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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】年金 公約修正で党内説得せよ
税制と社会保障の一体改革に向け、菅直人首相が民主党の政権公約(マニフェスト)で掲げた「全額税方式」による年金制度にこだわらない考えを表明した。
自民党などは税と保険料による「社会保険方式」の維持を主張している。与野党の社会保障議論はこの根幹部分の考え方の違いをめぐって進まなかった。首相が全額税方式の見直しに言及したのは現実路線への転換であり、ためらわずマニフェストを修正してほしい。
民主党のマニフェストは、納めた保険料に基づく「所得比例年金」と、全員に7万円以上を支給する「最低保障年金」からなる新制度に改めるとの内容である。これでは移行に何十年もかかり、全額税方式に切り替えるには莫大(ばくだい)な財源も要する。
例えば、政府・与党は社会保障財源の不足分に消費税をあてる考えだが、年金だけには使えない。医療や介護、少子化対策の財源としても期待されているからだ。全額税方式なら、税率の上げ幅は現在与野党が検討している「5%」ではとても追いつかない。
この点、非正規労働者への厚生年金適用拡大や基礎年金の最低保障機能の強化といった、現行制度の手直しの方がはるかに効率的で現実的でもある。
心配なのは、菅首相がリーダーシップを発揮して党内を説得できるかどうかだ。新たに任命した与謝野馨経済財政担当相が「社会保険方式で改革することが合理的だ」と話す一方で、細川律夫厚生労働相は「党のマニフェストで約束した制度を含めて改革していく」と閣内でも一致していない。最低保障年金の実現にこだわる党内の意見は、依然少なくない。
政府・民主党は週内にも関係閣僚会議を開き、正式に与野党協議を呼びかけたい考えだ。しかし、最大のハードルである年金制度の根幹部分が定まっていないのでは野党も応じようがないだろう。議論のたたき台を示すのは政権与党としての責務である。
年金制度の持続可能性について、多くの国民が不安を抱いている。菅首相には「野党が積極的に参加しないなら、そのこと自体が歴史への反逆行為だ」との発言を取り消し、与野党協議の道筋をつけることを強く求めたい。一方の自民党も責任野党として、協議に前向きであってほしい。
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