2011年1月22日10時40分
劣化して波打ったマイクロフィルム=京都市、西山写す
古い文書や画像を記録したマイクロフィルムの劣化が、各地で問題になっている。酢のようなにおいを放ち、ワカメのようにゆがんでしまう「ビネガーシンドローム」。図書館などでは劣化を遅らせる工夫をしたり、新しいフィルムに複写したりするなど対応に追われている。
京都市内の私立大学の図書館。資料室に入ると、鼻を突くような酸っぱいにおいが漂っていた。原因は、貴重な仏典などを撮影したマイクロフィルムだった。10年ほど前、資料を閲覧した利用者の指摘で、異変に気づいた。フィルムが波を打ち、表面に白い粉が付いていた。まるで酢こんぶのような状態で、機器で映し出すこともできなかった。
この図書館では、2千本を超えるフィルムのうち、約半分がビネガーシンドロームになっている可能性があるという。担当者は「将来、大切な文献だと判明するフィルムも含まれているはず」と考え、マイクロフィルム撮影業者に対応を尋ねた。しかし、「修復は難しい」と言われた。大半のフィルムはそのまま残されている。
神戸市の兵庫県立大学の図書館も、ビネガーシンドロームに苦慮する。書庫には新聞を写したマイクロフィルム計約780本があるが、保管用の引き出しを開けると、目が刺激されるほどの酢酸臭。担当者は「においがひどく、困っている」と言った。
マイクロフィルムの劣化を防ぐため、専用の収蔵庫を設ける大学図書館もある。
東京都内の私立大学もその一つ。「使用できなくなったものはない」というが、保管状態を昨年調査した。劣化の進行が早い素材でできたマイクロフィルムもあるためだ。作製した年代のほか、製作した出版社によっても劣化の進行に違いがあることが分かったという。調査をもとに将来の保管方法を検討する。