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[25529] 【習作】GOD EATER×ワンピース
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b
Date: 2011/01/20 00:12
【注意】
 この作品は作者の妄想でできています。
 擬人化、主人公強め、クロスが嫌いな方はご注意ください。



[25529] プロローグ
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b
Date: 2011/01/20 00:14
「な、何だこいつは…!」
「まさか、新種か!?」

 捕喰妨害対象を確認。現在捕喰中の物体、通称「コンクリート」の捕喰を一時中断。最捕喰妨害対象、通称「ゴッドイーター」の捕喰開始。

「く、くそ!散れ、固まってたら一網打尽だ!」
「りょ、了かグエッ!」

 ゴッドイーターAを左腕ブレードにて無力化に成功。捕喰行動に移行する前に、ゴッドイーターB、C、Dの掃討を推奨―――受諾。

「ダレット!クソ、速い!ここは俺が引きつける。お前たちはアナグラへ帰還し、この新種のことを伝えろ!」
「で、でも隊長!」
「でもも勝手もあるか!とっとと行け!心配すんな、俺もすぐ行く」
「…了解」
「タクマ、お前隊長を見捨てウッ!」
「いい判断だ、タクマ。クラースを頼んだぞ」
「…すでに救援要請はしてあります。どうか、それまで持ちこたえてください」

 ゴッドイーターB、C戦線離脱。個体情報漏洩の可能性97%。最優先消去推奨―――受諾。行動開始。

「おっと、行かせるかよ。折角のタイマンだ、仲良く戦ろうぜ?嫌でも付き合ってもらうけどな!」

 ゴッドイーターDの妨害。行動変更。ゴッドイーターDを排除したのち、B、Cの消去に移行。

―――行動開始。



「――――」

 消去完了。ゴッドイーターB、Cロスト、追跡不可。
 捕喰行動へ移行。ゴッドーターA、D―――捕喰開始。





「全身青く輝く外骨格に翼型のブースター、左右の腕のブレード…間違いない、あれがターゲットね」
「うわ、ゴツ!旧時代のロボットアニメに出てきそう」
「何言ってんですか任務中に。ドン引きです」
「はいはい喧嘩しない。…外見的にはアラガミ化した俺に似てるな」
「はい。ですが、違うところも多く見受けられますので、ハンニバル種と同様と考えるのは軽率ですね。ただ、攻撃方法や特性が未知の敵ですので、対ハンニバル種の戦法をベースに、臨機応変な戦闘を行います」
「ん。いい判断だ。後輩が成長した姿を見るのは嬉しいもんだ」
「ありがとうございます。―――ミッション開始!」

 聴覚に反応あり―――個体数4。個体すべてに本体と同種の反応あり。ゴッドイーターと確定。現在までの36回の戦闘と同様に、全個体無力化後に捕喰行動に移行。
―――行動開始





「グッ…強い。でも…」

 背部ブースター結合崩壊。『インキタトゥスの息』出力低下。
 左右ブレード結合崩壊。斬撃範囲大幅減少。
 頭部装甲結合崩壊。頭部防御力大幅減少。
 オラクル細胞結合崩壊寸前―――コア露出の危険性特大。

「これで―――」

 左右ブレード展開。挟撃―――攻撃対象上空へ回避。攻撃失敗。

「終わりだーーー!」

 回避行動不可。対象の攻撃を受けた場合のコア露出可能性―――100%

「―――え?」

 本体真下に正体不明の『穴』が出現。ブースター損傷、ダメージの蓄積により脱出行動不可。
―――落下開始。





「ゲハハハハ、野郎ども!今日はご苦労だった。見ろ、この金銀財宝の山を!これでしばらく遊んで暮らせるぜ!」
「イィィィィヤッホォォォォォ!!」
「さっすが賞金アベレージ300万ベリーの東の海で800万の懸賞金が掛かってる男、『強奪のアルフレッド』!」
「ゲハハハハ、しかも、今回はここにある財宝よりも価値があるものも手に入れた!見ろ、これが伝説の『悪魔の実』だ!」
「あ、悪魔の実!?おとぎ話じゃなかったのか?」
「あの文様…た、確かに図鑑に載ってた通りだ」
「食せばカナヅチになるのと引き換えに異能を手に入れられる伝説の実、俺は…今ここで喰うぜ!」
「お、おお!愛用のハンマーで岩をもブチ割る船長がさらにパワーアップすんのか」
「ますますアルフレッド海賊団は無敵になるんですねー、船長!」
「応ともよ!テメェらが5つ数えたらこの実を一口で喰ってやるから大声で数えろや!」
「了解でさ!5!」

 落下中―――視界回復。視認できる範囲に敵生体反応無し。

「4!」

―――聴覚回復。未知の音声を確認。

「3!」

―――大気成分に大幅な変化あり。データ照合中―――照合完了。約1000年前の『地球』の成分とほぼ一致。

「2!」

―――損傷状況確認。ブースター損傷率82%、左右ブレード損傷率62%、頭部装甲損傷率73%、総合損傷率78%。早急に捕喰行動を行い、オラクル細胞結合修復の必要性あり。

「1!」

―――100m下方に生体反応。個体総数34。戦闘力微弱。ゴッドイーターとは別種と判断。それら全てを捕食した場合の予測修復率3%。早急な修復を優先し、捕食行動を推奨―――受諾。

「ゼ―――」

ズダァン!

「な、なんだぁ!?」
「船長!空から女の子…じゃなくて、なんか落ちてきました!」
「あん?…なんだこりゃ、生き物…なのか?」
「ボロボロっすね。でも、なんかキラキラ光ってて、高く売れそうっすよ」

 落下終了。態勢の立て直しを実行。

「た、立った!クララ…じゃなくて落ちてきた化け物が立った!」
「うろたえるな!アルフレッド海賊団はうろたえない!全員武器を取れ。この傷から見て、奴は死に損ないだ!トドメを刺して、売っ払ちまうぞ!」

―――行動開始





「な、なんなんだテメェは…?」

3秒前の斬撃による損傷―――0。

「お、俺のクルーを全員…全員喰っちまいやがって!ば、化け物め。こ、こっちくんな!くるな、くるな、くるなァァァァ!」

―――捕喰開始。



 敵生体反応0。修復率約2.4%。引き続き周囲の物質の捕喰により、修復を継続。
―――足元に植生体反応あり。視認完了、データ照合―――完了。約1000年前の『地球』に存在した果実『リンゴ』に酷似。ただし、表面にある文様に該当するデータなし。
 修復を最優先とし、捕喰を推奨―――受諾。

―――捕食開始





「―――?」

 周りを見渡す。澄み切った空、白い雲、照りつける太陽。ここに落ちてきたときと何も変わらない景色。
私が今乗っているものは『船』。だが、私が【発生】した場所の船とは全く異なる。そう、これは中世と呼ばれた時代の、木造帆船だ。
甲板は血で真っ赤に染まっているが、死体はない。私が捕喰したからだ。

 ここまではいい、私の記憶に間違いはない。私が思考しているということ。これもまた問題はない。
 問題は、私が【それを自覚している】ということだ。
 本来、私、つまりアラガミ―――ゴッドイーターたちの間での名称。今後、私を表す名称として使用する―――はそのような意識を持たない。考えはするが、何故?という疑問は持たないのである。まあ、アラガミは個体差が激しいので例外はありそうだが。
 そして、さらなる問題がもう一つ。

「―――これは…『人間』か?」

 船室の一室に掛かっていた鏡を覗き込むと、そこに映っていたのは捕喰対象であるはずの『人間』だった。
 膝の裏まで伸びる長く、青白く輝く髪。掴まれればたやすく折れそうな細い肢体。軽く小突かれただけで貫かれそうな雪のように真っ白い肌。他部の細さとは対照的に盛り上がった胸…はっきり言って邪魔だ。

「人間の中で半数を占める個体。たしか、女だったか?」

 何故このようなことになったのか、思考する。
 やはり、あの実が怪しい。何かしら情報がないか探してみるか。

 船内を徹底的に探し回ると、一冊の本を見つけた。先ほど捕喰した人間から、言葉や文字は学習済みなので、読みは問題ない。

「タイトルは…『悪魔の実図鑑』」

 悪魔の実…確かにあれは果実の形をしていた。なにかしら関連性はあるかもしない。

「………あった。『動物系 ヒトヒトの実 モデル:ウーマン』」

 ウーマンとは、女性という意味だったか。悪魔の実とは泳げなくなる代わりに食したものに異能を与える果実。動物系はその中でも姿を変化させる特性を持つとある。間違いないだろう。
 さしあたって問題は―――

「元の姿に戻れんということだな」

 これでは身体の修復どころではないな。まずはきちんと形態変化できるようにならねば。

「とりあえず、捕喰した海賊からこのあたりに町があることは学習した。そこで情報を集めるか…服は、どうするか」

 どうやら、人間の女は服を着ないといけないらしい。面倒なことだ。だが、先ほど捕喰した中に女はいなかった。仕方ない、適当に男の服を着るか。

―――30分後、船長室で女物の服を発見した。ついでにかつらと化粧道具も。

…深くは考えないことにした。



[25529] 第1話 ウソップ海賊団入団
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b
Date: 2011/01/22 15:55
甲板に寝ころび、青い空とフヨフヨと空を漂うように飛ぶカモメを見つめる。
 あの鳥とて、前の世界では当の昔に絶滅した生き物だ。
 やはり、私がいる世界は、過去なのだろうか?

「…違うな。少なくとも、『悪魔の実』などという奇怪な植物が存在したことはない。現在も、そして過去にも」

 アラガミは『地球』より発生した抗体ともいえる生物だ。今まで自覚がなかったが、『地球』が生まれてから、あの荒廃した世界となるまでに生まれ、滅んでいった全ての生物の知識を私は持っている。
 おそらく、これは原初の記憶。私が『地球』の分身である証。

「極めて中世の『地球』に近い別の星、というのが一番近いか。どうしてそんなところにやってきたかは全くもって不明だが」

 ため息を一つ。いっそ、自意識などなく、元のままの抗体でいられればここまで悩まずに済んだものを。
 …しかし、この服とやらはえらくムズムズする。人間たちがワンピースと呼ぶ布を一枚着ただけだというのに、今すぐ裸になりたいくらいだ。これなら、同類の皮を剥いで纏った方が幾分かましだ。

「天候は快晴。風向き、風速も理想的。湿度等から判断してもしばらくはこの天気が続く。あと2、3日といったところか」

 現在、私は捕喰した船員から得た情報に従い、村がある島に向かっている。航海の仕方等は学習済みだ。

「情報を得るには捕喰が一番手っ取り早いんだが…」

 情報を得るだけなら、島に着いた直後に村を襲い、村人を全員捕食してしまえばいい。これが最も効率的だ。
 だが、ヒトヒトの実という悪魔の実を食べ、自我というものを得た私は、あるものに飢えていた。

「コミュニケーション、対話、か。まあ、失敗したら喰ってしまえばいいし、やるだけやってみるか」

 島が見えたのはそれからちょうど2日後のことだった。





「みんな大変だー!海賊が攻めてきたぞー!」

「―――?」

 島近くの沖合で船を乗り捨て、小舟で島に近づくと、素っ頓狂な叫びが聞こえた。
 私が乗ってきたのは確かに海賊船だが、島からは確認できないところに乗り捨ててきたはずだ。というか、こういう風に騒がれないように態々遠くで乗り捨ててきたんだが…無駄だったか?
 まあ、無駄なら無駄でいい。最悪の場合でも、きちんと情報は得られるしな。

手頃な海岸を見つけたので、小舟をつける。
左右はちょっとした崖になっており、木が密生している。林、か。前の世界ではついぞ見ることはなかったが。
また、真正面には勾配のきつい坂がある。坂の上に陣取れば有利に戦えそうな地形だ。

「さて、まずは人間の村がどこにあるかだが…」

 アラガミは視覚、もしくは聴覚で対象を捉える。視覚または聴覚がずば抜けて鋭い策敵型、偵察型のアラガミもいるが、残念ながら私はそうではない。

「まあ、今はただの人間に限りなく近いしな。仮に索敵型でも感度は著しく落ちるだろう」

 自分の足で探すしかないか。まあ、これも一興。



しばらく道なりに歩くとあっけなく村は見つかった。

「もう少しくらい、冒険がほしかったな…ん?」

 少し前にある木の上になんか鼻の長い生物が見える。

「プークックックック、今日も俺を捕まえられないでやんの。ほんと、大人はとろいなぁ」
「おい」 
「ウギャーーーーッ!」

ドスン!

 あ、勝手に驚いて頭から落ちてきた。

「お、俺は工藤…じゃなかった。キャプテン…う~ん…」

 そのまま気絶。

「…一応、面倒見てやるか?はあ、ファーストコンタクトが長鼻の生物(なまもの)の介抱なんて…最悪だ」

 村が近いので、そこでもいいのだが、最初に人間との会話に慣れておきたいので、人目につかないところで介抱するとしよう。
 長鼻を背負うと、先ほど見つけた森の中の小さな泉へと向かった。



「犯人はお前だ!」
「やかましいわ」

意識を取り戻していきなり意味不明なことを言い出した長鼻の額にビシ!とチョップを決める。
前だったら頭から真っ二つなんだが…ここまで弱体化したのか、私は。

「いてぇ!って、お前誰だ!?」
「私?私は………誰だろう?」
「オイ!」

 今度はビシ!と長鼻に手の甲でツッコミを入れられた。…なんでツッコミの知識が原初の知識にあるんだ?

「誰だろうって、名前とか、なんでここに来たとか、どうしておれをプ二プ二して柔らかい膝で膝枕してくれているのかとかあんだろ」
「もう大丈夫そうだな。どけ」

ゴン!

「いてぇ!いきなり膝抜くな、後頭部強打したぞ!まあ、冗談はこのくらいにしておいて、ほんとにあんた誰なんだ?」
「ふむ、私は…」

 さて、何からこの長鼻に言うべきか。真正直に「私は人喰いです」とは言えんしな。
 名前とここへ来た理由を適当に考えて答えるか。

「…カリギュラ。カリギュラという」
「カリギュラ?ずいぶんと変わった名前だな」
「そうか?私は特に疑問には思わなかったが…」

 第一種接触禁忌アラガミ『カリギュラ』
これが人間たちが私につけた個体名。残虐で狂気に溢れていたといわれる暴君の愛称から付けられているらしい。
特に思い入れはないが、ずっと呼ばれていた名前を変えるのも何かしっくりこないので、そのまま名乗った。

「ここから遠い村で海賊に捕えられてな。なんとか逃げ出し、この島に辿り着いたんだ」
「何!?じゃあこの近くに海賊が!?」
「いや、この近くにはいないはずだ。何せ脱走したのが嵐の夜だったからな。どうにか奪った小舟は転覆しなかったが、かなり流された。少なくとも、このあたりは奴らの縄張りではない。安心しろ」
「その割には元気だな?血色もいいし」

 ム、こいつ間抜けかと思ったら結構鋭い。…やはり喰ってしまうべきか?
 いや、まだコミュニケーションという未知の体験は始まったばかりだ。もう少し様子を見よう。

「幸い、漂流してからそれほど日にちは経たずにこの島にたどり着けた。それに、私は【夜鷹】として売られる予定だったからな。食事や健康には気を使われていた。変な病気をしたら価値が下がる」
「よ、夜鷹って、つまりその…」
「男と寝る商売をする女のことだ」
「ストレートすぎるわッ!」

 回りくどく言うよりは早く話が進んでいいと思うんだがな。

「まあ、私に関してはこんなところだ。で、お前は自己紹介してくれないのか?」
「お、わりぃわりぃ。海賊のことで頭がいっぱいだった。―――ゴホン!おれの名はウソップ!誇り高き海の戦士にしてこの村に君臨する大海賊団『ウソップ海賊団』の船長だ!人はおれを称え、“我が船長”『キャプテン・ウソップ』、さらにその誇り高さから『ホコリのウソップ』と呼ぶ!」
「………」
「な、なんだよ、そんなにじっと見つめて。い、言っておくが、う、嘘じゃねぇからな!」
「誇り、とはなんだ?」

 『誇り』―――原初の知識の中にも、今まで捕喰で得た知識の中にも、なかった言葉だ。

「…え?」
「誇りとはなんだ?初めて聞く言葉だ」
「誇りっていうのはだな…そう、『絶対に譲れないもの』だな」
「絶対に譲れないもの?そんなものがあるのか?どんな物であろうとも、強大な力によって奪われるものではないのか?」
「ハッ!わかってねぇなぁ~、カリギュラ。いいか、『絶対に譲れないもの』ってのは物じゃあねぇんだよ。言葉にすんのは難しいが、これだけは絶対にしない、これだけは絶対に守る、とか、そういう『心』に刻まれた誓いのことだよ」

『心』―――これも知らない言葉。

「『心』?心とはなんだ?」
「おいおい、勘弁してくれ。これじゃあ堂々巡りだ。おれだって何もかもを知っているわけじゃねぇし、まして、言葉になんかできねぇ」
「そうか………」

誇り、心、誇り、心、ホコリ、ココロ、ホコリ、ココロ………

―――『誇り』および『心』の精細なデータを取るため、対象の捕喰を推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――受だk

「そこでだ!『誇り』と『心』がどんなものかお前が理解するために、特例としてウソップ海賊団に入団を許可する」
「…え?」
「カリギュラ団員、返事はハイだ。次にそれを破ったら『足の裏コチョコチョ30分の刑』に処す」
「…ハイ、キャプテン」
「ウム!よろしい!」

 …かなりまずかった。アラガミとしての捕喰本能と知識欲が自我の抑圧を超えて解放されかかった。今の私は非常に不安定ということか。折角捕喰では学習できない知識を学ぶ機会を得たのだ。以後気をつけねば。





 その後、村に行き、事情を説明して村に置いてもらえることになった。虚偽の話ではあるが、海賊にさらわれて、逃げてきたという私を村の住人達は快く迎え入れてくれた。ウソップ海賊団に入った以上、全員捕喰という選択は取れなかったので、好都合だ。
 住む場所に関しては、『誇り』と『心』について学ぶため、キャプテン(以後、ウソップのことをこう呼ぶ)の家に宿泊したかったのだが…

「絶対にだめです!ウソップさんも男の人なんです!こんなに綺麗な人と一つ屋根の下にいたら必ず間違いが起こります!だってウソップさんのベッドの下には(以下検閲削除)」

 村の富豪の跡取り娘―――確かカヤとかいったか―――に猛反対され、最終的にカヤの屋敷に客人として滞在することになった。キャプテンの話ではかなり病弱とのことだったが…
 とりあえず、カヤの発言によって、社会的に抹殺されたキャプテンの精神が早く回復することを願う。

それから―――

「こいつらがウソップ海賊団のメンバーだ!おい、お前ら、新入りに挨拶してやれ!」
「あ、え、えと、ぼ、ぼくたまねぎです!」
「お、おれはピーマン!」
「お、おおれはにんじん!」
「はじめまして。ウソップ海賊団の新入り、カリギュラだ」
「なんだなんだお前ら。顔が真っ赤だぞ~?」
「だ、だってこんな綺麗な人初めて見ましたよ!?もう身体のパーツからして違うって感じ!」
「どーやってこんな綺麗な人入団させたんですか!?弱み握って脅したんですか!?」
「ウォーイッ!テメェはおれを何だと思ってやがる!誇り高き海の戦士はそんなことは絶対にせん!」
「じゃー、どーやったんですか?」
「フ、惚れさせたに決まってんじゃねぇか」
「とりあえず死ね」
「ギャー!キャプテンがジャーマンスープレックスの餌食に!」



「海賊が来たぞー!早く逃げろー!」
「早く逃げないと男は生きたまま生皮を剥いで皆殺し。女は○した後、○○○として飼われてさらに―――」
「「「やめてくださいカリギュラさん!」」」



「さっすがキャプテン!パチンコ百発百中!」
「ふふ~んどんなもんよ、カリギュラ」
「どんなタマナシでも取り得は1つくらいあるものだな」
「そろそろ本気で泣くぞコルァ!」



「カ、カリギュラさん。本当にウソップさんのことは何とも思ってないんですね?」
「…少なくとも、カヤの言う男女の関係、とやらの気持ちはかけらもないな。私がキャプテンといる理由は他にある」
「そ、そうですか。よかった」
「―――?」



「ムグムグ…」
「おおー、さすが我がウソップ海賊団期待の新星!定食屋の『超特盛りカジキ丼30分以内に完食で賞金5000ベリーをゲットしろ作戦』も完了間近だ!」
「…喰い終わった」
「「「さっすがカリギュラさん!口だけのキャプテンとは違う!」」」
「ウォーイ!テメェらおれだってたまには………すいません、いつも口だけでした」
「もう一杯くれ」
「「「「さ、再チャレンジだとーーー!」」」」
「あ、あの細い身体のどこに入ってんだ?」
「見ろ、店主泣きながら作ってるぞ。だからあれほど再チャレンジ禁止にしとけって言ったのに」



「『動物系悪魔の実 変身のメカニズム』…これか」
「失礼いたします、お茶をお持ちいたしました。今日も性が出ますね、カリギュラさま」
「メリー…さん。私は何の知識もなく、この海に投げ出された。少しでも多くのことを知っておきたい。いずれ、帰るために」
「そうですか…貴女が来てからカヤお嬢様はとても元気になられた。出来ればこの村に居を構えてくれると嬉しかったのですが。貴女の意志なら、しかたありませんね」
「私はカヤに何もしていないが?」
「お話のお相手になってくれいるじゃありませんか。ウソップ君は男性ですし、使用人にはカヤお嬢様と年齢の近いものはおりませんからね。話し相手が増えて、カヤお嬢様も嬉しいのですよ」
「…よくわからない」
「はは、そのうちわかるようになりますよ」



「あ、クラハドール」
「おお、カヤお嬢様。今日はお出かけですか?」
「うん!お医者様も体調が安定しているから外へ行ってもいいって」
「ふふ、これもお隣にいるカリギュラさまのおかげですね」
「ええ!さあ、行きましょう、カリギュラさん」
「………ああ」
「………お気をつけて」



「なあ、服脱いでいいか?」
「「「「オールOK!」」」」
「なにアホなこと言ってるんですか、ウソップさん!」
「「「ギャー!キャプテンがスコーピオンデスロックの餌食に!」
「なんかチクチクして嫌なんだよ。本当だったら、下着一枚でも嫌なくらいだ」
「何言ってるんですか、カリギュラさん。女の子なんですから、しっかりおしゃれしないと」
「興味ないしなァ…」
「駄目です!カリギュラさんは最高の素材を持ってるんですからもっと―――」
「カ、カヤ…し、死ぬ…これ以上は、ほ、本当に死…ぬ…」
「「「キャ、キャプテーン!」」」



―――あっという間に1ヶ月が過ぎた。

「総損傷修復率は10%というところか。まあ、これの修復を最優先でしたしな」

 現在、私の左腕は青白く輝く装甲に覆われ、手首から伸びた特徴的な突起物の中には鋭利な3本のブレードが収納されている。まさに異形。これこそ私の本来の左腕。
 収納されたブレードを瞬時に展開し、左腕を一閃すると、目の前の木が真っ二つに斬れる。

「左腕ブレード修復完了。これで最低限の攻撃は可能か」

 1ヶ月の間、私はキャプテンたちと遊んでいただけではない。カヤの屋敷の本を読み漁り、この世界の歴史や航海術、そして悪魔の実についての知識を増やしていた。

「しかし、捕喰以外での知識の獲得がここまで面倒とはな。『これ』で喰えば一発なのに」

 左腕に力を込めると、青白く輝く装甲とブレードが、巨大な顎門(あぎと)に変わる。
 元々人間形態のままでも、捕喰は出来たが、如何せん口が小さすぎるため、捕喰に時間がかかる。
 そこで、ゴッドイーターたちの捕喰方法を採用することにした。

 左手の顎門を先ほど切断した木に喰いつかせるとギャブリと音を立てて、文字通り根こそぎ抉り喰った。

「捕食行動に問題はない。後はこれを繰り返して修復を行えば良いな。だが、動物系悪魔の実の3形態への移行はほとんどうまくいかず、か」

 本から得た知識によれば、動物系は3つの形態に変化する特性を持つという。
 一つ、悪魔の実を食べる前の種族の姿―――原型。
 二つ、悪魔の実の種類と本来の種族の混じった姿―――混成型。
 三つ、悪魔の実の種類に応じた姿―――完全変身型。
 と仮称しよう。

 通常、混成型、完全変身型こそが動物系の真骨頂であり、身体能力が著しく強化され、肉食性においてはさらに攻撃性、凶暴性が増すという。
 だが、私は違う。私は原型こそが最も力を発揮できる姿だ。逆に、今の完全変身型では、ほとんど人間と変わらない…と思われる。まだまともな戦闘を行っていないので、どこまで強いのかは未知数だが、少なくとも、本来の出力には遠く及ばない。
 この3形態は本人の意思である種の波長を調整し、自在に切り替えられるらしいが…私は波長のチューニングがうまくいかないのか、今は左手を原型に戻すのが精いっぱいだ。

「しかし…『誇り』や『心』については全く理解が進まないな」

 左腕を人間に戻し、地面にごろりと寝ころんでこれまで行動を振り返る。
 キャプテンの言葉に従い、この1ヶ月行動を共にしてきたがそれらを理解することはできなかった。3日ほど前にキャプテンにそのことを聞いたら

「おいおい、たった1ヶ月で理解しようとしてたのか?馬鹿だなァ、そういうのはよ、一生をかけてやるもんだ。まあ、おれはもう理解してるけどな!な~はっはっは!」

腹が立ったのでアッパーからシャイニングウィザードのコンボを決めてやった。



 色々と考えていると眠ってしまったのか、すっかり夜になってしまった。朝からいたから、かなりの時間眠ってしまったようだ。人間の身体とは本当に不便だ。

「―――ん?」
「おれは嘘つきだからよ。ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ。おれが甘かったんだ」

 この声はキャプテンか?
 声質からして、今までになく真剣だな…なにかあったのか?
 坂道の方へと林を歩いて行く間にもキャプテンの声は続く。

「だから、おれはこの海岸で海賊どもを迎え撃ち!この一件をウソにする!それがウソつきとして!おれの通すべき筋ってもんだ!」

―――(嘘は吐くなって、俺がクラースたちに教えたんだ。筋は通させてもらうぜ)
「………」

「…腕に銃弾ブチ込まれようともよ、ホウキ持って追いかけまわされようともよ、ここはおれが生まれ育った村だ!」

―――(ケッ、腕一本くらいどうってことねぇ…オラ、さっさと来いよ)
「………」

「おれはこの村が大好きだ!みんなを守りたい!例え、それがキャプテン・クロのクロネコ海賊団だとしてもだ!」

 ―――(あいつらを守れたんだ。ここで死んでも…本望よ)
「………」

「そんな足ガクガクさせながら行っても説得力がないぞ、キャプテン」
「ん!?」
「誰!?」
「あん?」
「カ、カリギュラ!?」

 坂道を下りながら声をかけると、キャプテンが振り向く。他に見ない顔が3人いるが…キャプテンが先ほどまで話をしていたんだ。敵ではないだろう。

「お、お前今日はえーとその…」
「ああ、生理だった」
「だからストレートすぎだろッ!」
「特に問題はない。もう痛みも引いたしな」
「いや、それとこれとはまた別な話で―――」
「な~、ウソップ。こいつだれだ?」

 見知らぬ三人組の中の麦わら帽子をかぶった男が興味津津という視線を向けてきた。

「え?ああ、こいつはウソップ海賊団副船長のカリギュラだ!偉大なる航路(グランドライン)で見つけてきた仲間で、おれに心底惚れ込んでいる女だ」
「くたばれ」

 ドシュ
 あ、思わずブレードで刺してしまった。

「う、腕が…!」
「こいつも悪魔の実の能力者か!」
「ウホォォォォッ!カッケーーーーーッ!」

 三者三様の反応。オレンジ色をしたショートカットの女は驚愕。マリモ頭の男は戦闘態勢に移行。麦わら男は目をキラキラ輝かせて私の左腕を見ている。

「待て、私はウソップ海賊団の一員だ。お前らと争う理由は無い。上の林で休んでいたら、村に海賊が攻めてくるというのが聞こえてな、迎え撃つために詳しい話を聞きに来たんだ」
「…まあ、戦力は多い方がいいわよね」
「ん?お前らも戦うのか?」
「応!勿論だ!」
「ま、乗りかかった船だしな」

 …戦力として数えられるのはマリモと麦わらだけだな。オレンジ女はそれほど強くない。キャプテン?論外だ。

「そういえば、キャプテン、さっきからずいぶん静かだな」

ピューーー

「…血が噴水のようだ」
「って、これ止血しないと真剣ヤバいわよ!?」
「やれやれ、出陣前からこれでは、先が思いやられる」
「「「「オメェのせいだろうが!!」」」」

 ナイスツッコミ。

「私はナミ。海賊専門の泥棒よ。あ、戦力としては期待しないでね」
「おれはゾロ。ロロノア・ゾロだ。剣術には自信がある。前は賞金稼ぎとか言われてたが、今はこの楽天家の船長の下で海賊をしている」
「おれはルフィ。モンキー・D・ルフィ。ゴムゴムの実を食ったゴム人間だ。んで、海賊王になる男だ」

 キャプテンの手当てをしてから、とりあえず自己紹介しようということになった。ゴムゴムの実、確か超人系(パラミシア)の悪魔の実…動物系だったら変形のコツを訊きたかったな。

「私はカリギュラ。ウソップ海賊団の一員だ。いつの間にか副船長をやっていることになっている。見ての通り能力者だが、喰った実についてはわからん。少なくとも、こんな奇怪な腕を持つ生物はこの世に存在しないはずだから、動物系の幻獣種だとは思うが…詳細は不明だ」

 まさかこの腕が本来の姿ですとは言えないので、適当にごまかしておく。

「そして!おれがウソップ海賊団船長、キャプテ~~~ン―――」
「そんなことはどうでもいいから、さっさと海賊対策を立てるぞ、キャプテン」
「…はい」
「どっちがキャプテンだよ…」



「よし!完璧な布陣だ」

 数時間後、坂には大量の油が撒かれていた。
 油の下方には私、ルフィ、ゾロの武闘派の三人。上方にはキャプテン、ナミの後方支援担当が陣取っている。

「村へ行くにはこの坂を通るしかねぇ。坂の下でお前らが敵をぶちのめして、取りこぼしたのをおれたちが倒す。さらに油で足止めすれば、向こうが数で勝っていても十分いけるはずだ」
「了解」
「応!」
「一人も逃しはしねぇ」
「ま、カリギュラはともかく、あんたら二人の化け物みたいな強さは知ってるからね。楽させてちょーだいな」
「そんなにあの二人強いのか?だったらカリギュラ、お前もこっちに…」
「キャプテン。私は接近戦しかできないんだ。後方にいてもなにもできんさ。なに、心配するな、戦闘には『多少』自信がある」
「え?お前めっちゃ強ぇだろ?」
「だな、纏う空気が明らかに戦い慣れてるやつのそれだ」

 ふむ、彼らから見ると、私はそれなりに強いのか。

「無駄話は終わりにしよう。直、夜が明ける。海賊の襲撃は夜明けと同時だったはずだろ」



―――夜明けから5分後

「…来ないんだが?」
「寝坊か?」
「しまらん海賊だな、それ」
「ねぇちょっと、北の方からオー!って叫び声が聞こえる気がするんだけど」
「北!?」
「キャプテン、もしかして…」
「あ、ああ、確かに北にも上陸地点がある」
「間違いなくそっちだな。キャプテン、先に行ってくれ。キャプテンの足なら1分で着くだろ?」
「お、応!お前らも早く来いよ!」

 キャプテンは一目散に北の海岸へと走り出す。

「北の海岸って…まず!そっちには私たちの船もあるのよ!お宝が危ない!」

 続いてナミ。

「よっしゃ!30秒で行ってやる!」

 続いてルフィ…あ、油で滑ってずっこけた。

「つるつる滑って登れねェ!!」
「クソッ!布陣が完全に裏目に出てやがる!」
「ルフィ、ゾロ。お前ら身体の丈夫さに自信があるか?」
「あ?いきなり何言って…」
「応!岩に潰されたって大丈夫だ!」
「よし、じゃあやるぞ」

 二人の襟首を掴むとアンダースローの要領で両手を思い切り背中へ引き絞り…投げた。

「「ギャァァァァァッ!」」

 …思ったより飛んだな。あれなら落下地点から30秒ほどで北の海岸へ着けるだろう。
 さて、私もどうにかして坂を越えて加勢に行きたいが…

―――「オオオーーー!」

「別働隊か。知略に長けるといわれる海賊なんだ、この程度のことはするだろうな」

 海の方角へ振り返ると、猫を模した髑髏マークの旗を掲げた海賊船が、沖の方からやってくるのが見えた。





 北の海岸へ向かったルフィたち一行とキャプテン・クロの戦闘は佳境へと入っていた。

「さて、カヤはジャンゴが追っていった。お前たちはおれを抜けて助けに行かなければならない…が、もう一つ教えてやろう」

 両手に指先に長い刃物のついたグローブを嵌め、壊れた眼鏡を掌底で直す特徴的な仕草をするオールバックの男。この男こそ、3年間カヤの屋敷に執事として潜伏し、カヤの莫大な遺産と平穏な暮らしを奪おうと画策していたキャプテン・クロである。

「もう一つの海岸にも別働隊を送り込んである」
「なに!?」
「本来ならここだけの予定だったんだがな。あの女が来て計画を修正したんだ」
「あ、あの女って…カリギュラのことか!」
「ああそうだ。一目で腕が立つことがわかった。海賊に捕えられたとか言ってたが、奴はそんな玉じゃない。大方、おれと同じようにカヤの財産が目当てで取りいってきたんだろう。先に行動を起こしてもらっちゃ、おれの計画が台無しになるんでな、時期を早め、確実に奴を始末するために挟撃することにした。最も、部下どもがあまりに軟弱すぎて、ただの奇襲になっちまったがな」
「ふ、ふざけんな!あいつは、そんな奴じゃねぇ!」
「そうか?今ここにいないのも、すでに行動を起こしているからかもしれんぞ?」
「違う!あいつは、あいつは絶対に向こうの海岸で別働隊を迎え撃っている!」
「ククク、おめでたい頭だな。さっきも言ったが、あの女はそんな玉じゃねぇよ。奴の青白い眼を見たときにすぐわかった。同類だってな」
「いや、そりゃちげーな」
「何?」

 ウソップのカリギュラへの信頼をあざ笑うクロの言葉を否定するのは麦わら帽子をかぶった若き海賊ルフィ。

「あいつはキャプテンから村を守れって命令を受けたんだ。それを破る奴じゃねぇよ。眼を見ればわかる。お前の目が節穴なだけだ」
「だな、あいつとはついさっき知り合ったばっかだが、キャプテンに似てお人よしってのが一発でわかった。ひと月も同じ屋敷で暮らしていて気付かないとは、オメェ実際は大したことねぇんじゃねぇか?」
「…まあ、そんなことはどうでもいい。カヤは死に、あの女も死に、お前たちも死ぬのだからな!」

 ここに、村の歴史に残らない死闘が幕を開けた。





「なんだぁ、あの女は?」
 
 目標確認―――敵生体数25。

「うお!すっげー上玉じゃねぇか!殺さずに捕えて売ればいい金になりそうだ」

 勝利条件―――敵生体の全滅
 敗北条件―――本体の機能停止および敵生体の村への到達

「んなことより、さっさと村を襲おうぜ。計画通りやらないと、キャプテン・クロに殺されるぞ!」

 左腕形態変化開始―――完了。

「―――戦闘開始」
「な、なんだこの女、左腕ガァ…?」

 一番前にいた男に一気に間合いを詰め、左腕を一閃。男は5つのパーツに分かれて絶命した。

「あ、あの女も悪魔の実の能力者か!」

 あの女『も』?この中に能力者がいるのか。

「ほら、呆けてる場合ではないぞ」
「ウギャー!」

さらに一人。

「ひ、怯むなァ!所詮相手は一人だ!数で押せば問題ねぇ!」

 数で押すか、確かに効果的だ。坂を一気に駆け上がれれば、だが。
 極力背後に敵を逃さぬよう、素早く坂を駆け回りながら、海賊たちを仕留めていく。

「は、速ェ!グエ」
「ゲハッ!な、さっきまで端にいたのに、なんで…」

 そんな中、一人が私の背後に抜けた。

「はあはあ、やったぜゲェ!?な、なんだ!?あ、油ガェ!」
「キャプテンの知略炸裂だな。これからはちょっとくらい作戦の話を聞いてやってもいいか」

 油で滑って転がった男を足で踏みつけながら、キャプテンへの評価を少し高める。

「ヒィ!な、なんだその左腕、で、でっかい口みたいに…ま、まさか!や、やめろ、く、喰わないで―――」

グチャリ………マズ。

「さて、私も時間が惜しい。さっさと片付けさせてもらおう」
「ば、化け物だ!」

捕食を見て海賊どもは恐慌状態に陥っている。後は適当に切り刻んで…イタダキマス、だな。



「イタダキマシタ…」

 左腕を軽く振ってブレードに着いた血を飛ばす。
 あっという間に海賊は視界内にいなくなった。が、最初に感じた敵生体数より1人足りない。
 聴覚探知開始―――完了
 あの岩の裏か。

「ま、待ってくれ!おれはもう戦う気はねぇ!このまま大人しく帰るから見逃してくれ!」

 背が高い…目算で3m32cmといったところか。体系は痩躯で、リーチとスピードがありそうだ。両手に嵌めた鋭い爪付きグローブが武器のようだな。

「こ、こっちくんな!もう戦わないって言ってんだろ!あ、あんたみたいな化け物相手にできるか!」
「………」
「あ、すんません!化け物とか言ってすんません!謝るから許してください!」

 涙を滂沱のように流しながら地面に額をこすりつける男の姿を見ると、なんだか無性にむなしくなり、殺す気も喰う気も失せた。

「失せろ。二度とこの島に来るな」
「お、おお!ありがとうございますぅ!」

 とたんに男は顔を上げ、足に抱きついてきた。

「ウザい、離れろ」
「ああ、今すぐになッ!」
「―――!」

瞬間、胸に焼け付くような痛みが走った。

「ほう、完全に不意を突いたつもりだったんだが…急所をずらしたか。やるねぇ、お譲ちゃん」

 力を振り絞り、バックステップで男から距離をとる。
 胸、人間の最大の急所の一つ、心臓のすぐ横に深い刺し傷ができ、とめどなく血が流れていた。あの瞬間、とっさに身をひねらなければ終わっていた。
 人間の身体とはなんと脆い…!

「改めて自己紹介させてもらう。おれの名はノラ。クロネコ海賊団の奇襲部隊隊長だ。お譲ちゃんと同じ『悪魔の実』の能力者だよ」
「…さっき殺した男が言っていたのはお前のことか」

 男がニヤリと嗤うと、その姿が徐々に変わっていく。
体躯はさらに大きくなり、全身が真っ黒い獣毛に覆われる。グローブが破れ、その下からは明らかに人間ではありえない鋭さを持つ獣の爪が現れる。

「その通り。『動物系 ネコネコの実 モデル:ミックス』」
「明らかにお前らの頭目より強そうだな」
「ああ、強いよ?この実は最近喰ったばかりだしな。奇襲船の中にいた奴らにも今さっき喋ったばっかだ。ジャンゴ船長やニャーバンブラザーズは知らない。勿論、キャプテン・クロもな」
「…他の奴らが全滅するまで出てこなかったのは情報が漏れるのを防ぐためか」
「そうそう。おれの能力がばれちゃあ、いろいろとまずいんでね。手間が省けたよ」
「下剋上か」
「ニャはッ!海賊なら当然だろ?それにクロの大将はこの計画が終わったらおれたちを消すつもりだろうしな。殺る前に殺れ、だ」
「キャプテン・クロは頭脳派と聞いたが、この爪の甘さを考えると大したことないな」
「ニャははは!確かにな。だからあの男は海賊ということから逃げ出したんだ。しかし、お嬢ちゃんはどんな実を食べたんだ?身体の形が変わってるから動物系だと思うんだが…そんな刃物が付いた腕を持つ動物なんてしらねぇし、あのでっかい口も気になる」
「…教えると思うか?」
「ニャははは!そりゃそうだ。お嬢ちゃんをここで始末するのは簡単だが…どうだい?おれの仲間にならねぇか?」
「仲間?」
「そうだ。おれはキャプテン・クロを殺したら海賊団を乗っ取り、ノラネコ海賊団を旗揚げする。目指すは偉大なる航路!だが、あの海賊の墓場を行くにははっきり言ってジャンゴ船長やニャーバンブラザーズ程度じゃあ話にならねぇ。お嬢ちゃんみたいな高い戦闘能力をもつ能力者が欲しいんだ」

 ―――仲間?仲間とはなんだ?…わからない。
 わからないが―――

「断る。お前のような雑種のノラネコに飼われるなど、まっぴらだ」
「強がるなよ、お嬢ちゃん。自慢の左腕も地面につけてねぇと倒れそうなくらいキツいんだろ?」
「…本気でそう思っているなら、お前も大したことは無いな」
「なに?」

 ―――『ニブルヘイムの柱』

「あ、足が!」

 ノラと名乗った男は両足が急に凍りついたことに驚愕する。
 両足が凍りつく?クソ、今の出力ではこの程度か。

「本来だったらお前は塵になっていたはずなんだがな」

 ノラの足元に『ニブルヘイムの柱』を発生させるため、地面につけていた左腕を離し、立ちあがる。

「―――!?胸の傷が」
「再生までに63秒。…話にならんな」

 胸には先ほどまであった刺し傷など、跡形もない。時間が掛かり過ぎて目も当てられないが、ほぼ人間形態のままでも自己修復機能が働くことが確認できたので良しとする。

「な、なんだお前は!動物系つったって、あれほどの傷をわずかな時間で完治させるものなんて…!」
「今から死に往く者がそんなことを気にしてどうする」

 左手のブレードを顎門へと変換。

「や、やめろ!やめてくれ!」
「お前も大して美味そうではないが、動物系能力者としての形態変化の情報をもらうとしよう」
「い、嫌だ!お、おれには野望が、野心があるんだ!こ、こんなところで終わるはずが―――!」
「いや、お前はここで終わりだ」

グチャリ………やっぱりマズい。

「―――!?」

 急激にオラクル細胞の結合が回復していくのを感じる。

―――修復率確認。総修復率30%、右腕ブレード修復率45%、ブースター修復率37%。頭部装甲修復率25%、全身装甲修復率21%、尾部修復率16%。
右腕ブレードおよびブースター展開可能。ただし、右腕ブレード修復不完全のため、切断力、耐久力、攻撃範囲減少。ブースターも同様に長時間の飛行不可。

「…右腕ブレード、ブースター展開」

 本来の姿の右腕とブースターをイメージすると、右腕は左腕と対照的な構造となり、背部には翼を模したブースターが現れた。

「…破損が目立つな。まだ修復は完璧ではないようだ。だが、行動の幅が広がったのは大きいな」

 特にブースターが不完全とはいえ、使えるようになったのは大きい。これで機動力は大幅に上昇する。空中戦もある程度こなせるだろう。
 形態変化に関してもこれである程度予想はついた。原型の破損が激しすぎて、安全装置的なものが働き、原型に戻れなかったと見るべきだろう。捕喰を繰り返し、修復を進めれば、問題なく元に戻れるはずだ。

「そして、悪魔の実の能力者…正確には悪魔の実か。ここまで馴染むとはな」

 オラクル細胞の結合を急速に修復したのは悪魔の実で間違いないだろう。なぜ、そうなったかは現在解析中だ。

「今後、能力者にあったら積極的に捕喰するべきだな。…能力者といえば、確かルフィも………」

本体の修復を最優先し、モンキー・D・ルフィの捕喰を推奨―――

「―――!?却下だ!」

 私は今何をしようとしていた?ルフィを捕食する?馬鹿馬鹿しい。
 …馬鹿馬鹿しい?何故?最も効率がいいはずなのに、何故?

「…これもヒトヒトの実の効果か?アラガミたる私の行動原理にまで影響が及ぶとはな」

 ―――眼の奥がチリチリする。

 ふと、顔をあげて海を見ると、ボロボロになった海賊船が逃げていくのが見えた。

「…ノラという男のこともある。危険は完全に排除せねばなるまい」

 眼の奥がチリチリと焼ける音を聞きながら、私はブースターからエネルギーを放出し、飛び立った。





 船はもう島が見えないほど沖に出ていたが、私の飛行速度のほうが圧倒的に速い。ものの数分で追いついた。

「な、なんだ!?ま、また麦わらの仲間か!?」
「そ、空を飛んできた?それにその腕…こ、こいつも能力者だ」
「お、おれたちはもう二度とあの島には近づかねぇ!や、約束する、だから見逃して―――」

ザシュ
ズルリ、と言葉を発した海賊どもの上半身がずれて、甲板に落ちた。

「ノラという男がな、同じようなことを言っていたよ。それを信用して、私は胸を刺されたんだ。言葉は無用。ただ死ね」

「あ、ああ…!!」
「ひぃ、も、もう嫌だ、嫌だー!」

 後ろを向いて逃げ出す海賊が数名。
 ―――ブースター攻撃形態へ移行。『インキタトゥスの息』発動。
 私を中心にブースターから放射された極低温のエネルギー波は、甲板にいた海賊たちを完全に氷漬けにする。ふむ、出力が上がったか。

「か、身体が…凍った…?」

 運よく、いや、悪く甲板の端にいた海賊は凍りきれずに、自分の身に何が起こったのか理解に苦しんでいた。

「言ったはずだ。ただ、死ねと」
「あ…」

 ただ呆ける男に、無感情にブレードを振り下ろした。



コツコツと歩く。他に物音はしない。この船にいる海賊は一人を除いて私の腹の中だ。
 私はさほど索敵は得意ではないが、それほど大きくない船だ。この先にある医務室に生体反応があることくらいはわかる。

 医務室の扉にブレードを一閃。それだけで扉はただの木くずになる。
 その中には男が一人ベッドに横たわっていた。

「…カリギュラか。おれを殺しに来たようだな」
「ああ」
「クックック、お前がここにいるということは、奇襲部隊も全滅か。あのお遊び海賊団にお前みたいな化け物が入ってくるなんてな。おれはとことん運がない。結局、お前の目的はなんだったんだ?お前ほどの女が、ただ村を守るためだけに戦うとは思えん」
「………船長命令だよ」
「…何?」
「キャプテンが、ウソップ海賊団の船長が団員である私に『村を守れ』と命令を下した。私はそれに従ったまで」

 それを聞いたクロはこめかみに血管を浮かび上がらせ、怒りの表情を浮かべた!

「ふ、ふざけるな!テメェはあのウソツキのクソ餓鬼の命令どおりに行動しただけだというのか!おれの3年越しの計画は、たったそれだけの理由で崩壊したというのか!おれは、あのゴミみてぇな海賊団に負けたというのか!」

 ―――瞬間、眼の奥が燃え上がった。

「ガァ…!」

 クロの首をつかみ上げ、部屋の壁に叩きつける。

「な、なんだお前の眼、まるで、血のように…!」
「…宣言しよう。お前は足元から一寸刻みにしてやる」
「お、お前は、人間じゃ…ねぇのか?」
「ご名答。商品は無期限の地獄巡りだ」





 島へと戻ると、人気のない場所に着地し、ブレードとブースターをしまう。

「カリギュラー!どこだー!」

 私を探すキャプテンの声が聞こえるが、今なら、クロネコ海賊団と戦闘して死亡、もしくは行方不明として、消えることもできる。

「カリギュラー!生きてたら返事してー!」

ブースターも使用できるようになったので、後は適当に島々を渡り、捕喰を繰り返せば良い。むしろ、その方が効率的であるので、こちらを選択すべきだ。

「カリギュラー!出てこい!テメェにはおれをいきなり投げ飛ばしやがった借りがあるんだからな!」
「カリギュラー!腹減ってんだろ!一緒にメシ食おう!」

………

「「「カリギュラさーん!絶対生きてますよねー!」」」
「カリギュラさーん!お願いだから返事してください!」

 …まあ、寄り道というのもいいだろう。





「いやー、無事でよかった。おれの目は無事じゃねぇけどな」
「本当にな。おれの目は無事じゃねぇけどな」
「まったくだ。おれの目は無事じゃねぇけどな」
「ウ、ウソップさんが悪いんですからね!あんなにカリギュラさんの裸凝視して…!」
「あんたらも男なんだから過ぎたことでグダグダ言わないの」
「すまんな。戦闘に夢中で服のことなど全く気にしていなかった」

 あの後声の聞こえた方向へ向かい、無事にキャプテンたちと合流したのだが…
 ブースターの展開、『インキタトゥスの息』等を使ったりすれば、まあ、服は消し飛ぶわけだ。
 見事な全裸で登場した私を目の前にして、男性陣は鼻から出血(ルフィはなんかその場のノリっぽかったが)。それでも私の身体を凝視し続ける男性陣に対して、カヤはウソップ、ナミはルフィ、ゾロ、にんじん、たまねぎ、ピーマンの目を潰した。特にカヤは容赦なく。今は海賊たちが落していったであろう黒いズボンと黒いコートを羽織っている。

「しかし、キャプテン、いいのか?今日のことを話せば、村の住人たちも見直してくれると思うがな」
「おれの名誉と村のみんなの恐怖、どっちを取るかなんて、考えるまでもねぇだろ?」
「…まあ、キャプテンの命令なら従うまでさ」
「他の奴はどうだ?強制はしねえが…」
「「「はい!カリギュラさんが黙ってるなら黙ってます!」」」
「ウォーイ!なんでおれよりカリギュラの方が信頼厚いんだよ!」
「「「だって、キャプテンと違って頼りになるし…」」」
「なんだとテメェら!よーし、おれとカリギュラ、どちらが頼りになるかここで―――」

シャキーン

「ならば、掛かってこい」
「よし行ったれ!ゾロ!」
「お前がいけよ!」



 たまねぎたちはカヤを屋敷に送るため、一足先に村に帰って行った。

「ありがとう。村を守りきれたのはお前たちのおかげだよ」
「何言ってやがんだ。お前が何もしなけりゃ、おれは動かなかったぜ」
「おれも」
「ま、お宝が手に入ったし、別にいいわよ」
「キャプテンの命令を遂行したまでだ」
「おれはこの機会に一つ、ハラに決めたことがある。カリギュラ、お前も後で村外れの原っぱに来てくれ」
「…了解した」



 村はずれの原っぱにキャプテン、私、にんじん、たまねぎ、ピーマンのウソップ海賊団がそろい、キャプテンの口から、ウソップ海賊団解散の旨が知らされた。
 私以外の団員は皆そろって涙していた。涙、アラガミであった私にはないものだ。今の身体で流すことはできるのだろうか?
 わずか1ヶ月とはいえ、ウソップ海賊団の一員として過ごした日々は決して悪くないと感じる自分がいる。涙はでてこなかったが、胸に小さな穴が開いたようには感じた。

―――数時間後

「ぎゃああああああ!」

 ドスゥン!

 キャプテンの家の前で待っていると、パンパンの荷物を背負ったキャプテン、いや、ウソップが坂の上から転げ落ち、林の木に激突した。
 …本当にあの人は何をしているんだ?

「大丈夫か?」
「ん?おお、カリギュラか。おれを見送りに来てくれたのか?わりィな」
「見送り?違うな」

 私はウソップが散乱した荷物を詰め終わったリュックを持ち上げる。

「私も貴方についていく」
「つ、ついて行くって…お前故郷に帰るんじゃなかったのか?」
「故郷…?ああ、あれは嘘だ」
「へ?」
「まあ、私にも色々事情があってな。全ては話せないが、この海を冒険するというのは、私にとっても都合が良い。それに、まだ『誇り』や『心』についても理解していない。理解していると豪語する貴方についていけば、何かわかるかもしれないしな」
「………へ、行っとくが、おれがキャプテンだからな!」
「ああ、またよろしく頼む。キャプテン」



「ぎゃあああああああ!止めてくれー!」

 いきなりだが、キャプテンが海岸へ続く坂から転がり落ちている。

ドゴ!
あ、ルフィとゾロの蹴りで止まった。

「わ、わりぃな」
「「おう」」

 目の前には二つの船。一つは船首が羊を模しているキャラヴェル。名前を『ゴーイング・メリー号』。確か、メリーがデザインし、屋敷の地下に保管されていたものだ。ルフィが乗り込んだところを見ると、これが彼らの船なのだろう。もともとこの村には船を手に入れる目的で来たと言っていたしな。
もう一つはボートと呼んでもいいくらい小型の帆船。これが我が海賊団の旗艦だ。

「…だから私が運んで行くといっただろう、キャプテン」
「いや、さすがに女にこれを運ばせるというの男として…」
「安心しろ。そのあたりはすでに見限っている」
「………」
「泣くなウソップ!きっといつかいいことあるさ」
「おれのトレーニング器具貸そうか?」

 …これが友情というものだろうか?

「…やっぱり海に出るんですね、ウソップさん」
「ああ、決心が揺れねぇ内に行くよ。止めるなよ?」
「止めません…そんな気がしてたから」
「そうか、それもちっとさみしいが。よし、行くか、カリギュラ」
「ああ」
「―――へ?」

 カヤが素っ頓狂な声をあげた。

「ん?カリギュラも一緒に行くんだよ。ついさっき家の前に来てな、新生ウソップ海賊団に入りたいって言うから入れてやった。記念すべき一人目の船員だ」
「うむ、それでは行ってくる。カヤ、達者でな」

「―――!ルフィさん!」
「ん?なんだ?」
「ウソップさんをルフィさんの仲間に入れてあげてください!」
「お、おいカヤいきなり何って(ギロリ)なんでもありません」

 弱いぞ、キャプテン。

「―――?もうおれたち仲間だろ?」
「へ?」
「おら、さっさと乗れ。出航できねぇだろうが」
「カリギュラー、あんた航海術かじってるみたいだからサポートよろしくね」
「キャプテン、新生・ウソップ海賊団は麦わらの一味に吸収されたようだな」
「…ああ、そうみてぇだ。おーい!キャプテンはおれだろうなー!」
「馬鹿言え!おれがキャプテンだ!」

「………」
「おや、これは珍しいものが見れました」
「―――?」

 騒ぐキャプテンたちを見ていると、横からメリーが声をかけてきた。

「とても素敵な笑顔でしたよ。やはり、貴女には笑顔が似合いますね」
「笑った?私が?」
「ええ、しっかりとこの目で見ましたよ。どうか、カヤお嬢様に代わって、ウソップ君をお願いします」
「…了解した」





「新しい船と仲間に!」
「「「「乾杯だーーー!」」」」

 …このテンションについていけんな。だが………

 船上で乾杯をしながら空を仰ぐ。かつて血まみれの船上で、一人で見た空とそれほど変わりは無いはずだが、何かが決定的に違っている気がする。それが何かはわからないが、別にいいだろう。

―――ああ、こんな旅路も悪くない。
























【コメント】

一切の戦闘なく消えていったノラ君に何か一言お願いします。



[25529] 第2話 仲間
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b
Date: 2011/01/23 21:59
「ほう、キャプテンの父親は海賊だったのか」
「ああ、お前が海賊にさらわれてきたって言ってたから、怖がらせないようにあえて言わないようにしてたんだ」
「それはすまなかった。私の嘘で余計な気を遣わせたな」
「いいってことよ。仲間内でこれくらいのウソらなら気にならないって」

 『仲間』―――これも知らないな。

「仲間、とはなんだ?」
「あん?お前は知識が深いくせにたまに誰でも知ってるようなこと聞くよな。仲間ってのは全幅の信頼をおける親友のことだ!」
「…じゃあ、私とキャプテンも仲間か?」
「あったりめぇよ!おれだけじゃねぇ、ルフィ、ゾロ、ナミ、全員が仲間だ!」
「…そうか」

 私とキャプテンはゴーイング・メリー号の甲板で、日向ぼっこをしながら話し込んでいた。
 麦わらの一味になったことにより、ウソップはキャプテンでなくなってしまったが、今更呼び名を変更するつもりはないので、キャプテンと呼ぶことにしている。

「おい、お前らちょっと来い!海賊旗が出来たぞ!」
「ん?ルフィが呼んでいるな。行こうか」
「海賊旗か、どんなんだろうな」

「はっはっは!ちゃんと考えてあったんだ、おれたちのマーク」
「さて、キャプテン。書き直しを頼む」
「応」
「対応早ぇな、オイ!」

「こんな感じか」
「うむ、長鼻髑髏に骨と交差したパチンコ。間違いなく私たちの海賊旗だ」
「「「面影全くねぇだろ!!」」」

 やっぱりだめか。

「うん、うまい」
「こんなとこだな」

 書かれたマークは麦わら帽子をかぶった髑髏。まさしく麦わらの一味を象徴する海賊旗だ。

「さすがだな、キャプテン。芸術センスについては認めねばならん。戦闘力はゴミ以下だが」
「………」
「カリギュラ!謝れ!ウソップに謝れ!」
「事実だろ?」
「「「あ、確かに」」」
「ウォーイッ!」

 その後、ルフィの発案で帆にも同じマークを描くことになった。
 当然、私も手伝っている。

 帆にマークを描きながら、自分の身体のことについて考える。
 まず、悪魔の実のことだが、ノラが変身した雑種のネコには変身できなかった。これは、オラクル細胞の急速な修復に関連している。
 私は現在、ヒトヒトの実を食べている。悪魔の実は2種類以上を口にした場合、能力が反発しあって、身体が弾けると言われている。
 だが、この身は元々はアラガミ、オラクル細胞の集合体だ。オラクル細胞はあらゆるものを取り込み、増殖していく細胞である。私の言う修復とは、オラクル細胞の増殖に他ならない。
私の身体は、オラクル細胞の増殖に必要なエネルギーを2つの実の反作用を利用して、得たらしい。詳しく説明すると、取り込んだネコネコの実に対して、ヒトヒトの実が反応した瞬間、ネコネコの実から放出されたエネルギーのみを吸収し、増殖したということだ。ヒトヒトの実まで吸収しなかった、正確に言うならば、ヒトヒトの実の能力が消えなかったのは、すでにオラクル細胞がヒトヒトの実の特性を取り込んでおり、死滅しても、ヒトヒトの実の特性を持ったオラクル細胞が生まれるからである。つまり、ヒトヒトの実は、反作用を起こすための起爆剤、というわけだ。
まとめると、私にとって、悪魔の実およびその能力者は最高の食材ということである。
当然、エネルギーとして吸収していしまうので、能力は得られないというわけだ。

 身体の修復率については全体で35%程度。キャプテン・クロを捕喰した際、ノラ、つまり悪魔の実の能力者ほどではないが高い修復効果を得られた。つまり、雑魚をただ捕食するより、戦闘力の高いものを捕喰した方が効率が良いということである。
 ゆえに、これから行う捕喰の優先順位は雑魚<実力者<悪魔の実or能力者となる。

「はー…疲れた」

 数時間後、帆には見事な髑髏が描かれていた。
 皆疲れたのか、大の字になって甲板に転がり、ゾロですらマストに寄りかかって座っている。

「ん?ルフィ、何をやってるんだ?」
「折角大砲があるからさ、使ってみようかと思って」
「じゃあ、打ってみればいい。弾込めは私がやろうか?」
「いいよ、自分でやるのが楽しいんだ」
「そうか。しゃあ、見学させてもらおう」

 ふむ、大砲か…これは応用できるかもな。

ドカン!

「見事に外れたな」
「う~ん、うまく当たらねぇもんだな」
「馬鹿め、おれに貸してみろ」

 大砲の音を聞いたキャプテンがやってきた。

「で、どれを狙うんだ?」
「あれだ。二つある岩の右の方」
「OK。さっきの飛距離から計算して、こんなもんか」

 ドゴン!
 今度は見事に命中。

「すげー!一発で当たった!」
「お見事。さすがはキャプテン。遠距離攻撃だけは得意だな」
「オメェはどうしていつも一言多いんだよ!」
「ウソップ、お前は『狙撃手』に決まりだな」
「まあ、ひとまずそこに甘んじてやるか。お前があんまり不甲斐ないことしたら、即船長交代だからな」
「ああ、いいよ」
「むしろ、キャプテンが不甲斐ないことばかりしそうだがな」
「だから、一言多いって言ってんだろうが!」

 あはは、というルフィの笑い声が響く中、ナミとゾロもこちらのことが気になったのか、近くにやってきた。
 …ふむ、丁度いいか。

「みんな、今度は私が左側の岩を破壊しよう」
「お、お前も大砲使うのか?」
「いや、私が使うのはこれだ」

 ―――右腕原型に変形。ブレードから『神機型』ライフルへオラクル細胞組み換え開始。
 ―――『オヴェリスク』形成完了。

「み、右腕が…!」
「銃になった…!」

 アラガミバレット『コキュートスピルム』装填。照準セット。

―――発射!

ズドン!
 右腕の青く輝く銃から放たれた特大の氷塊は目標の岩に命中し、完全に破壊。それだけにとどまらず、貫通した氷塊が海に着弾すると、着弾地点から放射状に海が凍りついた。水平線の向こうまで凍結してしまったので、どこまで凍りついたかはわからない。

「うむ、なかなかの威力だ…どうした?全員顔が面白いことになってるぞ」
「いやいやいや!あんた一体何者よ!悪魔の実の能力者ってみんなこんな化け物なの!?」
「スッゲーーーーーーーー!!カッコイイーーーーーーーーーーーーー!」
「さ、さっすがおれの部下。こ、このくらいできて、と、当然だよな!」
「…とんでもねぇな」

 ―――これで、心の準備は終わった。

「…私はお前たちを『仲間』だと思っている。だから、この力も含めて、お前たちにすべて話しておきたい」
「「「「―――?」」」」

 ここが運命の分かれ道。全て話し終わったとき、まだ私は麦わらの一味でいられるだろうか…?

「まず始めに言っておくことがある。私はキャプテンの島で自分が喰べた実がわからないと言ったが、あれは嘘だ」
「へぇ、じゃあ、なんの実を食ったんだ?」
「動物系 ヒトヒトの実 モデル:ウーマン」
「ウーマン?馬か?」
「違うわよ!ウーマンって言うのは人間の女性のこと。ってことは、もしかして…!」
「そうだ。この女の姿こそ、私が悪魔の実を喰べて得た姿だ」
「…つまり、普通の動物系能力者とは逆に、あの青く輝く腕が貴女本来の姿ってこと?」

 さすがはナミ。理解が早い。

「その通りだ。私は元々この世界にはいない生物だ。ある日突然この世界に落され、ヒトヒトの実を喰べて『人間』となった、いわば『人間化物』だ」
「この世界にいない生物?」
「…元の世界で私は、正確にいえば私たちは『アラガミ』と呼ばれていた」
「『アラガミ』…」
「元の世界は荒廃しきっていてな。もはや、全てをリセットしなければならない状況だった。私はそのリセットを担当する歯車の一つだったんだよ」
「リ、リセットって…」
「その世界に住む全てのモノを喰らい尽すことだ。建物も、植物も、そして、人間も」
「………」
「まあ、人間たちもヤワじゃなくてな。私たちアラガミから身を守る術をいくつか編み出した。その一つに『神機使い』、通称『ゴッドイーター』と呼ばれる者たちがいる。先ほどの銃は奴らが使う『神機』を参考にして作りだしたものだ。『神機』も『アラガミ』もオラクル細胞と呼ばれる細胞でできているから出来ることだが…これは今回関係ないので省くぞ」
「…ええ、そうして。私の頭じゃ理解しきれそうにないし」
「その神機使いたちにやられる直前に転移してきたものだから、ひどい損傷を受けていた。そして、落ちてきたのは海賊船の上…まあ、全員喰ったよ。この船の中にヒトヒトの実があって、それを喰した時点で私が生まれたわけだ」
「………」

 キャプテンがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

「私は捕喰したモノの記憶を得る力もあってな。そこでキャプテンの島への航路を知ったんだ。そしてキャプテンと出会った」
「………」

 ゾロはただ黙っている。その目からは何も読みとれない。

「キャプテン・クロとの戦いで、キャプテンたちと別れた後、やってきた別動隊がいたんだが…こいつらも全員捕喰した。そして、逃げ出すキャプテン・クロとその一味も、な。これが私の正体と今までの行動の全てだ」
「………」

ルフィはじっと私の眼を見つめている。

「…一つ訊きてぇ」
「なんだ?」
「なんでそれをおれたちに話した?」
「…私がお前たちを『仲間』だと思っているからだ。『仲間』とは自分が最も信頼するものたちだと聞いた。だから、全て話したんだ。嘘を吐いたままでは『仲間』でいられないからな」
「…そっか」

 スッと麦わら帽子を顔にかけ、

「ん!ありがとうな、話してくれて」

 はずすと同時に満面の笑みを向けてくれた。

「…意外だな。人喰いは忌避すべきものだと思ったんだが」
「おれたちだって、肉は食う。お前はそれが人間だったってだけだろ?」
「…まあ、そうだな」
「だったら何も問題ねぇじゃねぇか。お前は良い奴だし、片っぱしから人間食おうなんて考えねぇだろ?」
「…ああ、少なくとも、敵対していない人間を喰うつもりはない。敵は別だがな」
「おし!じゃあ、これでおれとお前は完璧に仲間だな!他の奴らはどうだ?」
「…ま、いんじゃない?カリギュラとは結構話が合うし、無差別に襲わないって言うんなら」
「おれは昨日今日の付き合いじゃねぇからな。お前がどんな奴か知ってるよ。全く、水臭ぇなぁ」
「おれだって、今までに少なくない数の人間を殺してる。お前が人喰いだって言われても、「そうか」程度にしか感じねぇよ」

 …胸が熱くなった。

「これからも、よろしく頼む」
「「「「応!」」」」

 こうして、私は本当の意味で『麦わらの一味』となった。





 みんなで船室に入るとルフィは私の本来の姿が気になるのか、色々と訊いてきた。

「なーなー、お前の本当の姿ってどんなのだ?見せてくれよ」
「悪いがそれはできない。さっきも言ったように、前の世界でかなり手ひどくやられたからな。現在は修復中で原型に戻ることが出来ないんだ。私が捕喰をしているのは、本体を修復するためでもある。ある程度修復が済んでいるところは戻せるがな」
「ほー、じゃあ、修復が終わったら、絶対見せてくれよ」
「ああ、いいとも」

 その後、しばらくは雑談になった。

「ところで、考えたんだけどな、グランドラインに入る前にもう一人必要なポジションがあるんだ」
「そうよね、折角立派なキッチンがあるんだし。有料なら私やるけど」
「長旅には不可欠な要員だな」
「できれば、人間の肉も調理できる…いや、すまん。忘れてくれ」
「みんなもそう思うだろ?やっぱり海賊船には―――音楽家だよな」
「「「なんでそうなるんだよ!」」」
「…盲点だった」
「「「いや、盲点でもなんでもねぇから!」」」
「珍しくいいこと行ったと思ったらそう来たか!」
「おいルフィ!カリギュラはそういうことすぐ信じちまうんだから、適当なこと言うな!」
「あんた航海を舐めてんでしょ!?」
「な、なんだよ!?海賊っつったら歌うだろ?当然みんなで」

 などといつもながらのやり取りをしていると、甲板からどなり声が聞こえた。

「出てこい海賊ども!ぶっ殺してやる!」
「何だ!?」

 私とルフィが甲板へ出ると、剣を持ち、顔に『海』と書かれたサングラスの男が暴れていた。

「お前、何者だ?」
「何も、クソも、あるかぁぁぁぁ!」
「―――!」

 剣が船に直撃する軌道を描いていたので、左腕を原型に戻し、剣を受け止める。

「グッ!テメェ、能力者か!?」
「まあな。で、お前は何者だ?」
「こちとら名のある海賊の首をいくつも落してきている賞金稼ぎ!名もなき海賊風情が、おれの相棒を殺す気かぁ!」

 これは駄目だな。頭に血が上っている。

「少し冷静になれ」

パキン!

「なッ!お、おれの剣が!」

 私が触れている部分から剣が凍りつき、刀身が粉々に砕け散った。ふむ、微調整もだいぶ楽になったな。

「か、紙一重だったか…」
「随分厚い紙一重だな」

 男は戦意を失ったのか、その場に膝をつく。しばらくすると、残りのメンバーも甲板に出てきた。

「ん?お前、ジョニーじゃねぇか」
「ゾ、ゾロのアニキ!?」
「どうした、ヨサクは一緒じゃねぇのか?」

 ゾロの知り合いか?

「そ、それが、ヨサクの奴…」



「病気?」

 ジョニーという男が言うには、甲板に運び込まれ、私たちの目の前で横たわっている男の体調が数日前からおかしくなったらしい。
症状は頻発する気絶、歯の脱落、古傷からの出血か…

「どうしたらいいかわからず、さっきまであった岩山にヨサクを寝かせておいたらこの船からいきなり砲撃が…」
「………」
「「すいませんでした」」
「済んだことだ、気にしねぇでくれ。それに、ごめんですんだら警察はいらねぇ」

 む、少々胸が痛いな。

「アニキ、こいつ死んじまうのかなぁ?」
「いや、死なないんじゃないか?なあ、ナミ」
「ええ、まだ大丈夫なはず。ルフィ、ウソップ、キッチンにあったライムを絞って持ってきて」
「「合点だ!」」
「―――?」
「壊血病。それがヨサクの病名だ」

 隣でルフィとウソップがヨサクにライムのしぼり汁を飲ませている。

「手遅れでなければ数日で治るわ。一昔前は不治の病って言われてたけど、原因はただの植物性の栄養の欠乏」
「昔の船は日持ちしない果物や野菜を乗せていなかったらしいからな」
「「すっげー!お前ら医者か!?」」
「常識だ」
「ほんとあんたらいつか死ぬわよ!?」
「栄養全開!復活だー!」
「おお!やったぜ相棒!」
「そんな早くなるかッ!」
「ゲフッ!」
「相棒ォーーー!」

 ふむ、砲撃してしまった借りを返すか。

「よし、今楽にしてやる」
「ちょッ!なんでいきなりその青い銃ヨサクに向けてるの!?」
「ギャー!やめてくれ!ヨサクはまだ助かる!」
「いいから黙って見てろ」

 ヒールバレット装填―――照準セット
 ―――発射。

「ヨ、ヨサクゥゥゥッ!」
「グ、グオォォォォ…あ、相棒…」
「ヨサク死ぬなァァァァ!」
「いや、むしろめっちゃ元気出た」
「「「「「エエェェェェェェェェッ!!」」」」」
「ふむ、成功だ」
「な、なにしたの?」
「私のオラクル細胞から作りだした、撃った対象を治癒する弾丸を撃ち込んだ。これはなかなか優れものでな。失った血液や体力も回復させることが出来る」

 元の世界で捕喰した神機の中に装填されていたので、バレットの組成は知っていたしな。

「オ、オラクル細胞って、一体なんなのよ」
「まあ、細かい理屈などどうでもいいだろう。結果としてヨサクは元気になったのだから」



「申し遅れました。おれの名はジョニー!」
「あっしはヨサク!ゾロのアニキとはかつての賞金稼ぎの同志」
「以後、お見知りおきを!」
「ところで、その髪の長い姐さん。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ。私はカリギュラ。この一味に身を置かせてもらっている」
「カリギュラ姐さんですか。特に貴女にはお世話になりました。本当にありがとうごぜぇます!」
「気にするな。私も実験がうまくって良かったと思っているしな」
「へ?」
「いや、あれ撃つの初めてだったんだよ。成功してよかった。失敗したらお前はザクロみたいになっていっただろうな」

 ―――?なぜゾロの後ろに隠れるんだ?

「…あんたって、結構黒いわよね」

 そうか?



「これは教訓ね。長い船旅にはこんな落とし穴もあるってこと」
「ヨサクもこの船に遭わなければ、間違いなく死んでいた」
「船上の限られた食材で栄養配分を考えられる『海のコック』」
「考えてみりゃ、必須の役職だよな」
「よし、決まりだ。海のコックを探さそう。何よりうまいもん食いたいしな。カリギュラもそう思うだろ?」
「ああ、私も人間がうまいというものがどういうものか、興味がある」
「あんたらの食欲を見たら、コックが逃げ出す可能性もあるけどね。まだ航海2日目なのに、1ヶ月分の食料が底を突きそうって、どんだけよ」

 …これでも結構我慢しているんだがな。

「はいはい!アニキと姐さん方に提案があります!」
「何だ。言ってみろ」
「海のコックを探すなら、『海上レストラン』がいいと思います」

 海上レストラン?
 レストランとは、確か人間たちが代金を払って捕喰をする施設だったな。

「ここから2、3日船を進めれば着くはずだ。ただ、あそこはグランドラインの近くなんで、ヤバい奴の出入りも多いです。アニキの探している『鷹の目の男』も現れたことがあるって話だ」
「―――!」

 ゾロがニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

「よかったら案内しますぜ」
「「たのむーーーーー!」」
「行き先が決まったわね。カリギュラ、船の進路を調整するから手伝って」
「了解した」

 海の上にあるレストランか。興味は尽きないな。





 ジョニーとヨサクの小舟を引きながら航海すること2日。
「おお、あれが海上レストランか?」
「そうです。あれが海上レストラン『バラティエ』です!どーっすか皆さん!」
「でっけー魚!」
「ファンキーだな、おい!」
「うわー!」

 やはり、前の世界の船とは大分違うな。人間たちが愚者の空母と呼んでいた船の残骸はこんな遊び心は一切なかった。
 私も含め、皆がバラティエに目を奪われていると、後方から別の船がやってきた。

「か、海軍の船!?」

 帆に描かれたカモメとMARINEのマーク。間違いなく海軍の船だ。
 確か、この世界のゴッドイーターたちのような役目を担っている組織だったと記憶している。

「う、撃ってこねぇだろうな?」
「可能性はあるな。海軍にとって、この船は敵船だしな」
「カ、カリギュラ!ま、守ってくれよ!?」
「ああ。大砲の弾くらいなら、この距離で撃たれても真っ二つにできる」
「「た、頼もしすぎるぜ!カリギュラ姐さん!」」

「…見かけない海賊旗だな。おれは海軍本部大尉『鉄拳のフルボディ』。船長はどいつだ、名乗ってみろ」

 海軍の船からペアナックルのようなものを両手に付けた厳つい男が出てきた。

「おれはルフィ。海賊旗は一昨日作ったばっかりだ!」
「おれはウソップだ」
「カリギュラという。私たちはこの先のレストランに用があるだけだ。勿論、客としてな。そちらも仕事でこんなところまで来るわけもないだろうし、ここはお互い見なかったことにしないか?」
「フン、そこの髪の長い女が船長か。なかなか肝が据わってるいい女じゃねぇか」
「ちょっとまて!船長はおれだ!」

 ルフィが抗議するが、フルボディは相手にする気がないようだ。

「ん?そういや、後ろにいる2人、見たことがあるな。確か…小物狙いの賞金稼ぎ、ヨサクとジョニーつったか、とうとう海賊に捕えられたか?」
「おうおうヨサク、喧嘩売ってきやがったよ、あの兄ちゃん」
「小物狙いとは聞き捨てならねェ。1ベリーの得にもならねぇが、あのお坊ちゃんに思い知らせてやらなきゃな」
「こちとらカリギュラ姐さんに新調してもらった剣もあるんだ!思い知れ、海軍のひよっこがァッ!」
「………はあ、面倒くせぇなぁ」

 3分後、そこにはボコボコになったヨサクとジョニーの姿が。

「か、紙一重だった」
「だから、お前らの紙一重は厚すぎるというに。だいたい、ジョニー、私が壊してしまった剣の代わりに造ってやった氷の剣は、前のやつより切れ味も使いやすさも数段上なはずだぞ?」
「お前ら、本当はすっげえ弱いんじゃねぇか?」
「何やってんだよ、お前らは」

「んもう、フルボディ。弱い者いじめはその程度にして、早く行きましょ?」
「ああ、そうだな」

 女連れか。カヤが呼んでいた恋愛小説というものにこんな男が出てきていたな。

「運が良かったな。そこの船長が言ったように、おれは今日定休でね。ただ食事を楽しみに来ただけなんだ。任務中にあったら、それがお前らの最後だと覚えておけ」

 それだけ言うと、フルボディの船はさっさとバラティエへ向かっていった。

「―――ん?ヨサク、何か紙を落としてるぞ?」
「あ、ああ。そりゃ賞金首のリストですよ」
「ほう、こいつらを殺せば下にある賞金が貰えるのか?」
「いや、カリギュラ姐さんは海賊だから無理です。あと、海軍は公開処刑を望んでますから、殺しちまうと3割も賞金が下がりやす」

 20年前、ゴールド・ロジャー処刑により、大海賊時代が幕開けてから、海軍の権威は下がる一方らしいからな。少しでも権威を回復したいということか。

「………」

 ふと、横を見ると、何が無言で一枚の賞金首リストを凝視していた。

「?どうしたナミ、そんなに賞金首のリストを凝視して―――」
「おいやべぇぞ!海軍の奴、こっちを大砲で狙ってやがる!って、撃ってきたァァァァ!」

 ―――!クソ、あんな男の言葉など信じるべきではなかった。
 私は即座に砲弾を切断しようと、左腕のブレードを展開した。

「待て!おれがやる」
「ルフィ…?」
「見てろ、カリギュラ!これがゴムゴムの実の能力だ!ゴムゴムの…」

 ルフィは砲弾の前に立つと、大きく息を吸い込んだ。すると、その身体がまるで風船のように膨らんでいく。なるほど、通常では考えられない柔軟性。これがルフィの能力か。

「―――風船!返すぞ砲弾!」

 …おい、そのコースは―――

「見事に着弾したな。―――バラティエに」
「どこに返してんだアホンダラァァァァァッ!!」



「で、どうするんだ?」
「う~ん、やっぱり謝りに行こう」
「海軍の方が先に手を出してきたんだ。一般の町等ならともかく、荒くれが集まるバラティエなら、海軍の責任とすることも十分できると思うが」
「いや、結局はおれが原因だしな。筋は通さねぇと」
「そうか。ならば、私が直接送って行こう。みんなは後から船で来てくれ」
「え?小舟でも出すの?」
「いや、これで行く」

 ―――ブースター展開
 次の瞬間には、背面に翼型のブースターが出現していた。

 …完全に蛇足かもしれないが、今回は服は破れていない。前回の経験から、さすがに毎回全裸になるのはまずいと思い、自身のオラクル細胞を使って、原型に戻っても破けない服を作り出した。今の服装は、ゴッドイーターたちが『スイーパーノワール』と呼ぶ黒いコートとズボンだ。ただ、もっと詳細に言うならば、これは外皮を服のように見せかけているだけなので、ボディペイントといった方が正しいかもしれない。

「「「「「エエェェェェェェェェェェェッ!!」」」」」
「カ、カッコよすぎる………!」
「…感涙の涙まで流してくれるとは、恐れ入る。さあ、行くぞ、しっかり掴まれ」
「応!」

 ブースターからエネルギー(攻撃用の極低温のものとはまた別)を放出して離陸し、砲弾が直撃したバラティエの三階の部屋へと向かう。

「ウオォ!速ェ!カリギュラ、お前、ホントにすごいな。やっぱお前は最高の仲間だよ」
「………そうか、ありがとう」

 きっと、私は今、笑顔を浮かべているだろう。
















【コメント】
カリギュラさんは常に全裸でいることが決まりました。


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