国会図書館:電子書籍の収集制度検討 11年度末にも開始

2010年11月25日 11時34分 更新:11月25日 17時5分

 アイパッドなど専用端末の普及に伴う電子書籍市場の拡大を受け、国立国会図書館(東京都千代田区)は、電子書籍を収集する制度を作るために業界団体などからヒアリングを始めた。印刷された出版物は、国会図書館法で出版社などに同館への納本が義務づけられている。しかし、インターネット上のものは官公庁のウェブサイトなどを除き収集対象外だった。同館は早ければ11年度末にも制度をスタートさせる方針だ。

 学識経験者や出版業界関係者らで構成する館長の諮問機関「納本制度審議会」は6月、電子書籍などの収集に関して答申を出した。答申は、電子書籍の市場規模が464億円(08年)に上るとし、「オンライン資料の収集ができないと、(法律で定めた)『文化財の蓄積及びその利用』の目的が達せられない恐れがある」とした。

 答申で収集対象とされたのは、電子書籍や携帯電話で読める「ケータイ小説」など。館内で検討中だが、当面は義務化の対象を、商業ベースで発行されている電子書籍や、大学・民間機関の研究報告などに限定する案が浮上。答申が提示したイメージより狭まるが、収集・書誌調整課は「限定的な範囲でスタートし、その後に段階的に広げていくこともできる」とする。

 また、印刷された出版物の場合、納本しないと過料を科せられるが、電子書籍については罰則までは設けない方向。一方で、民間のビジネス上の権利や利益保護を考慮し、納入された電子書籍は、館内での閲覧・複写に限り、同時にアクセスできる人数も制限する案を検討している。

 ヒアリングでは「具体的な収集方法を示してほしい」といった声が出ているといい、同課は「業界の意見を聞いて再検討を行い、制度作りに必要な国会図書館法改正の手続きに入りたい」としている。【曽田拓】

 【ことば】国会図書館と納本制度 1948年6月に開館。現在は東京本館(東京都千代田区)、関西館(京都府精華町)、国際子ども図書館(東京都台東区)の3施設があり、奈良時代から近現代までの貴重な文献や漫画、雑誌など約3600万点を収蔵する。膨大な蔵書数を支えている一つが納本制度で、出版社などに発行した出版物を納入することを義務づけている。納入しなかった場合は、その出版物の小売価格か相当額の5倍以下の過料が科せられる。

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