映画「容疑者Xの献身」に限らず、ネット上で作品の批判をする人って結構「破綻している」とか「矛盾している」という言葉を使う人が多いよね? 「マクロスF」そうだったなぁ・・・。 でも、そういうのって、実は「矛盾」とか「破綻」と書いている人の思考が破綻している方が多い。どうも安易に「破綻」や「矛盾」という言葉を使い過ぎているんじゃないかなぁ? というわけで、以下そういう批判を某掲示板から引用して検証してみた。盛大に【ネタバレ】するので映画を楽しみにしている人は見てから読んでね♪ まず、もっともビックリした批判(?) 映画も小説も作り物なのは承知の上なんだから、まぁ、これ書いた人は実は映画みてないか、釣り目的のメッセージなんだろうと思うけれど、本当に映画観てこう考えたんだったら、ある意味凄い(爆)。 日本語の表現が不自然な部分があったりしたので、もしかしたら日本人ではないのかも? これは検証するまでもなく、「遺体は運べない」ことが重要。花岡母娘と石神が住むアパートは地下鉄浜町駅に近い隅田川付近にあり、石神が殺人を犯した場所は篠崎駅に近い江戸川沿いにある。 石神は富樫殺人事件が遺体発見現場である篠崎駅付近の江戸川河川敷で起きたことを偽装したかったわけで、遺体を切断して運んだと思われては偽装する意味がない。 一方で本当の富樫の遺体は、映画のED中に隅田川から発見されたことを暗示するシーンがある。こっちは石神が富樫が殺された翌日とさらに翌日の午前中に半休を取得していることから、おそらくバラバラ遺体になってるのだろう。 もうひとつ、的外れな批判 顔をボコったのなら必ず跡が残る映画の中で顔を殴るシーンはなかったですよね? 富樫は蹴りを入れてるのと、美里に水商売で稼がせようとするような発言をしているので、商売道具になる顔を傷つけるとは考えにくい。 ついでに言うなら映画中の捜査の中で警察が美里の外傷を確認する必然性はどこにもない。 ちなみに、『娘が殺されそうなほど暴行を受けたから母親は富樫を殺した』というのも疑問。富樫に対して一番先に暴行を働いたのは美里。つまり母娘とも富樫の行為に過剰反応した可能性は十分ある。きっと同居していたころ相当酷い虐待を受けてトラウマになっていたんじゃないのかな? その他、こんな批判があった。 殺人の痕跡なんて花岡母娘の部屋を捜査すればすぐ出てくる これも江戸川河川敷で発見された遺体から現場で殺害された可能性が高く、花岡母娘に対する逮捕状も捜査令状もない段階で花岡母娘の部屋を家宅捜査はできない。 もちろん、花岡靖子が出頭した時点で、家宅捜索されて証拠物件が出たことは十分考えられる(原作では殺害直後に石神が美里に部屋を掃除するよう指示している)。 個人的には、それよりも石神が逮捕された時点で部屋を捜索された時、風呂場の血液反応とかが出なかったかどうかが気になるんだけどね。もし、風呂場で血液反応が出れば、河川敷の殺人とは別に事件があったことが発覚してしまう。 指紋とDNAは富樫の前科や実家・親族の追跡でばれる これはそのとおりなんだけれど、映画の中でもDNAや指紋の追跡が進展している描写はない。が、これは取調室で湯川と石神が対峙した際、石神が“一事不再審”を狙っていることがわかる。 石神としては、一刻も早く「富樫殺人事件」について刑事裁判を結審させることが最優先。一審で結審して判決が言い渡されれば、石神は上告せず刑が確定する。その後本当の富樫の遺体が発見されたり、DNAや指紋から新事実が発覚しても誰も再審請求をしないから再審は行われず、浮浪者の殺人事件に関して石神が再逮捕されるだけだろう。 判決確定後になって花岡母娘が富樫殺人事件について自白しても逮捕はできない。ある意味、裁判制度の欠陥をついてるわけですね(怖 ただ、真実を知った花岡靖子がすぐに自首すること(原作では美里が自殺未遂を起こすことも)石神は予見できなかった。ロジックにこだわりすぎて倫理を蔑ろにしてしまった結果とも言える。 いわゆる“完全犯罪”を狙ったトリックでないところが凄いよね。 で、個人的にこの作品がトリック的に全然不満がなかったかというと、実は私自身、原作を読んだ時に「犯行日が意図的に伏せられている」部分だけが多いに不満だった。「もともと、犯行日が良くわからないようになってるじゃん! その点以外は凄いトリックなんだけどな」と思っていたのだが ・・・それが私の見当違いだった!! 映画でも冒頭、石神が「みさと」に弁当を買いにいった日の夜に富樫殺人事件が起きているのに、石神の勤務表は警察が犯行日と推定している日の午前中に半休になっている(ちなみにその翌日も)。 石神は学校の昼食用に弁当を買っているので、半休を取った日は弁当を買っていない。したがって、警察が犯行日と推定している日には富樫は殺されていない。 ・・・いや、お恥ずかしい。目から鱗でした(笑) Wikipediaに書かれている“『容疑者Xの献身』をめぐる「本格」論争」”で推理作家の二階堂黎人が「手掛かりの見落としなど、基本的な誤読がある」と指摘されたのはこのことだったのか!! プロの推理作家でもこれだ。この議論を読むだけでも「容疑者Xの献身」が凄い小説であることが良くわかる。直木賞をはじめとして賞を総なめしたのも納得。私を含め、素人風情は批評する前に本格論争の議論を読めってことなんですね(笑) って、読んでも理解できずに「破綻してる」とか「矛盾してる」って言う人が多数出てきそうだけれど(爆) 「容疑者Xの献身」オリジナル・サウンドトラック UNIVERSAL J(P)(M) 2008-10-01 菅野祐悟 ユーザレビュー: Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
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【小説】「容疑者Xの献身」東野圭吾
容疑者Xの献身 (文春文庫) 「容疑者Xの献身」の献身読み終わりました。 暇つぶし時間:急いで読んで3時間 先に演劇集団キャラメルボックスの演じた演劇版の方を見ています。 こちらも素晴らしい演劇でしたので、時間のある方もない方もオススメします。東京では5月24日.. ...続きを見る |
ちゃんぷる〜 2009/05/12 21:33 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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ふーん、そんな批判が出てるんですか。 |
クルトンパパ 2008/10/20 11:05 |
クルトンパパさん> |
さとし@快投乱打 2008/10/20 13:21 |
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