３年前、実の妹を食道がんで亡くしたのに続き、一昨年、自分もすい臓がんに

●日吉ミミさん

♪恋び〜とに　ふられ〜たの　よくある話じゃないか〜。大阪万博が開催され、日航機・よど号ハイジャック事件が発生した７０年、こんな歌詞の「男と女のお話」が大ヒットした。歌ったのはボブヘアでハスキーな歌声が印象的だった日吉ミミさん。ちょっと投げやりな歌い方が話題になり、小学生がマネしたものだ。日吉さん、今どうしているのか。

「ようこそいらっしゃいました。ごゆっくりしてくださいね」

　新宿・歌舞伎町。東横インそばのビル５階にあるミニクラブ「ラウンジＭＩＭＩ」の扉を開けると、華やかなオレンジ色のジャケットを着た日吉さんが迎えてくれた。

「ここは９４年９月９日にオープンしましたから、今年で１７年になります。基本的にメンバー制ですが、事前にご連絡いただければどなたでも大歓迎です。セット料金は６０００円で、焼酎のボトルが５０００円からになってます」

　カラオケＯＫの１１坪の店内はＬ字形で、カウンター９席、テーブル席１６の計２５席。モスグリーンを基調とした落ち着いた雰囲気だ。

「この店、もともとは実の妹がママをしてました。ところが、３年前に食道がんで亡くなり、ワタシがママを継いだところ、一昨年の４月に今度はワタシがすい臓がんで緊急入院することになって。妹の命日の５月２５日に８時間を超える手術を受け、無事に成功したものの、丸２日間は昏睡（こんすい）状態でした」

　すい臓がんとは予後がやっかいながんに侵されたものだ。

「ええ、今でも２週間に１度の検査と抗がん剤の点滴が欠かせません。焦らず、気長に付き合うしかないですね」

　５年前に実母、そして妹を亡くし、さらには自らのがんと不幸、苦労続きだったため、一時は生きる気力がうせ、心身ともにボロボロになったと振り返る。

「だけど、そうだったからこそ、命の大切さを改めて感じました。で、命ある限り諦めずにガンバろうって思いを田久保真見先生に託して作詞していただいたのが、去年５月にリリースした４５枚目のシングル『いのちのしずく』です」

●「闘病生活はつらかったけど、くじけなくてよかったと思います」

　さて、日吉さんは６７年、池和子の芸名で「涙の艶歌船」を歌って歌手デビュー。だが、まったく鳴かず飛ばずだったため、６９年に心機一転、日吉ミミと改名して再デビューし、「これがダメだったら……」と引退を覚悟して７０年５月、「男と女のお話」を発売した。すると、これが６０万枚超のセールスを記録する大ヒットとなり、続く「男と女の数え唄」も売れた。その後も寺山修司作詞の「ひとの一生かくれんぼ」「たかが人生じゃないの」がヒット、人気を不動のものにした。

「お店には北海道から沖縄まで、全国各地からファンがお見えになります。みなさん、“元気になってよかったね”とか“顔を見てホッとしたよ”っておっしゃってくださる。闘病生活はつらかったけど、ホント、くじけなくてよかったと思います。きっと歌があるからこそ、ガンバれたんでしょうね。だから、声が出る限り、命がある限り、ワタシは現役。日本レコード大賞歌唱賞を目指し、これからもステージに上がり続けます」

　新宿区内のマンションに暮らす。

（日刊ゲンダイ2011年1月21日掲載）