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漫画「ちはやふる」編集者が裏話 “かるた王国”存在大きく

(2011年1月23日午前7時30分)

拡大 競技かるた漫画「ちはやふる」の魅力について語る講談社BE・LOVE編集部の冨澤絵美さん 競技かるた漫画「ちはやふる」の魅力について語る講談社BE・LOVE編集部の冨澤絵美さん


 人気の競技かるた漫画「ちはやふる」の編集担当を務める冨澤絵美さん(32)=講談社BE・LOVE編集部、あわら市出身=が、このほど福井県立図書館で「かるたの魅力」と題し講演した。福井渚会でかるたを学び、作者の末次由紀さんと県内や全国主要大会を取材するなど、作品の立ち上げから“二人三脚”で歩んでいる。脇役のせりふまで丁寧に描き切り「和歌の意味など、私が気づかない視点でかるたの世界を描いてくれる」末次さんのエピソードや、かるた王国福井の強さの秘訣(ひけつ)について語った。

 ■叙情性と迫力と
 小学校入学前にはかるたを100枚すべて覚えた。小学6年から4歳下の弟と福井渚会に入り、練習日には5時間近く熱心に取り組んだ冨澤さん。藤島高では友人とかるた部を立ち上げた経験もあり「高校でかるた部を結成した主人公の綾瀬千早のエピソードにつながっている」という。

 入社後配属されたBE・LOVE編集部で、3年目には「かるた漫画をやってみたい」と決意。だが当時は「編集長がかるたを知らず、私もかるたをどう面白くすればいいか分からなかった」。

 転機は2年後の2007年5月、同僚から漫画家の末次由紀さんを紹介されたことだった。新連載を検討していた末次さんに「かるた漫画はどうですか」と打診。末次さんは高校時代、かるたクラブに所属していたため、他の作家以上に関心を持ってくれた。

 「美しさと迫力を兼ね備えた絵を描く末次さんなら、かるたの叙情性と迫力の両方を表現することができる」と確信を得た冨澤さん。「かるたの魅力は動と静の切り替わり」という冨澤さんの持論に加え、同僚の助言を得て「かるたはスポーツ」という視点を切り口にした。そこへ和歌の世界を落とし込み、漫画「ちはやふる」第1話は同年12月、掲載された。

 ■恵まれた環境
 現在A級、四段の腕前という冨澤さん。渚会の先輩で、1991年にクイーン位に就いた山崎みゆき八段の存在が大きかったという。「子ども相手でも決して手を抜かない。偉大な人と幼いころから練習できる環境が、福井の強さの秘訣」。指導者の栗原績(いさお)九段も「私たちを優しく導いてくれる大きな存在」という。

 連載前に、末次さんは渚会をはじめとする県内各地を取材した。末次さんは「福井の人は人懐こく、方言も温かい。この世界を漫画に反映したい」と喜んだ。

 それが主人公の綾瀬千早にかるたを教える福井出身の少年「綿谷新」の存在につながっただけでなく、風景、土産物、書店名など細かい部分まで「福井」が反映された。末次さんは「福井でかるたが盛んでなかったら、できなかった漫画」と言い切っているそうだ。

 ■オファーは既に
 末次さんは、現場で多くの取材を重ねる。連載前には渚会の栗原九段の親友で、冨澤さんも指導を受ける東京・府中白妙会の前田秀彦七段(福井市出身)を徹底取材した。「こんなにかるたを好きな人がいるなんて」と感激した末次さんは、千早を指導する「原田先生」のモデルに設定した。

 冨澤さんが歌の意味を知らないと話したことがきっかけで、和歌を愛するチームメートの「大江奏」が生まれたことも紹介。「いろんな人を研究し、脇役もしっかりしている。コメディーの要素も多く、男性の読者にも受け入れられている」と話す。

 携帯電話のCMに起用されたこともある、ちはやふる。気になるのはドラマ、映画など実写化の可能性だ。冨澤さんは「実写化は私の担当外の話なので多くは言えない」と言いつつも、「オファーは(2008年に)単行本1巻が出たころから複数来ている。実現するとしたら、満を持してという形になるのでは」とも話してくれた。

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