2011年1月22日3時6分
2009年度に支払われた生活保護費が初めて3兆円を超えたことが、21日分かった。08年9月のリーマン・ショック以降、失業者が生活保護に大量に流入し、働ける年齢の受給者が急増したためだ。厚生労働省は、就労・自立支援の強化などを中心に、生活保護法などの改正を検討する。
生活保護費は国が4分の3、地方自治体が4分の1負担している。厚労省のまとめによると、09年度決算では国負担分が2兆2554億円、地方負担分が7518億円で、総額は3兆72億円。前年度より約3千億円増えた。
年金だけでは生活できない高齢者世帯の増加で、生活保護受給者は増え続けている。さらに08年9月以降は生活保護を申請する失業者が増えた。保護受給世帯は昨年10月時点で過去最多の141万世帯。このうち、病気や障害がなく働ける年齢の世帯は23万世帯で、2年で倍増した。
指定都市市長会(会長=矢田立郎神戸市長)は昨年、財政運営に影響が出ているとして生活保護の全額国庫負担など社会保障制度の改革を求める意見書を国に提出している。
厚労省は近く自治体との協議に入る。具体的には、保護受給者の就労と自立を促すための支援策の強化、不正受給の防止策など生活保護の適正化に向けた対策を検討する。ただ、市長会が求めている保護費の全額国庫負担については、「現段階で国と地方の負担割合を変える予定はない」(保護課担当者)という。
地方との協議で制度改革案をまとめ、政府が検討している税と社会保障制度の一体改革にも反映させたい考え。法改正が実現すれば、1950年の制度創設以来の大幅改正となる。
■自治体の財政「火の車」 支出は都市部に集中
増え続ける生活保護申請で自治体財政は「火の車」だ。生活保護が集中するのは失業者が多い都市部。東京都、政令指定都市、中核市で、保護費の6割にあたる1兆9千億円が09年度に支出された。