事件【主張】全盲男性転落死 温かい目を皆でもちたい2011.1.23 02:55

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【主張】
全盲男性転落死 温かい目を皆でもちたい

2011.1.23 02:55

 朝夕の駅のホームで、立ち止まったまま短い時間、目を閉じてみるだけでどれだけ不安な気持ちになるか、少しはうかがい知ることができる。

 東京のJR目白駅で16日、全盲の武井視良(みよし)さんがホームから転落し、電車にはねられて死亡した。駅には、転落防止用のホーム柵が設置されていなかった。なんとも痛ましい事故だった。

 同じ悲しみを繰り返さないために、ホーム柵の完備など環境整備を急ぐことはもちろん、彼らを見守る駅員、乗客、一人一人の温かい目が必要だ。

 全日本視聴障害者協議会のアンケートによると、都内の全盲者の約7割が「転落の経験がある」と答えた。

 衝撃的な数字だ。武井さんは、音の出るボールを打ち合う「日本ブラインドテニス連盟」の会長を務めていた。副会長の桂田元太郎さんもホームから転落し、重傷を負った経験があるという。全盲者にとって、駅は極めて身近な危険地帯なのだった。

 国土交通省は1日あたりの利用客が5千人以上の全国約2800駅にホーム柵などの設置を呼びかけ、昨年3月時点で449駅に設置された。同省によると、設置後の駅で転落による人身事故は皆無だという。

 山手線では現在、恵比寿、目黒の2駅でホーム柵を運用中だ。平成29年度までに約500億円をかけて全駅に設置する予定だが、駅によっては基礎から作り直す必要もあり、簡単な工事ではないという。国などの補助はない。

 ホーム柵だけではない。ホーム端の点字ブロック上には、そこが停止線であるかのように、乗客の足が並んでいる。駅周辺の歩道上の点字ブロックには自転車が列をなしている。これでは白い杖(つえ)のつきようがない。そういえば、点字ブロックの開発者、田中一郎さんも平成3年、私鉄駅のホームから転落し、亡くなったのだった。

 先日、通勤駅のホームで、点検停止中のエスカレーターに乗ろうとする白い杖の男性に、茶髪の若者が「いま、動いていませんよ」と声をかけるのをみた。男性は「どうもありがとう」と笑顔を返した。心温まる光景だった。

 すべての駅が視覚障害者にとって安全な場所になるよう急いでもらいたい。それまでは、みんなでホーム柵の代わりを務めよう。

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