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<京都福祉事業特集>在日同胞コミュニティー再生の道 |
孤独死 もう起きぬよう
「故郷の家・京都」職員 林仁吉
ちょうど1年前の昨年9月、「故郷の家・京都」から徒歩5分の東九条の地で、在日同胞のお年寄りがひとり寂しく亡くなられました。
このお年寄りは戦前に出稼ぎで日本にやってきて、そのまま日本の地で生活をせざるをえなくなった方で、その弟は日本軍に徴兵されて戦死しています。彼の生前の願いは、弟の墓を何とか母国の地に建ててやりたいということでした。
その願いもかなわぬまま異国の地で孤独死したそのお年寄りの恨みと無念さを思うと、在日同胞全体の運命というものを考えざるをえません。
現在、日本社会では高齢者の孤独死が頻繁に問題とされていますが、私たち在日同胞社会でもその問題は例外ではありません。京都で在日韓国人がもっとも多く住むとされている東九条の地でも、毎年といっていいほど在日同胞高齢者の方が孤独死されています。
在日同胞の孤独死の問題は、在日同胞社会も崩壊しつつあることを示しています。30年前までは、在日コミュニティーは厳然として存在していました。そこでは、貧しいながらも共生・共助の生活が営まれており、高齢者の孤独死は考えることさえできませんでした。
20年前、現社会福祉法人「こころの家族」理事長・尹基氏が、在日韓国人高齢者の孤独死の記事を新聞紙上で知り、在日同胞高齢者のための老人ホーム作りを朝日新聞「論壇」で訴えたのが「故郷の家」の始まりでした。
「故郷の家」は、在日韓国人と日本人がともに暮らす「梅干しとキムチのある老人ホーム」として有名であり、在日韓国人や日本人の心ある方の協力により、「故郷の家・堺」「故郷の家・大阪」、「故郷の家・神戸」が建設されています。
現在建設中であり来年早々開設予定の「故郷の家・京都」は、4番目に建てられている施設です。「故郷の家・京都」は、「故郷の家」グループのなかでも、もっとも規模が大きく、素晴らしい設備を誇っています。
「故郷の家」は韓日の懸橋に
「故郷の家」が果たしてきた役割は、以下のことが考えられます。一つは、多民族共生・多文化共生の理念のもとに、韓国と日本の懸橋となってきたことです。もう一つは、崩壊しつつある在日同胞社会に、新たなコミュニティーをつくりつつあるということです。
「故郷の家・京都」においてもこれらの役割は引き継がれています。一つには、地域住民との共生・共助関係づくりです。「故郷の家・京都」が核となって、地域住民との協力の下、高齢者福祉の課題を在日韓国人と日本人がともに担っていく多文化共生コミュニティーを形成することです。
もう一つは、多様化・分散化しつつある在日同胞社会を結び付けていくことです。私たち在日韓国人にとっても切実である高齢者福祉の問題を共有することによって、互いのつながりを強め広げていくということです。
豊かな老後へ職員も全力で
これら二つのコミュニティーづくりの役割を担っていくことが、「故郷の家・京都」に与えられた使命であると私は考えています。「故郷の家・京都」は、在日同胞コミュニティー再生の道を目指します。
現在、京都の地においても、老後に不安を抱えて生活をしている在日同胞のお年寄りの方がたくさんおられます。中には一人暮らしの方もずいぶんおられます。そのような方々が安心して豊かな老後生活を送っていただけるように、私たち「故郷の家・京都」は精いっぱい努めていきます。
また、在日同胞のお年寄りの孤独死という悲しい事態が今後起こらないように、在日同胞コミュニティー再生の道を目指して頑張っていく所存です。「故郷の家・京都」に対する、在日同胞の皆様の、ひいては在日大韓民国民団の皆様の、温かい支援とご協力を願ってやみません。
(2008.9.17 民団新聞)
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