少年事件:「更生」判断に限界も 苦悶の裁判員

2010年11月25日 22時32分 更新:11月25日 23時40分

 少年事件の裁判では、20歳未満の犯罪に対する手続きを定めた少年法が立ち直りを最大の理念としているため更生可能性の評価が成人より重視される。

 警察や検察は容疑者が少年の場合、まず家裁に送致する。家裁は非公開で処分を決めるが、その重要資料として家裁調査官や収容先の少年鑑別所が成育歴や家庭の事情、調査を踏まえた意見を記した「社会記録」を作る。内容は、少年の問題点と立ち直りへの道筋を示したものとなる。

 16歳以上が故意に人を死なせた場合は原則として検察に逆送されるが、刑事裁判でも社会記録は改めて証拠とされ、従来の裁判官だけの裁判では重要な資料の一つとされた。

 裁判員裁判でも証拠とされるが、一般市民が多くの書面を見ることはできず提出されるのは一部となる。今回の仙台地裁の裁判では、家裁調査官の「児童期に家庭が崩壊し思いやりが育っていない」との意見と、鑑別所の「裁判で罪の意識を自覚させることが重要で、矯正は相当な時間を要する」との所見が出された。

 家庭環境が事件の一因と指摘し少年の未熟さを示したとも言えるが、判決は更生可能性を示すものと評価しなかった。それよりも法廷での少年の態度や発言を重視し、逆に「反省には深みがなく母親の監督も期待できない」と結論づけた。

 少年事件に詳しい弁護士は「社会記録は全文を読んでもらうべきで、一部だと誤った判断につながる恐れがある」と話し、少年の弁護側は「裁判員裁判で更生可能性を判断するのは限界がある」と記者会見で語った。今回の裁判は、少年事件の審理の在り方について議論を呼ぶ可能性がある。【北村和巳】

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