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[25341] 【習作】ジミーとメダルと女怪人と(仮題) (銀魂×仮面ライダーOOO)
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:c79db0de
Date: 2011/01/22 15:03
何か思いついたので、練習がてら書いてみました。

とりあえず週一更新を目指して頑張ります。

予定では有る程度OOOサイドの話を進めたら、銀魂サイドの話に移る予定です。

01/09:1話投下
01/13:2話投下、誤字訂正
01/22:3話投下、誤字訂正



[25341] メダルとミントンと謎の少女
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:c79db0de
Date: 2011/01/14 00:13
侍の国と呼ばれていた時代が今は昔となってしまった江戸の町、いまではこの国は事実上「天人」と呼ばれる異星人によって支配されているのが現状だ。

そのため今のこの国の有り様に不満を募らす連中、「攘夷浪士」と呼ばれる奴等が現れてしまった。

「攘夷浪士」は「天人」からこの国を救うというお題目の元で行動を行っている、過激な連中なんかはテロ行為も辞さない危険な連中である。

そんな奴等から江戸の治安を守るために、彼等「真選組」という組織は存在している。





軸足に重点を置き、体が前屈みにならないようにしてラケットを構える。
体に余計な力が入らないように意識する、変に力を入れてしまうとシャトルへ力が伝わりにくいのだ。
頭の中でシャトルの軌道をイメージする。
スマッシュを行うための最適な位置へシャトルが来た瞬間、一閃、何千・何万と繰り返して素振りしてきた完璧なフォームよりラケットが空を切る。
見事にスマッシュが決まり、シャトルが開いてコートに叩きつけられるイメージが自然と浮かぶようだ。

「よし、今日も絶好調」
「何が絶好調だ」
「痛っ!?」

ミントンの素振りをしていた最中、何時の間にか後ろに立っていた男に頭を小突かれる。

「何、仕事中にミントンやってるのかなー、山崎くん?」
「ふ、副長!?」

自分に不意打ちを喰らわせたくわえ煙草の男が、自分の上司である土方十四郎である事を理解して男は怯えた。
過去も仕事中にミントンをやっている事がバレて、ボコボコにされた経験がある事を思い出した男は咄嗟に言い訳を始める。

「い、いや…副長!?これは遊んでいたのではなく次の任務に備えて、緊張感を維持をするためにミントンを行なっていただけで…」
「くだらねー言い訳をしてるんじゃねぇ。いいから着いて来い、お前がミントンをしながら備えていた次の任務をして貰うぞ」
「は、はい」





「潜入捜査ですか?」
「そうだ、お前には今日からこの美術館に潜り込んで貰う。何でもその美術館を襲う計画を攘夷浪士が建てているらしいんでな」

ミントンをしていた男、山崎退は真選組の監察方(密偵)の職に就いている。
攘夷浪士の中に潜り込み、計画を阻止する仕事は朝飯前なのだが…どうも今回の仕事に山崎は違和感を感じていた。

「はー、攘夷浪士がですか。奴等が美術館なんかに何の用が有るんですかね、もしかしてその美術館には天人が絡んでるんじゃ…」

攘夷浪士は天人を敵視している、もしその美術館に天人と繋がりが有るのなら襲撃の計画があってもおかしくは無いと山崎は考えた。
しかしその推測は土方によってバッサリと否定されてしまう。

「いや、その可能性は低いだろ。その美術館は鴻上ファウンデーションが経営しているからな」
「えっ、鴻上ファウンデーションってあの財団の…」

鴻上ファウンデーション、それは近年に突然力を付けた謎の巨大財団である。
未だに全貌が掴めていない存在だが、少なくとも「天人」との繋がりが有るという噂は今のところ無い。
そのため攘夷浪士達がテロのターゲットとして選ぶ可能性が無いとも言えないが、少なくとも優先度は極めて低いと考えてもよいだろう。

「でも、天人が絡んで無いなら何で美術館なんかに…」
「それが解らないからお前に探って貰うんだろうが。頼んだぞ、山崎」
「了解です、副長」











鴻上ファウンデーションが経営する美術館に警備員として潜入した山崎、美術館の内部から調査を開始し始めたが…。

(はー。もう潜入してもう二週間になるけど、全くの収穫無しかー)

攘夷浪士達が狙う位なのだから、美術館を装って武器等の保管庫にでもなっているとも思って色々と探ったが、此処に有るのは訳の解らない美術品だけ。

(ヤバイ、マジで手詰まりになってきた!?もう一層、此処に襲ってくる攘夷浪士達を捕まえた方が早いんじゃ…)
 
思考が警察に有るまじき危険な方向になり始めた山崎だが、同じ警備員の服装を着た男に声を掛けられてその思考を止められる事になった。
「どうしたんですか、山崎さん。そんなに難しい顔をして?」
「ああ、火野くん。 いや、ちょっとウトウトしちゃってね…」

この美術館の警備員をアルバイトでしている、火野映司に声を掛けられる山崎。
どうやらよからぬ考えをしていた事が顔にも出ていたらしく、火野に不審に思われたらしい。

「駄目ですよ、眠っちゃたら。 俺達は今日の夜勤当番なんですから」
「はっは、それもそうだね」

今、山崎は美術館の夜間の警備勤務を行っている。
よくよく考えてみればこの時間には自分達と他数名の警備員しか美術館に居ないため、攘夷浪士達が押し入る絶好の機会と言えるだろう。

(まずい、これは気を引き締めないとな)

攘夷浪士達の意図は結局解らなかったが、真選組として最低でも此処を守らなければならない。
自分に課せられた使命を再確認した山崎は、改めて自分の任務を全うする事を決意するのだった。











「…それでその前の上司が横暴でさー、何につけても言葉と一緒に手が出てくるんだよ」
「へー、それは大変でしたね」

無駄な決意から数十分後、眠気覚ましに興じ始めた火野との雑談で山崎はすっかりと自分の任務を忘れていた。

「いやー、今でもあの上司の事は夢に見るよ。全く、仕事中にミントンぐらい許してくれてもいいじゃんかよ!?」
「し、仕事中にミントンはまずいんじゃないですか…」

火野の朗らかな人柄につい気が緩んでしまい、思いっきり愚痴を始めた山崎。
勿論、山崎の言う前の上司というのはあの鬼の副長である事は言うまでもない。

「本当、火野くんが羨ましいよ。火野くんは世界中を旅してるんでしょ?」
「はい、このバイトも次の旅の資金を集めるためにやっています」

聞く所によるとこの火野という青年は、世界を放浪してい回っていると言う。
本来なら警察官として定職も持たずにフラフラする青年を止めるべきなのだが、
今の環境に不満が溜まりっ放しの山崎には、火野の自由さがとても輝いて見えていた。

「いいよなー、旅。俺も何処か他の場所へ旅立って、こんな面倒な仕事から開放されたいよ…」
「いやー、そうとも限らないですよ、山崎さん」
「えっ!?」

何か思い出しているのか、何処と無く遠くを見つめたような視線で火野は語りだした。

「俺も色々とそこら中を見て回ってきましたが、解った事がひとつだけ有るんです」
「解った事って、一体どんな事が?」
「結局、何処に行っても楽園なんて物は存在しない。皆それなりに苦労して生きていました」

楽して助かる命が無いのは何処も一緒ですよ、そう言い火野は山崎を励ます。

「はー、やっぱりそうだよな。楽して助かる命は無いのは何処も一緒ねー…」

それを聞き、現実の厳しさを教えられて落ち込む山崎であった。











「ぐーがー」
「うーん、土方のアホーー…」

その後、話し疲れた山崎と火野は夜間警備を忘れて眠ってしまった。
この間に同僚の警備員に成りすましていた攘夷浪士達が、美術品を盗難しようとしていた事。
そして美術品の一つに封印されていた欲望の化身、「グリード」と呼ばれる怪人たちが目覚めた事に気付かぬまま…。











「なんじゃこりゃーーーー!!」

目が覚めた山崎は無残にも荒れ果てた美術館を目撃し、驚愕の声を轟かせた。

「えっ、マジ!? 俺が寝ている間に攘夷浪士達が美術館を滅茶苦茶にしちゃったのかー!!」

正確には攘夷浪士のちょっかいによって目覚めたグリード達と鴻上の私兵であるライドベンダー隊との戦闘の結果なのだが、勿論暢気に眠りこけていた山崎が知る筈も無い。

「ヤバイ、これはマジでヤバイぞ…。この事か副長にバレたら、職務放棄とみなされて確実に斬られる!?」

この美術館を襲う計画を建てていた攘夷浪士達を探る筈がまんまも出し抜かれてしまい、しかも事件中に自分は眠っていたという不始末。
このままでは確実に行われるであろう鬼の副長の制裁を逃れるため、山崎は必死に考えた。

「どうする、どうするー! はっ、そうだ、俺が一人で犯人を捕まえればいいんだ」

常識的に考えて今から犯人を追っても、容易く捕まる筈無いのだがテンパリ中の山崎はそこまで気が回らない。

「よし、そうと決まったら早速、犯人を追っかけないとな 」

その場から駆け出そうとしたら山崎、しかし足元かから金属を弾いた音を聞いて足を止めた。
どうやら何かを蹴飛ばしたらしく、山崎は自分の足元に視線を降ろす。
そこには鳥の紋様が描かれた赤いメダルが落ちていた、山崎は思わずそのメダルを拾って眺めた。

「これは…、何かのメダルか? …あ、こんな事をしている場合じゃ無い!?」

自分が危機的状況に瀕している事に気づいた山崎は、拾ったメダルをポケットに入れてそのまま駆け出した。











とある路地裏で明らかに人と異なる造形の存在、封印より目覚めた3体グリード達は苛立っていた。

「どういう事だ、何故俺のコアメダルが足りない!!」

体中のあちこちに昆虫の特徴を持つ緑色の怪人、ウヴァが自分の激情のままに叫ぶ。
しかしウヴァの下半身は上半身の意匠と比べ、何故か貧相な姿をしていた。

「メズール、何処だー」

他のグリードたちの比べて一回り巨大な下半身を持つ銀色の怪人、ガメルは何かを求めるように視線を彷徨わせる。
ガメルの上半身も下半身のそれと違い、貧弱な造形になっていた。

「コアメダルの在処なら解るよ、どうやらあいつが持っていったらしい」

全体的に猫科のイメージを思わす姿をした怪人、カザリがウヴァの疑問に答えた。
ウヴァの体も他と同じように、上半身が貧しい物となっている。

「何、あいつがか!? くそっ、姿が見えないと思ったら、そんな事をしてたの
「本当、よくやるよね。コアを殆ど失った状態で復活した癖に…」

彼らグリードと呼ばれる存在は、コアメダルと呼ばれる9枚のメダルによって構成されている。
しかし美術館にあった石碑による800年間の封印から開放された時、グリード達は自分たちのコアメダルが何枚か欠けている事に気づいた。
そのため体の一部が不完全な状態、「セルメン」と呼ばれる姿で復活をしてしまったのだ。

「くそっ、コアメダルを取り返してやるぞ」

自分のコアメダルを取り戻すため、ウヴァが動き出した。











山崎は当ても無く江戸を彷徨い、美術館を襲ったであろう攘夷浪士達を探していた。
事件を起こした犯人が街中をうろついている訳が無いのだが、自分の命が掛かっている山崎は気付かない。

「はぁ、はぁ…。くそっ、何処にも見当たらないぞ」

走りつかれて息が切れかけて、その場に立ち止まった山崎は何処からか悲鳴を聞きつけた。

「きゃっ!?」
「えっ、あの声は?」

市民を守る警察の一員である山崎は、すぐさま悲鳴の聞こえた方向へ走り出す。






「何だあれ、新種の天人か!?」

悲鳴が聞こえた現場に辿り着いた山崎、そこで彼は少女に襲い掛かる謎の怪人を目撃する。
青い服を着た少女が何かに苦しむように蹲り、カマキリを擬人化したような姿の怪人が少女と何か話しているようだ。

「くっ、ウヴァのヤミーか?」
「何故コアメダルを奪い、我々から離れたのだ? アンクなら兎も角、お前がそのような行動に出るとはな…」
「ふん、所詮グリードは欲望の化身よ。こんな状態では、カザリ辺りにカモにされるのが目に見えていたからね」
「まあ理由などどうでもいい、コアメダルを返して貰うぞ」

ウヴァによって生み出された緑色の怪人、カマキリヤミーが少女に今にも襲い掛かろうとしていた。
事情が解らないが少女を守るため、山崎はカマキリヤミーに向かって駆け出す。

「止めろ、婦女暴行の罪で逮捕する!!」
「がっ!?」

カマキリヤミーに不意打ちを与えた山崎だが…。

「何だお前は!」
「うわぁーーーーーー!?」

人を大きく上回る強大な力を持つヤミーに歯が立たず、あっさりと返り討ちになってしまた。

「何なのよ、貴方は?」
「安心しろ、俺は警察だ。 此処は俺が引き受けるから、君は早く逃げるんだ」

突然の乱入者に驚く少女に対して、山崎は逃げるように指示をする。
そのまま少女を追い掛けようとするカマキリヤミーに、山崎は再び立ち向かった。





「邪魔をするなー!!」
「ぐへぁーーーーーー!?」

力の差は歴然なのに関わらず、山崎はカマキリヤミーに立ち向かい続けた。
その姿を見ていた少女は、謎の乱入者の正体にこう結論を付けた。

「何だ、ただの馬鹿か」
「ちょっと待て!? 君のピンチに颯爽と現れた俺に対して、馬鹿呼ばわりとはどういう事だー!!」

少女の自分に対しての扱いに思わず抗議を入れる山崎だが、その隙をカマキリやミーは見逃さず手痛い一撃を喰らってしまう。

「いい加減にしろー!!」
「うわぁ!?」

カマキリヤミーの強烈な一撃に、山崎は吹き飛ばされてしまう。
その衝撃で山崎のズボンから先ほど拾った赤いメダルが零れ落ちてしまった、それを見て驚きを露にする少女。

「あ、あれは!? ……もうこの手しか無いようね」

山崎が落としたメダルを拾った少女は、そのまま倒れ付している山崎の側に近寄る。

「君は…、逃げろって言ったじゃないか」
「ねえ、貴方。 名前は何て言うのかしら?」
「えっ…、山崎 退だけど…」
「そう、サガルね」

山崎の名前を聞いた少女は、長方形の形をした何かを取り出した。

「サガル、貴方の勇気には感心したわ」
「いや、さっき馬鹿呼ばわりされたばっかりなんだけど…」

少女の手のひら返しの思わず突っ込みを入れた山崎だが、気にせず少女は話を続ける。

「あのヤミーは強力よ、このままでは私たちは二人ともやられてしまうわ」

手に持った板状の物を山崎の腰に近づける少女、するとその板状の物が光りだした。
光と共に板の上層部を覆っていた物が弾けとび、オーズドライバーが山崎の腰に巻きついた。

「うわっ、何だこれは」
「そ、それは、封印の…」

突然、腰に訳の解らないベルトが巻かれたのを見た山崎と、そのベルトを見たカマキリヤミーは驚きの声をあげた。

「ふっふっふ、私が持っていたのはコアメダルだけじゃ無かったのよ」
「おい、これは一体…」
「サガル、私たちが生き残るには奴を倒すしかないわ」

山崎の疑問を意に介さず少女は山崎が拾った物を含む三枚のメダルを、山崎に手渡す。

「メダルが三枚、此処に嵌めこむのよ。 そうすれば力が手に入るわ」
「力が…?」
「乗せられるな!? その力を使えばただでは済まないぞ!!」

少女に言われるがままメダルを嵌めようとした山崎だが、カマキリヤミーの静止の声を聞いて手を止めてしまう。

「おい、あのカマキリ野郎が滅茶苦茶焦った声で止めたぞ!? このメダルってそんなにヤバイのか?」
「多少のリスクが何よ、このまま私と共倒れをしたいの?」
「やっぱりリスクがあるんじゃねーかよ!?」
「早くしなさい、サガル! 変身するのよ!!」
「止せーーーーーー!?」





攘夷浪士を追っていたら何故か怪人と戦う嵌めになり、終いには助けた少女に変身しろと命令される。
何で俺がこんな目に遭うんだと現実逃避しかけた山崎だが、ふと昨晩に聞いた火野の言葉を思い出す。
そこで山崎は覚悟を決めて、少女に向かって意味有りげな笑みを浮かべた。

「な、何なのよ…」
「いや、ちょっとした事を思い出してね」

山崎は自分が今朝拾った赤いメダルを天高く弾き、それを再びキャッチする。

「楽して助かる命が無いのは何処も一緒か…、確かにその通りかもな!!」

その言葉とともに山崎は、ベルトのバックル部にそれぞれ鷹・虎・飛蝗の意匠をした3枚のメダルを嵌めこむ。
ベルトが嵌めこまれたバックル部分、オーズテドラルが斜めに傾いた。

「これを使いなさい」

少女が駆け寄りベルトの腰部分に接続されていた円形の物体、オーズキャナーを山崎に渡す。
山崎はそのオーズキャナーを手に持ち、3枚のメダルの上をなぞる様に滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


高らかな金属音が鳴り響き、山崎は自然とこう呟いた。

「変身っ」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。


何処からか聞こえてきた歌とともに、山崎の体が光に包まれる。
そして次の瞬間、山崎の姿は「仮面ライダーOOO」へと変わっていた。





「何だ、あの歌は!? タカ、トラ、バッタ、って一体…」
「歌は気にしなくていいわ、それはオーズ。 それならあのヤミーに勝てるわ」
「気にするなって言っても…、うわ。 何か体も変わっている!?」

山崎は突然聞こえてきた歌や、自分の姿が変わっている事に驚いていた。
頭部は赤い鳥の紋様に緑の複眼が、上半身は黄色く腕に虎の爪のような物が備わり、下半身は緑色。
胸には上から腰に嵌めたメダルと同じように、鷹・虎・飛蝗が描かれている。

「くっそー、コアメダルを渡せーーー!!」
「うわぁ!?」

その間にカマキリヤミーが変身した山崎、オーズに向かって攻めかかってきた。
カマキリヤミーが腕にある鎌で襲い掛かってくるのを見た山崎は、咄嗟にその鎌を振りおろす腕を受け止めた。

「へっ?」
「くっそーー!!」

先ほどまでの自分ならあっさり吹き飛ばされている筈だったが、今の山崎は余裕でヤミーの力を受け止める事が出来る。
そのまま山崎はヤミーに対して、自分の腕に付いている虎の爪のような物で斬りかかり反撃を与えた。

「おおー、スゲー! 力が溢れてきた!!」

山崎は今までのお返しとばかりに飛び掛り、連続で蹴りを浴びせていく。

「ぐはっ!?」

その攻撃に思わず蹲るカマキリヤミーだったが、まだ余力が有るらしく山崎に腕の鎌で斬りかかってきた。

「図に乗るなーーー!!」
「だーーっ!?」

カマキリヤミーの猛攻にたじろぐ山崎、それを見た少女はもう一枚のメダルを取り出した。

「サガル、これを使いなさい」
「えっ?」

山崎に緑色のメダルを投げ渡す少女、それを受け取った山崎は虎のメダルと交換して再びオーズキャナーを滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"タカッ!"、"カマキリッ!"、"バッタッーー!!"。


また例の歌が響き渡り、山崎の体を光が包んでいく。
そして光が止むと山崎の姿は腕の虎のような爪が無くなり、変わりにカマキリヤミーと同じような緑色の鎌が備わっていた。

「ええーーー、また姿が変わったーーー!!」
「まだメダルかあったのか!? くそっ、コアメダルを渡せーー!!」

またカマキリヤミーが鎌で山崎に襲い掛かってくる、しかし山崎は逆に自分の手に備わる鎌でカマキリヤミーを切り裂いていく。
カマキリヤミーが切り裂かれていき、それに合わせて傷口から灰色のメダルが落ちていく。

「せいっ、せいっ!」
「くっ…」

山崎の猛攻に倒れるカマキリヤミー、そこで山崎は止めを刺そうと腕の鎌に力を溜めていく。
そしてそのままカマキリヤミーに飛び掛り、山崎は渾身の一撃を繰り出した

「はーーーー、せいやーーーーーーー!!」
「ぐわぁーーーーーー!?」

その一撃を受けたカマキリヤミーは、爆発して自分の体を構成していたメダルがばら撒かれた。






「えっ、あのカマキリ野郎はメダルで出来ていたのか? …ていうか正当防衛とは言え、天人を殺害しちゃったよーー、俺!?」

もしあの天人が何らかの大物だったら、確実に外交問題に発展してしまう。
そうなったら自分は確実責任を取らなければならず、もしかしたら自分だけでなく真選組全体に責任が掛かるかもしれない。

「どうすんの、俺!? どうするーーーーーー!!」
「……やっぱり唯の馬鹿ね」

最悪の想像に悶える山崎の狂態を眺めて、少女は辛辣な発言をするのであった。




[25341] 欲望とスイーツと元同僚
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/01/22 14:26
「……ていうか、もうどうしよもなくね!? 仕事ミスっただけなら兎も角、天人まで殺害しちゃってもう腹でも切るしか…」
「何時までやっているのよ。 いい加減、それを返して貰うわよ」

前話からずっと悶えていた山崎からベルトを外す少女、その瞬間に山崎の姿は普段の物に戻った。
これが切欠に混乱状態が治った山崎は、少女に今までの事態に付いて質問攻めにする。

「ちょ、ちょっと待って! 教えてくれ、このベルトは一体何なんだ、それにあの天人は…?」
「ふっふっふ、まあまあの量ね。 サガル、ちょっと拾うのは手伝ってくれない?」

しかし山崎の問い掛けは華麗にスルーされ、少女はカマキリヤミーから出たメダルを集めだす。

「おい、人の話を聞けよ!」

少女の対応に流石に怒りを覚えた山崎は灰色のメダル、セルメダルを拾い続けている少女に近付いた。
しかし、次の瞬間……。

"キキィーーーーー!"。

「うわっ、何だ!?」
「待て、それは私の…」

山崎達の頭上から赤と銀の体を持つ、鳥のような何かが複数舞い降りきた。
明らかに人の手によって造られた鳥モドキ、タカロイドと呼ばれる人工のそれは地面に散らばったセルメダルを拾っていく。

「くそっ、返しなさい!」

セルメダルを取り返そうと少女は追いすがるが、時既に遅く全てのタカロイドは天高く飛び上がっていった。

「何なのよ、あれは!?」
「知るか、俺もあんなのは初めて見たよ!? ていうかそろそろ事情を説明してくれ!!」

殆どのセルメダルを持っていかれてしまい、少女は山崎に怒りをぶつける。
理不尽な怒りをぶつけられた山崎の方も、ついに堪忍袋の尾が切れたらしく喧嘩腰に応じた。








鴻上ファウンデーション本社ビルの一室、そこに先ほどのタカロイド達が集めたセルメダルが積み上げられていた。
役目を終えたタカロイド達は自分の体を折りたたんでいき、缶のような状態に変形していく。
その様子を眺めていた一人の男性は、喜びを笑みに浮かべながら呟いた。

「たった一日でこれ程のセルメダルが集まるとは…。やはり私のライフワークには必要なのかもしれないね、グリードと…、オーズが」










とある病院内のベンチ、そこに包帯まみれの二人の男が腰掛けていた。
彼らは昨晩、警備員に扮して美術館を狙う計画を実行した攘夷浪士達であった。

「くそっ!? 折角一儲け出来ると思ったのに…、何が天人をぶっ潰せる力が手に入るだ!?」
「まあ、あの化物の力は凄かったけどね…」

この攘夷浪士達は先日、とある筋からあの美術館に天人を倒せるくらい凄まじい力が眠っているという情報を聞きつけたのだ。
その話を信じた彼らはその凄まじい力を手に入れようとした結果、見事グリードの封印を解く羽目になったのである。
結局グリードとそれを止めるために現れた鴻上の私兵との戦いに巻き込まれてしまい、このように病院送りになってしまった。

「はー、やっぱり田舎に帰った方がよかったかな?」
「何言ってる! あいつらが現れたおかげで、俺たち武士は貧乏暮らしを強いられるようになったのだぞ!!」

どうやら彼らは、天人襲来の煽りを受けて職を失った武士であるらしい。
気落ちする仲間を励ます攘夷浪士の片割れは、紙を丸めた物を取り出して広げた。

「見ろ、これは天人が利用する現金輸送車のルートだ。 これを襲えば当面の軍資金は稼げるぞ」
「ええー、もう止めとこうぜー!」

先の悪巧みの結果、大怪我を負ってしまった事で及び腰になっている片割れ。

「馬鹿、この金さえ手に入れれば暫くは遊んで暮らせるんだぞ!」
「えっ、攘夷の軍資金にするんじゃ?」
「うるさいぞ、それはそれだ!? 兎に角金だ、金さ手に入れれば何でも…」

まだ見ぬ金に胸躍らせる相棒を冷ややかに見えていた片割れは、ふと何かの気配を感じた。
その方向に振り向いた彼は、自分たちを見ている存在を認識して悲鳴を挙げた。

「お、お前は…、あの時の!?」
「うん、何だ…、はっ!?」

攘夷浪士たちの前に昨晩に目撃した緑色の怪人、ウヴァが立っていた。

「その欲望、使わせて貰うぞ」
「はわわわわ…」

セルメダルを取り出すウヴァ、それ同時に先ほどまで襲撃の計画を経てていた攘夷浪士の額に長方形の穴が出来る。
まるで自販機の投入口のような黒い穴に、ウヴァは手に持ったセルメダルを入れるのであった。

「ひ、ひいいいい!?」

セルメダルを入れられた男の体がから、何かが這い出てきた…。











「ふーん、この紙に書かれた料理が出てくるのね」

とあるファミレスの店内、そこに山崎と少女が向かい合わせに座っていた。

(メニューの見方も解らないとは、まさか世間知らず箱入り娘ってオチじゃ無いよな?)

自分の名をメズールと名乗った少女の要望、落ち着いた所で話をしたいと言う希望を聞いて近くのファミレスに連れて来た山崎。
しかしメズールはファミレスのシステム自体理解していなかったらしく、山崎は今まで注文の仕方についてレクチャーをしていた所であった。

「やっぱりずいぶんと変わったのね、人間の世界は…」

(人間の世界だと!?やっぱりメズールは天人なのか…)

注文を終えたメズールの呟きを聞き、山崎は自分の推測に確信を深めた。
傍目には美しい少女にしか見えないメズールだが、山崎はある光景を目撃して彼女が人間では無いと考えたのである。

(しかし、メダルを吸収する天人なんて聞いた事無いぞ?)

山崎は先ほど、拾ったセルメダルを自分の体に吸収するメズールの姿を目撃している。
メズールが体にメダルを取り込む瞬間、一瞬だけ彼女の全身から沢山のメダルが見えたのだ。

(さっき襲ってきた怪人も体がメダルでできていたよな、だったらメズールとあいつは同じ種族なのか?)

物珍しそうに周りを見渡すメズールを眺めながら、山崎は自分の疑問を思い切ってぶつけてみた。

「なあ、メズール。 もしかしてお前とさっきのカマキリ野郎は同じ種族なのか?」
「はぁ、冗談じゃ無いわ!? 私とあんなヤミー如きを同類扱いしないで欲しいわ!!」

山崎の質問が気に触ったのか、メズールは極めて強い口調で否定した。

「いいわ、説明してあげるからよき聞きなさい…」

そこからメズールの口から出た話に、山崎は仰天するのであった。





グリード、800年前に封印された欲望の化身。
グリード達は昨晩、何者かよって封印が解かれて目覚めたばかりである。
グリードは人の欲望を元に、ヤミーと呼ばれる怪物を生み出す。
先ほどのカマキリ野郎も、グリードによって創られたヤミーである。
山崎が変身したあれは、グリード達を封印したオーズと呼ばれる者。

「それで私たちグリードは、コア…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? 少し、頭を整理させてくれないか?」

メズールの口から紡ぎ出された荒唐無稽な話を理解するため、山崎は一時的に話を止めた。

(800年前に封印されたって、じゃあこの子はこの見た目で800歳以上!? いや驚く事はそこじゃ無いだろ… )

彼女の話が本当ならグリード達は、昨晩山崎が夜勤していた美術館から目覚めた事になる。

(えっ、あの破壊跡はグリードって連中がやったのか? でも封印ってのを解いた奴も居るらしいしな、この話が彼女の与太話って可能性も有るし…)

普通ならこんなうそ臭いなんて笑い飛ばすだけだろう、しかし少なくとも山崎が変身したオーズの力は本物だった。
とりあえず山崎は、グリードの話が真実か確かめるためにメズールへ質問を投げかける。

「ちょっと質問だけど、メズールとあのカマキリ野郎の姿が違うのはどうしてなんだ。 君はどう見ても人間にしか見えないんだが?」
「私のグリードとしての本当の姿は別にあるわ、これはあくまで仮の体よ」
「じゃ、じゃあその本当の姿ってやつを見てみたんだけど?」

ここでメズールがあのヤミーのように変化すれば、話の信憑性が高まると考えて山崎はメズールに質問する。
しかしメズールは不機嫌そうに山崎の要求を拒否した。

「…無理よ、今の私はこの姿以外になれないわ」
「えっ、じゃあやっぱり…」

何故できないのか追求しようとした山崎だが、丁度その時にファミレスの店員が来てしまい話の腰を折られてしまう。

「コーヒーとスペシャルジャンボパフェをお持ちしました」
「へっ、スペシャルジャンボパフェ!?」

店員が持ってきた優に5人分は有りそうな巨大なパフェを見て驚く山崎、それを尻目にメズールはパフェを食べ始めた。

「おいーっ!? 好きなものを頼んでいいとは言ったけど、流石にそれは無いだろ!!」
「あら、中々イケルわね」

山崎の抗議を無視して、メズールは黙々とパフェを食べながら説明を再開した。

「グリードの体は核となる9枚のコアメダルと、セルメダルで構成されているわ。 ちなみにヤミーにはコアメダルは無い、あいつらの体は全てセルメダルだけで作られているの」

コアメダルが棒でセルメダルがアイスの部分、ヤミーは棒が無いアイスだろうとメズールはパフェに乗っていた棒アイスを食べながら解説した。

「コアメダルって、さっきのやつが言ってたあれか?」

コアメダル、コアメダルと叫びながら襲ってきたヤミーを思い出す山崎、メズールはその問いに同意をした。

「ええ、そうよ。 あいつは私が他のグリードから奪ったコアメダルを取り返し来たのだから」
「ちょっと待て、グリードはお前の仲間だろ!? お前はそいつらから、大事なコアメダルってのを奪ったのかよ?」
「仕方ないでしょ、そうしないと私のコアが奪われていたかもしれないのだから」

山崎の突っ込みに、悪びれる様子も無くシレッと答えるメズール。
その発言に脱力しそうになった山崎だが、よくよく彼女の発言を思い出し気になる点を発見した。

「……ん、奪われていたかもってどういう事だ?」
「普通、封印が解かれた時は9枚のコアメダルが揃っている筈だったわ。 けど目覚めたとき……、私のコアメダルは一枚しか無かったのよ」

9枚中1枚という事は、メズールの体は本来の10%強しか残ってない事になる。

「それじゃあ、元の姿に戻れないって言うのは…」
「コアメダル一枚じゃ、この姿を維持するのが精一杯って事よ。 今は体を構成するセルメダルさえも不足しているから、正直この姿で居るのもキツイわね」

そう言い苦しそうな表情を見せるメズール、彼女の消耗を表すかのように体を構成するメダルが一瞬ぶれて見えた。

「だ、大丈夫か…」

メズールの弱った姿を見た山崎は、彼女の状態を心配しようとした。
しかしその時、メズールは何かを感じたかのように顔をあげる。

「ヤミーの気配、これはウヴァの物ね…」

そう言い残し、メズールは席を立ってファミレスを出ていく。

「おい、ちょっと待てよ!」

慌ててメズールを追いかけようとする山崎だが、誰かが後ろに掴まれて止められる。

「お客様、お勘定!!」
「……あっ!?」












「きゃーーーーーー!!」

メズールの後を追ってあるビルに入った山崎は、逃げ惑う人達の中心で暴れる白い怪人を目撃する。
その怪人はATM機を力付くで抉じ開け、中にある現金を奪っていた。

「あ、あれは何なんだ?」
「あれは白ヤミー、産まれたてのヤミーよ」

白い包帯が体中が巻かれていてミイラ男のように見える白ヤミーは、手に入れた現金を体に吸収していく。

「あいつもグリードが産み出したって言うのか…」
「そうよ、あれば棒の無いアイスって訳」

眼の前でどんどんと金を吸収する白ヤミーを見て、山崎はメズールに手を出した。

「ん、何よ?」
「ベルトを貸してくれ、あいつを倒さないと!」

ヤミーは人の力ではとても倒せない事を先の戦いで嫌と言うほど知った山崎は、メズールからまたオーズのベルトを借りようとする

「駄目、もう少し待つのよ。 あのヤミーはまだ成長するわ」
「成長って…」

山崎を制止したメズールは、ヤミーの習性に説明をする。

「ヤミーは餌を取れば取るほど成長して、内部に沢山のセルメダルを貯めるのよ」
「餌って…、一体何なんだ?」

ヤミーを成長させる餌が何か尋ねた山崎に、メズールは哀れみを込めたように答えた。

「人の欲望。ヤミーは人間の欲望を糧に成長するわ」
「嘘だろ、あれが欲望で…」
「どうやら時代は変わっても、人の愚かさは何も変わってないようね。 あーあ、可哀想」

人間の欲望が、あんな化物を産み出した事に驚愕する山崎。
その時、現金を吸収し続けた白ヤミーが何か悶えるように震えだした。
そして次の瞬間、白ヤミーの体から巨大な昆虫のような物が産み出される。

「うわっ、気色悪!?」
「ふっふっふ、中々の大物ね」

少なくとも人型であったカマキリヤミーと違い、姿が昆虫そのままの産まれたヤミーは山崎に生理的嫌悪を抱かせる。
白ヤミーから成長した巨大な昆虫形ヤミー、オトシブミヤミーが六つの足を動かして移動を開始した。











オトシブミヤミーは、さっきまで自分が居たビルに六つの足でよじ登っていく。
しかも壁を食べながら登っていき、それに合わせてオトシブミヤミーはどんどんと成長していった。

「おい、いい加減あれを止めないと」

ビルが破壊されていき人々が逃げ惑っている様子に、山崎はヤミーに対して怒りを覚えていた。
その姿を眺めていたメズールは、不思議そうに尋ねる。

「サガル、どうして貴方は変身してあれと戦いたいの? 別に貴方には何も関係ないでしょ」
「関係ある、何故なら俺は真選組の一員だ! 江戸の市民を守るのが俺の仕事なんだ!!」
「……やっぱり、ただの馬鹿のようね」
「また馬鹿呼ばわりかよ!? え、今良い台詞言ったよね、俺!!」

山崎の必死の抗議を無視して、メズールはオーズドライバーを取り出す。

「サガル、私と取引をしましょう。 さっき、私のメダルが不足している事は話したわよね」
「ああ、聞いたけど…」
「貴方はオーズの力で真選組とやらの仕事をする、その代わり私のメダル集めに協力して貰うわ」

そう言って、メズールは山崎の目の前にオーズドライバーを見せた。
メズールの取引内容に一瞬を躊躇いを見せた山崎だが、周りから聞こえてくる悲鳴に後押しされてドライバーをもぎ取る。

「契約成立ね、しっかり稼いでくるのよ」
「早く、メダルを出せ!」

メズールが投げ渡した3枚のコアメダルを受け取り、山崎はオーズドライバーを身に着ける。
メダルを全て嵌めこみ、腰からオーズキャナーを握り3枚のメダルの上を滑らした。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。


「変身っ!!」


"タカッ!"、"トラッ!"、"バッタッーー!!"。

"タットッバッ!"、"タトバッ!"、"タットッバッーー!!"。

例の歌が響き渡り、山崎はオーズへと変身を果たした。












「…と意気込んで見たものの、どうやってあそこまで登ろうか」

ビルを登りきったオトシブミヤミーは、屋上で派手に暴れてた。
悩む山崎の前に一台のバイクが止まり、バイクの搭乗者が何かを持ってこちらに近付いてくる。

「あれ、あいつは何処かで見た事あるような…」

どうもバイクに乗ってきた男に見覚えがあった山崎、そして男が自分の前に立った時にそれが誰かを思い出した。

「あ、お前は後藤じゃないか!? 数年前に真選組を止めたお前が、どうして此処に?」
「……ある方からの誕生日プレゼントだ、受け取れ」

山崎の質問に無視した後藤は、何かに耐えるように手に持った箱を開いた。
その中には奇妙な形をした大剣、メダジャリバーと数枚のセルメダルが入っている。

「えっ、これを貰って良いのか?」

メダジャリバーを手に取って繁々と眺める山崎。

「メダルをあの自販機に使え」

そう言って後藤は箱の残っていたセルメダルを手渡し、近くに設置してあった自販機を指さした。

「おい、この状況が解っているのか!? 暢気にジュースなんて飲んでる暇無いだろうが!!」
「いいからさっさと行け、山崎!!」

後藤の強い言葉に渋々と従い、山崎は自販機にメダルを投入した。
その次の瞬間、自販機が変形を初めてバイクの形なってしまう。

「はぁーーーっ!? 自販機がバイクになっちまったよ!!」

その様子を見ていたメズールは、後藤がセルメダルを使っている事を疑問を抱いていた。

(何故、人間がメダルを…?)

山崎は眼の前に現れたバイク、ライドベンダーにとりあえず跨ってみた。
その時、オトシブミヤミーによって破壊されたビルの破片が山崎の方に落ちてきてしまう。

「ヤバイ、乗れ! メズール!!」

"ブルルルルルルーーーー!!"。

慌ててメズールも乗せた山崎は、ライドベンダーを急発進させて何とか回避する。

「これも贈り物だそうだ」

後藤は自分の乗ってきたライドベンダーを自販機の形態に戻し、セルメダルを入れてボタンを押す。
すると自販機の取り口から大量の缶が零れ落ちてくる、後藤はその一つを手に取った。

"タコカン!"。

後藤の手に持った缶が変形して、タコのような形になり空を舞い始めた。
他の缶達もそれに合わせてタコの形態、タコロイドとなっていく。

「えっ、缶がタコになった!?」

数十、数百に昇るであろうタコロイド達が、上空に飛び上がっていく。
タコロイド達はビルの方に密集して集まっていき、最終的にビルの屋上まで道が出来てしまった。

「こ、これを登ればいいって事なのか?」
「山崎、剣の方にもメダルを入れておけ」

よく見ればメダジャリバーにメダルの投入口があるが、先を急いだ山崎はそのままオトシブミヤミーへ向かう事を決める。

「サンキュー、後藤! 何だか解らないけど、助かったぜ!!」

そういい残し山崎は、タコロイドで出来た道をライドベンダーで駆け上がっていった。





「おらーーーーーー!!」

ビルの屋上に辿り着いた山崎は取りあえず、すれ違い様にメダジャリバーでオトシブミヤミーを切り裂く。

「ギギャーーーーーーー!?」

苦痛の声を漏らし傷口からセルメダルを放出するオトシブミヤミーに、ライドベンダーを乗り捨てた山崎は向き合った。
ちなみに山崎と一緒に屋上に上がったメズールは、せっせと落ちたセルメダルを回収している。

「うわっ、デッケー!? もうこれって怪獣じゃねえか?」

成長を続けたオトシブミヤミー、その大きさは優に山崎の何倍も大きさになっていた
山崎への報復にオトシブミヤミーがその巨体を生かして、山崎に殴りかかってくる。

「ガーーーーーー!!」
「うわぁーーーーー!?」

たまらず吹き飛ばされる山崎、それを見たメズールは山崎に蟷螂のコアメダルを投げ渡す。

「何やっているのよ、早く倒しなさい!」
「無茶言うなよ!?」

山崎は受け取った蟷螂のコアメダルを虎の物と交換する。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"タカッ!"、"カマキリッ!"、"バッタッーー!!"。


「やーーーーーーーー!!」

コアメダルを交換する事で備わった両腕の鎌で、山崎はオトシブミヤミーを切り裂いていく。

「おし、イケルぞ!!」
「グガーーーーーーーーーーー!!」
「 …てっ、ああああーーーーー!?」

勝利を確信して思わずガッツポーズを取ってしまった山崎は、その隙を付かれてビルの屋上から弾き飛ばされてしまう。

「サガルっ!!」
「ぎゃーーーーー、落ちてるーーーーーー!!」

地上へと一直線に落ちていく山崎の脳裏に、自分の禄でもない人生が走馬灯のように走る。
最早これまでかと諦めかけたが、来るべき衝撃が幾ら待っても来ない。

"タコッ、タコッ!!"。
「…へ、助かったのか?」

タコロイド達が連なってロープ上に固まり、地面にスレスレで山崎を捕まえる事に成功したのだ。
そのままタコロイド達に引き上げられ、どうにか山崎は屋上に戻る。






「こいつめ、よくもやったなーーーー!!」

殺されかけた恨みを晴らすかのように、メダジャリバーでオトシブミヤミーを切り裂いていく山崎。

「ギギャーーーーーーー!?」

それが効いたのか、悲鳴をあげながらビルの屋上から地上へ逃げるオトシブミヤミー。

「逃がすかよ! 乗れ、メズール!!」

オトシブミヤミーを逃すまいと、山崎はメズールを後ろに乗せてライドベンダーを走らせた。
またタコロイドの道を通って地上に戻り、オトシブミヤミーと対峙した山崎はふと後藤の言葉を思い出す。

「あ、そういえばメダルを入れるんだっけな」
「ちょっと、勝手にメダルを使わないでくれる!?」

メズールの抗議を聞き流して、山崎はメダジャリバーに3枚のセルメダルを投入する。
チャリチャリと小気味良い金属音を鳴らしながら入ったセルメダルが、メダジャリバーの透明になっている腹部分に見えた。

「うぉーーーーーーー!!」

山崎はライドベンダーからメズールを降ろした山崎は、そのままオトシブミヤミーへ突っ込んで行く。
股下にメダジャリバーを突き立てながらライドベンダーを走らせていき、オトシブミヤミーを切り裂く山崎。


「ガァーーーーーーーーーー!?」
「ついでにこれだ!!」

山崎はその状態のまま、メダジャリバーの腹に入ったセルメダル上へオーズキャナーで滑らす。


"キィン、キィン、キィーーーーーーンッ"。

"Triple!"、"Scanning Charge!!"。


オトシブミヤミーの股下を潜り抜けた山崎は、方向転換を行って再びオトシブミヤミーの方を向く。
オーズキャナーを滑らした事で何かの力がメダジャリバーに溜まるのを感じた山崎は、それをオトシブミヤミーに振り下ろして開放する。

「せいやーーーーーーーー!!」

メダジャリバーから凄まじい一撃から放たれ、オトシブミヤミーの体を真っ二つに分断する。
オトシブミヤミーは爆散して、その体から大量のセルメダルが落ちてくるのであった。










「一体何なのよ、あれは!? 何故人間がセルメダルを…」
「つ、疲れた…」

戦いの後、憤るメズールの側で山崎はグッタリと倒れていた。

「しかしまたあの鳥モドキに、セルメダルを持ってかれるとはな。 後藤が出したタコの奴と同系等っぽいし、あいつに何か関係があるのか?」

オトシブミヤミーから出たセルメダルの殆どは、カマキリヤミーの時に現れたタカロイド達にまた回収されてしまった。
そのためメズールは、山崎の戦いの最中に回収した僅かなセルメダルしか手に入れられなかったのだ。
後藤の姿も何時の間にか消えていため、結局色々な事情が解らずじまいである。

「まあともかくあのヤミーも居なくなったし、これで一件落着かな?」

無事にヤミーを倒せた事で気が抜けたのか、山崎は穏やかな表情を見せた。
しかしその表情は、彼の背後からかけられた声が原因ですぐに凍り付いてしまう。

「なーにが一件落着なのかな、山崎くーーーん?」
「ふ、副長!?」

明らかに怒りが頂点が達している様子の土方に、山崎は金縛りにあったように硬直してしまうのだった。


あとがき

思ったより早く二話ができたので載せてみました、
余り銀魂らしい雰囲気にならなくてすいません。

そういえば山崎の住居とかって、銀魂の公式で明言されてましたっけ?
その情報によって、メズール様の住処が変わってくるんで…



[25341] ネコとチャイナと記憶喪失【前半部のみ】
Name: WAKASHI◆504f2808 ID:83fe980b
Date: 2011/01/22 14:57
「あれ、山崎じゃねえか。 なんだ、死んだんじゃないのかよ」
「おおー、山崎!? お前、一体今まで何処に行ってたんだ?」
「局長!? それに沖田隊長まで…」

怒り状態の土方を直視して硬直状態に陥ってしまっていた山崎だが、聞き覚えの有る声を聞く事で何とか最起動を果たした。
状況を把握するために周りを見渡してみれば、自分の上司である近藤勲や沖田総悟だけでなく真選組の他の連中達も集まっている。

よくよく考えてみればビルが半壊するほどの騒ぎに、自分たち真選組が出動しない筈は無い。
恐らく事件の知らせを受けて辿り着いた現場で、アホ面下げて立っていた山崎を見付けたのだろう。

「山崎くーん、こんな所でボケーっとして任務をどうしたんだい? 君の任務先の美術館が昨日の晩、何故か崩壊しちゃったらしいんだけどなー、」
「ふ、副長!? それは…、その…」

穏やかな口調で山崎に話しかける土方、勿論彼の目は全く笑っていない。
あの美術館がグリードと呼ばれる怪物に破壊されたと説明するのは簡単であるのだが、とある事情で話す事ができず山崎は土方の問い掛けに口篭ってしまった。

(どうする…!? 仮に美術館の事を正直に話そうとしたら、俺がグリードが暴れている時に暢気に眠っていた事も説明しなければならないぞ!! )

そんな事が副長に知れたら確実に粛清される、そう考えた山崎は必死に生き残る道を考えていた。

「ふ、副長。 これには色々と事情が…てっ、うわっ!?」」

とりあえず言い訳を始めようとした山崎に対して、土方は問答無用で斬りかかってきた。
咄嗟に反応して奇跡的に死の危険から逃れた山崎は、堪らず土方に抗議の声をあげる。

「ちょ、ちょっと待って下さい!?」
「聞く耳持たん! 理由はどうであろうと、与えられた任務を放りだす奴は真選組に必要ない!!」

そう言って土方は冗談では無く本気で山崎を殺ろうと刀を向ける、しかし絶体絶命のピンチへ陥った山崎に救いの手が差し伸べられた。

「待ちなさい、今サガルを死んだらちょっと困るわ。 殺すならもう少し後にしてくれない?」
「おいっ!? 後でなら俺は殺されてもいいのかよ!!」
「うんっ、何だこのガキは?」

ここで山崎が死ねばメダル集めに支障が出ると考えたメズールは、仕方なく土方の粛清を静止する。
メズールからの余りの扱いに抗議の声をあげた山崎だがその瞬間、状況を打開する奇策を思いつくのだった。











「…つまりお前はあのガキを助けるために、仕方なく任務を放棄したと?」
「そうなんです、副長! 昨晩あの美術館で怪物に追われるメズールを見付けましてね、流石に見捨てられなくて一緒に逃げていたんですよ。」

真選組局内の取調室に場所を移し、山崎は土方に先ほどでっち上げた嘘八百を並べ立てた。

「その怪物は滅茶苦茶強くってあっという間に美術館を破壊しましてね、とても立ち向かえる相手じゃ無かったんでメズールと二人で必死に逃げましたよ。もう連絡を入れる暇も無いくらいに…」
「怪物ね…、天人か何かを見間違えたんじゃねえのか? それにそのメズールとかって言うガキは、何故怪物とやらに追われていたんだ?」

山崎の胡散臭い説明に疑いの目を向ける土方は、当然といえば当然の質問を投げかける。

「そ、それは解りません。 先ほど説明した通りメズールは…」
「記憶喪失ね…。 本当なんだろうな、それは?」

何故メズールが記憶喪失という事になっているのか、時は少し前に遡る。





「頼む、メズール! 俺とお前は昨日からずっと一緒に居るって設定で、話を合わせてくれないか?」
「はぁっ、何でそんな事を?」
「しっ、声が大きい!?」

先ほど土方に斬られかかった所を助けられた山崎は、少し二人で話が有ると言いいメズールと二人で少し離れた場所に移動していた。
こちらの様子をチラチラと見ている土方達を気にしながら、山崎は回りに聞こえないように小さな声で話を進める。

「ちょっと事情があって、俺は昨晩からお前と一緒にヤミーから逃げてた事にしたいんだよ。もしお前がここで話を合わせてくれなかったら、俺は副長に殺されちまうんだ!? それでもいいのか?」

中身は兎も角、見た目はか弱い女性にしか見えないメズールを助けるために任務を放棄したという事にすれば、土方を誤魔化せるかもしれない。
そう考えた山崎は最終的に自分の命を盾にして、メズールへ必死に協力を要求した。

「……し、仕方ないわね、特別に協力してあげるわよ」
「よーし、これで生き残れる希望が見えたぞ! サンキュー、メズール!!」

自分の命が掛かっている山崎の異様な気迫に押されて、メズールは渋々と協力を承諾する。
しかしメズールは協力の引き換えに、山崎に一つの条件を付けた。

「その代わり私もサガルに条件が有るわ、他の人間にはグリードやメダルの事を話さないで欲しいの」
「へっ、それは何でだ?」
「人間にメダル探しを邪魔されたくないのよ」

メダル探しを最優先に行いたいメズールは、障害となり得る要因を極力排除したいらしい。
けどそうなるとメズールの事をどう説明すればいいのか、悩んだ山崎に有る結論が導き出されるのであった。







(…で怪物に襲われた時のショックで記憶喪失になった事にすれば、何を聞かれても知らぬ存ぜぬで通せるだろうと思ったんだが。 取調べでボロ出してないだろうな、メズールの奴。)

屯所に移動した山崎とメズールは別々の場所に移され、山崎は土方に事情を説明しているという状況になった。
少なくとも土方は自分の説明を全く信じてなさそうなため、正直メズールの証言が鍵になりそうである。

「副長ー、まだ俺の話を疑ってるんですか?」
「当たり前だ、記憶喪失なんて設定を出されて信じれるわけ無いだろ!? それにあんだけ堂々と打ち合わせをされたしな…」

土方は此処に来る前に山崎とメズールが自分達から離れて、ヒソヒソと何やら話をしていた所を目撃しているのである。
その後に記憶喪失で何も解らないとか言われても、信じられる筈も無い。
そうこうしている内に山崎の居る取調室の扉が開かれ、メズールから話を聞いていた局員が現れた。

「副長、山崎と一緒に居た少女から話を聞き終わりました。」
「うん、ご苦労。 それで何か解ったなのか?」

土方はメズールから山崎の出鱈目話を否定できる話が出た事を期待して、取調べの結果を尋ねる。
しかし局員の口から出た報告に、彼は仰天してしまった。

「はい、どうやらあの子は本当に記憶が失われているようでした」
「はぁっ!? それは本当か?」

土方はメズールが言う記憶喪失は、山崎がサボりを誤魔化すために口裏を合わせた戯言だと考えていため驚きを露わにする。
局員は何故メズールが記憶喪失と判断したかについて説明し始めた。

「はい、彼女は記憶喪失で間違い有りません! 何せあの子はTVに写っている人間と素で話そうとしたんですよ、しかもこんな小さな箱に人間が入るなんてと本気で不思議がってましたし!!」
「それ、記憶喪失とちょっと違わなくね!? どっちかというと、大昔の人間が現代にタイムスリップした時の反応じゃねぇか!!」
(副長、正解…)

800年前から封印されていたグリードの一人であるメズールは、当然TVなんて物は知る筈も無い。
副長の言った的確な例えに、山崎は思わず心の中で正解と呟いてしまった。
その時、ふと局員の語ったメズールの報告の内容に山崎は疑問を感じる。

「あれ、何でメズールがTVなんて見てるんだ。 取調室にTVなんて置いてないだろう?」
「女の子に取調室は可哀想だったので、彼女には応接室で話を聞きました。」
「ちょっと待て!? 何で身内の俺が取調室で、素性も碌に解ってないメズールが応接室なんだよ!!」

メズールも自分と同じように取調室で話を聞かれていると思っていた山崎は、待遇の違いに思わず怒りの声を出すのであった。










事情の説明を終えた山崎とメズールは、普段局員達が集まる大部屋に来ていた。
部屋内には真選組の中核メンバーも揃っている。

「大丈夫だったか、メズール?」
「別に平気よ。 あのケーキとやらも美味しかったしね」
「おーい!? 俺は取調室で、メズールは応接室でTVを見ながらおやつタイムかよ! あいつら、どんだけ女に甘いんだ!!」

メズールと再会した山崎は、自分とメズールの扱いが余り異なっていた事に改めて憤りを覚える。
そんな中で山崎の無事を心配していた近藤が慰労の言葉を告げた。

「いやー、お前も災難だったな、山崎! まさか例の怪物にお前も襲われたとはな…」
「局長!? 例の怪物って、一体どういう事ですか?」

近藤が例の怪物、グリードやヤミー達の事を認知しているように言った事に山崎は驚く。
そこで土方が山崎に対して、近藤の発言を補足して説明した。

「目撃証言があったんだよ。 例の美術館が怪物に破壊されたとか、怪物が少女を追い回しているとか、怪物がビルによじ登っているとかな。」
「ああー、そういう事でしたか…」

あれだけ派手にグリードやヤミー達が暴れたのだ、それを誰かに目撃されていてもおかしくない。

「しかし残念だったな、怪物に追われてたって言うその女の子が何も覚えてなくて。 記憶喪失なんかになってなければ、例の怪物の事を何か知ってたかもしれないのにな… 」

真選組は美術館やビルを襲った怪物について調査を行っていたのだが、まだその正体の糸口さえも掴めていない。
その人間離れしているらしい姿から恐らく何処かの星の天人だと考えて当たっても見たが、例の怪物の特徴と一致した天人の情報は何も見付けられなかった。

「近藤さん、安心して下さい。 俺がすぐにその雌狐の口を割らせて見せますわ」
「お、おい、総悟!? お前は一体何を…」

沖田が腰に帯びた刀を抜き放ってメズールの前に突き立てる、その行動を見た近藤は慌てて沖田の行動を真意を尋ねた。

「どーも俺は、この人間を見下したような眼をしたこの女が気に食わねーんですよ。 なーに、ちょっと躾けてやるだけ…」
「嫌っ!?」
「へっ…、ぐはっ!?」

どうやらメズールの態度がお気に召さなかった沖田は、サドっちくな笑みを浮かべながら彼女を調教しようと試みる。
しかし身の危険を感じたメズールが掌から強烈な水流を放て、その直撃を受けた沖田は吹き飛ばされて気絶してしまう。
こうしてあえなく、沖田のメズールへの調教は失敗するのであった。

「総悟ーーー!? えっ、何この子、今手から何か出したよね?」
「何だあのガキは!? カメハメ波でも使えるっていうのか?」

メズールが放った水流の攻撃に近藤と土方は驚愕して固まってしまう。
彼女がグリードだと知っている山崎は驚きこそ少なかった物の、聞いていた話と違う事についてメズールに問い質した。

「おい、メズール!? あの水鉄砲は何だよ、お前は弱ってたんじゃなかったのか?」
「微量ながらメダルを集められたので少し回復したの、あの位の力なら何とか使えるわ」

先のヤミーから放出されたセルメダルの大半をタカロイドに奪われたとはいえ、幾らかの量は確保したのだ。
メズールは集めたメダルを吸収することで今の姿の維持と、先ほどのような水遊びくらいなら可能な程度には回復していた。

「おい!? 一体あれは何なんだ!!」
「解らないわ。 私、記憶喪失だから」
「舐めてるのか、ガキ! 公務執行妨害で豚箱に叩き込んでやろうか!!」

土方の問い掛けにメズールはお決まりのように記憶喪失と言って誤魔化す。
彼女の態度に怒りを覚えた土方は、沖田に対して暴行を加えた罪を利用して脅しを掛けた。

「まあ落ち着け、トシ。 今のは明らかに総悟が悪いと思うぞ。
「くっ、解りましたよ…。 ガキ、本来ならお上に手を出した罪でしょっ引きたい所だが、今回はこの馬鹿に非があるから特別に見逃してやるよ」
「ぐはっ!? 土方…、殺す!!」

近藤に宥められて渋々と引く事になった土方は、さりげなくメズールの水流で気絶していた沖田を踏みつける。
その衝撃で眼を覚ました沖田は、自分を踏みつける人物に対して改めて殺意を深めるのであった。





「…まあ女子供を守るのも真選組の仕事だ。そのせいで任務を放棄したのは問題だが、今回は特別に粛清は勘弁してやる」
「あ、ありがとうございます!!」

怪物の目撃証言やメズールの存在が山崎の作り話に信憑性を持たせた結果、山崎はとうとう鬼の副長からの粛清を逃れる事ができた。
目の前の死の危険から逃れられた山崎は、喜色満面の笑みを浮かべる。

「ただし! 任務を放棄した罰は受けて貰う、詳しい罪状は後で伝えるからとりあえずお前は謹慎でもしてろ!!」
「その記憶喪失の子はどうやらお前に懐いているようだから、お前にはその子の面倒も任せる。 早くその子を家に帰してやるんだぞ」
「り、了解です、局長、副長!!」

近藤は山崎にメズールの世話を申し付ける、彼は見た目は少女でしかないメズールを早く家に帰してやりたいらしい。
800年前から封印されていたメズールに帰る家など有る訳無いのだが、山崎その事を説明する訳にはいかないため何も言わず承諾するのであった。


あとがき。

早速、週1更新に失敗しました。
しかも前半部分だけですし…。

後半部は2、3日中にあげれるように頑張ります。


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