議を入れる山崎だが、その隙をカマキリやミーは見逃さず手痛い一撃を喰らってしまう。
「いい加減にしろー!!」
「うわぁ!?」
カマキリヤミーの強烈な一撃に、山崎は吹き飛ばされてしまう。
その衝撃で山崎のズボンから先ほど拾った赤いメダルが零れ落ちてしまった、それを見て驚きを露にする少女。
「あ、あれは!? ……もうこの手しか無いようね」
山崎が落としたメダルを拾った少女は、そのまま倒れ付している山崎の側に近寄る。
「君は…、逃げろって言ったじゃないか」
「ねえ、貴方。 名前は何て言うのかしら?」
「えっ…、山崎 退だけど…」
「そう、サガルね」
山崎の名前を聞いた少女は、長方形の形をした何かを取り出した。
「サガル、貴方の勇気には感心したわ」
「いや、さっき馬鹿呼ばわりされたばっかりなんだけど…」
少女の手のひら返しの思わず突っ込みを入れた山崎だが、気にせず少女は話を続ける。
「あのヤミーは強力よ、このままでは私たちは二人ともやられてしまうわ」
手に持った板状の物を山崎の腰に近づける少女、するとその板状の物が光りだした。
光と共に板の上層部を覆っていた物が弾けとび、オーズドライバーが山崎の腰に巻きついた。
「うわっ、何だこれは」
「そ、それは、封印の…」
突然、腰に訳の解らないベルトが巻かれたのを見た山崎と、そのベルトを見たカマキリヤミーは驚きの声をあげた。
「ふっふっふ、私が持っていたのはコアメダルだけじゃ無かったのよ」
「おい、これは一体…」
「サガル、私たちが生き残るには奴を倒すしかないわ」
山崎の疑問を意に介さず少女は山崎が拾った物を含む三枚のメダルを、山崎に手渡す。
「メダルが三枚、此処に嵌めこむのよ。 そうすれば力が手に入るわ」
「力が…?」
「乗せられるな!? その力を使えばただでは済まないぞ!!」
少女に言われるがままメダルを嵌めようとした山崎だが、カマキリヤミーの静止の声を聞いて手を止めてしまう。
「おい、あのカマキリ野郎が滅茶苦茶焦った声で止めたぞ!? このメダルってそんなにヤバイのか?」
「多少のリスクが何よ、このまま私と共倒れをしたいの?」
「やっぱりリスクがあるんじゃねーかよ!?」
「早くしなさい、サガル! 変身するのよ!!」
「止せーーーーーー!?」
攘夷浪士を追っていたら何故か怪人と戦う嵌めになり、終いには助けた少女に変身しろと命令される。
何で俺がこんな目に遭うんだと現実逃避しかけた山崎だが、ふと昨晩に聞いた火野の言葉を思い出す。
そこで山崎は覚悟を決めて、少女に向かって意味有りげな笑みを浮かべた。
「な、何なのよ…」
「いや、ちょっとした事を思い出してね」
山崎は自分が今朝拾った赤いメダルを天高く弾き、それを再びキャッチする。
「楽して助かる命が無いのは何処も一緒か…、確かにその通りかもな!!」
その言葉とともに山崎は、ベルトのバックル部にそれぞれ鷹・虎・飛蝗の意匠をした3枚のメダルを嵌めこむ。
ベルトが嵌めこまれたバックル部分、オーズテドラルが斜めに傾いた。
「これを使いなさい」
少女が駆け寄りベルトの腰部分に接続されていた円形の物体、オーズキャナーを山崎に渡す。
山崎はそのオーズキャナーを手に持ち、3枚のメダルの上をなぞる様に滑らす。
"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。
高らかな金属音が鳴り響き、山崎は自然とこう呟いた。
「変身っ」
"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。
"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。
何処からか聞こえてきた歌とともに、山崎の体が光に包まれる。
そして次の瞬間、山崎の姿は「仮面ライダーOOO」へと変わっていた。
「何だ、あの歌は!? タカ、トラ、バッタ、って一体…」
「歌は気にしなくていいわ、それはオーズ。 それならあのヤミーに勝てるわ」
「気にするなって言っても…、うわ。 何か体も変わっている!?」
山崎は突然聞こえてきた歌や、自分の姿が変わっている事に驚いていた。
頭部は赤い鳥の紋様に緑の複眼が、上半身は黄色く腕に虎の爪のような物が備わり、下半身は緑色。
胸には上から腰に嵌めたメダルと同じように、鷹・虎・飛蝗が描かれている。
「くっそー、コアメダルを渡せーーー!!」
「うわぁ!?」
その間にカマキリヤミーが変身した山崎、オーズに向かって攻めかかってきた。
カマキリヤミーが腕にある鎌で襲い掛かってくるのを見た山崎は、咄嗟にその鎌を振りおろす腕を受け止めた。
「へっ?」
「くっそーー!!」
先ほどまでの自分ならあっさり吹き飛ばされている筈だったが、今の山崎は余裕でヤミーの力を受け止める事が出来る。
そのまま山崎はヤミーに対して、自分の腕に付いている虎の爪のような物で斬りかかり反撃を与えた。
「おおー、スゲー! 力が溢れてきた!!」
山崎は今までのお返しとばかりに飛び掛り、連続で蹴りを浴びせていく。
「ぐはっ!?」
その攻撃に思わず蹲るカマキリヤミーだったが、まだ余力が有るらしく山崎に腕の鎌で斬りかかってきた。
「図に乗るなーーー!!」
「だーーっ!?」
カマキリヤミーの猛攻にたじろぐ山崎、それを見た少女はもう一枚のメダルを取り出した。
「サガル、これを使いなさい」
「えっ?」
山崎に緑色のメダルを投げ渡す少女、それを受け取った山崎は虎のメダルと交換して再びオーズキャナーを滑らす。
"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。
"タカッ!"、"カマキリッ!"、"バッタッーー!!"。
また例の歌が響き渡り、山崎の体を光が包んでいく。
そして光が止むと山崎の姿は腕の虎のような爪が無くなり、変わりにカマキリヤミーと同じような緑色の鎌が備わっていた。
「ええーーー、また姿が変わったーーー!!」
「まだメダルかあったのか!? くそっ、コアメダルを渡せーー!!」
またカマキリヤミーが鎌で山崎に襲い掛かってくる、しかし山崎は逆に自分の手に備わる鎌でカマキリヤミーを切り裂いていく。
カマキリヤミーが切り裂かれていき、それに合わせて傷口から灰色のメダルが落ちていく。
「せいっ、せいっ!」
「くっ…」
山崎の猛攻に倒れるカマキリヤミー、そこで山崎は止めを刺そうと腕の鎌に力を溜めていく。
そしてそのままカマキリヤミーに飛び掛り、山崎は渾身の一撃を繰り出した
「はーーーー、せいやーーーーーーー!!」
「ぐわぁーーーーーー!?」
その一撃を受けたカマキリヤミーは、爆発して自分の体を構成していたメダルがばら撒かれた。
「えっ、あのカマキリ野郎はメダルで出来ていたのか? …ていうか正当防衛とは言え、天人を殺害しちゃったよーー、俺!?」
もしあの天人が何らかの大物だったら、確実に外交問題に発展してしまう。
そうなったら自分は確実責任を取らなければならず、もしかしたら自分だけでなく真選組全体に責任が掛かるかもしれない。
「どうすんの、俺!? どうするーーーーーー!!」
「……やっぱり唯の馬鹿ね」
最悪の想像に悶える山崎の狂態を眺めて、少女は辛辣な発言をするのであった。