日本銀行の白川方明総裁は17日の支店長会議で「景気の改善に一服感がみられる」と発言した。家電エコポイントなどの政策による需要の下支えが弱まった結果でもあるが、今は日本経済が自律的に回復に向かえるかどうかの正念場だ。企業や家計が元気を取り戻せるよう、経済の活性化策こそが求められる。
春先にかけ景気は再び回復軌道に戻ると日銀は見ている。大きな理由は新興国経済の予想以上の拡大だ。
なかでも好調なのは日本と近接している新興アジアである。中国の2010年の実質経済成長率は10%になったとみられ、日本からの輸出も伸びている。米国も年末商戦が順調で、10~12月期の企業収益は予想を上回る拡大ぶりを示している。
日本の輸出企業が体勢を立て直し、想定為替相場を円高方向に修正しだしたのも見逃せない。リストラの一巡も家計にはプラスになろう。
問題は頼みの外需が多分に、米国発のカネ余りによって支えられている点にある。米連邦準備理事会(FRB)の金融の量的緩和は成果を上げだしたが、余剰資金は新興国に流れインフレの懸念を強めている。
日本にとっての悩みは、世界的カネ余りが促す資源・食料の高騰である。これらを輸入に頼っているので、輸入量が変わらなくとも海外に余計におカネを払わなければならなくなるからだ。仮に原油高が定着し、今年の平均価格が1バレル100ドルとなると、昨年に比べた貿易条件の悪化に伴う損失(交易損失)の拡大は約8兆円にのぼるとの試算もある。
原料の資源・食料価格を製品価格に転嫁できなければ、企業の収益は圧迫される。転嫁できたらできたで、値上がり分だけ家計の所得は実質的に失われる。商品高騰が景気を圧迫した2008年にかけてのような事態の再来には、警戒が怠れない。
日本がこの荒波をしのぐには、単に海外景気に頼っていてはだめで、製品やサービスの付加価値を高めないといけない。韓国などライバルに負けない技術力を磨き、ブランド力を高めるよう、政府による一層の後押しが必要になってくる。
法人実効税率の5%引き下げで事足れりとせず企業の負担をさらに軽減し、規制改革に拍車をかけビジネスの機会を増やすことも欠かせない。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を急ぐことも、企業の期待成長を高め、設備投資の増加などを通じ早い時期に景気に好影響を与える可能性がある。
一連の策を通じて企業と経済を強くする。そんな正攻法こそ必要だ。
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