石巻3人殺傷:事件時の年齢重視せず 少年に死刑判決

2010年11月25日 22時9分 更新:11月26日 0時39分

 宮城県石巻市で起きた3人殺傷事件の裁判員裁判で25日、被告の元解体作業員の少年(19)に死刑が言い渡された。「重圧で押しつぶされそうで……。時が解決してくれるでしょうか」。会見した裁判員の一人は極刑を言い渡した思いを吐露した。少年への死刑は慎重論も根強い。その重圧の中で結論を下した苦悩があふれ出ていた。

 判決は、裁判員裁判初の死刑だった16日の横浜地裁判決と同様に永山基準に沿って検討しつつ、基準にはない「被告の更生可能性」に1項目を割いた。少年事件だけに、最大の焦点であると判断したためとみられる。

 その項目では▽母への傷害事件で保護観察中だった▽元交際相手の女性に日常的に暴力をふるっていた▽共犯者に凶器に指紋を付けさせるなど身代わり工作をしていた--などと列挙。「他人の痛みや苦しみに対する共感が全く欠けており、異常性やゆがんだ人間性は顕著」と断じた。

 少年は仙台家裁の少年審判で逆送決定を受けて起訴された。少年の成育歴など非行の背景を家裁調査官が調べている。その記録が今回の法廷でも証拠採用された。判決は更生可能性の項目で「他者への共感の前提となる周囲の者の言動に関する認識自体に相当なゆがみも認められる」とも指摘し、成人の裁判員裁判にはない記録の影響もうかがえる。

 弁護側は「現在は深く反省しており、更生可能性はある」と争った。だが判決は、反省の言葉は表面的で不合理な弁解もしているとして「反省には深みがない」と一蹴(いっしゅう)し、更生可能性は「著しく低い」とした。裁判員は更生可能性の有無を判断する資料は「十分あった」と述べたが、「可能性がある」との判断には傾かなかった。

 検察側が論告で「同じか、それ以上に(今回の事件の方が)悪質」と言及した光市母子殺害事件。被告が事件時18歳で2人を殺害したとされる点が共通する。今回の判決も、光市事件の最高裁判決(06年)を踏襲し、事件時の年齢は「総合考慮する一事情にとどまる」と重きを置かなかった。プロの判断が裁判員にも支持されたといえる。

 判決は、殺意の発生時期など事件の計画性や動機などでも弁護側の主張をことごとく退けた。とはいえ極刑を下す裁判員の心理的な負担は極めて重い。最高裁は5回まで無料の面接相談などの精神的ケア策を取っているが、会見した裁判員は「もうちょっと考慮してもらえた方が、と思います」と注文を付けた。【鈴木一也、伊藤直孝】

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