宮城のニュース

性犯罪前歴者GPS常時監視 宮城知事、条例検討を表明

性犯罪前歴者らの行動を警察が監視する条例制定の検討を表明し、報道陣の質問に答える村井知事

 村井嘉浩宮城県知事は22日、県庁で開かれた性犯罪対策を話し合う有識者懇談会の席上、性犯罪前歴者やドメスティックバイオレンス(DV)加害者の行動を警察が常時監視できる国内初の条例制定の検討に入ったことを正式に表明した。衛星利用測位システム(GPS)の携帯を義務付け、必要に応じてDNAも提出させることを想定している。
 村井知事は懇談会で「性犯罪者の4割が再犯に及ぶという統計もある。米国や韓国ではGPSの装着を義務付け、再犯防止に大きな効果を上げている」と指摘。「タブーや批判を恐れずに対策を検討して、宮城からのろしを上げ、国を動かす先駆けになりたい」と強調した。
 非公開の懇談会後、村井知事は取材に対し「(条例の内容は)法律を超えるわけではなく、基本的には自治権の範囲内でできる」と説明。3月末までに条例化の可否を判断し、2011年度内に県議会へ条例案を提出する方針を示した。
 犯罪抑止の効果については「GPS装着だけで性犯罪、DVの被害が撲滅するとまでは思わないが、抑制はできる。DNA提出も犯罪摘発率が格段に向上することは間違いない」と話した。
 行動監視が人権侵害につながるとの批判には、精神障害者の措置入院を決定できる知事権限を例に挙げ、「延長線上にある権限と考えてもいい。公共の福祉に供するなら人権侵害ではない」と反論した。
 宮城県によると、監視対象とするのは女性や13歳未満の子どもへの強姦(ごうかん)、強制わいせつなどの罪で懲役や禁錮刑を執行された20歳以上の県内在住者。裁判所から接近禁止の保護命令を受けたDV加害者も含める。
 専門家の審査委員会が再犯リスクが高いと判断すると、知事は行政処分でGPSの携帯、DNA提出を命じることができる。違反すると罰金を科すが、県外に移動すれば条例は適用されない。
 性犯罪前歴者には、警察署ごとに設置する「地域行動支援委員会」(仮称)に行動記録を提出することも義務付ける。
 県はほかに、児童ポルノの単純所持や、女性や子どもに不安を与える威迫行為などを禁じる条例の制定も検討している。

◎宮城知事一問一答/人権侵害にならぬ

村井知事と報道陣の一問一答は次の通り。
 ―懇談会の委員からはどんな意見が出たか。
 「『GPS装着、DNA採取で性犯罪やDVは根絶できない』と厳しい意見が多かった。私もこれで根絶できるとは考えていないが、犯罪抑止の効果は期待できる。当然、さまざま施策を組み合わせて効果を大きくする」
 ―警察による行動監視は基本的人権の侵害につながるとの指摘がある。
 「例えば精神的な障害で他人に危害を与える可能性がある人を、私の命令で措置入院させることができる。公共の福祉に供しないという理由で与えられた権限だ。行動監視はその延長線上と考えていい。性犯罪の再犯を少しでも抑えられるなら人権侵害にならない」
 ―犯罪者予備軍のレッテルを貼ることにならないか。
 「GPSを付けている、DNAを採取したという情報を外部に出せば、プライバシーを大きく侵害する。『そこまで情報公開しろ』という声もあるが、それはやり過ぎ。最低限のプライバシーを守りながら、犯罪抑止に一歩踏み込んでみたい」
 「性犯罪、DV被害が増えている実態を見れば、国が早急に対策を取るべきだが、批判を恐れて前に進もうとしない。宮城県が先んじて他県が追随すれば、結果的に国を動かすことができる」
 ―今後の予定は。
 「まだ議論のたたき台を示した段階。懇談会委員の意見を採り入れて修正し、3月末に条例化するか決めたい。目標としては2011年度内に県議会へ条例を提案したい」


2011年01月23日日曜日


Ads by Google

関連記事

powered by weblio



△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS
  • 47CULB