昨年の大みそかの格闘技イベント「Dynamite!!」を見て、驚いた方も多いだろう。横浜ベイスターズでレギュラーとして活躍した古木克明選手(30)が格闘家としてデビュー。ボビー・オロゴンの弟、アンディー・オロゴンを相手に3ラウンドまで戦い0−3で判定負けとなったが、素晴らしいファイトを繰り広げた。わずか1年で大変身したファイターを直撃した。(聞き手・塚沢健太郎)
――デビュー戦を終えた感想は?
「楽しかったです。満員の大声援の中でリングに上がれて」
――楽しかった?!
「最初(6月26日)に西調布アリーナ(満員で250人)で長南(亮)さんとエキシビションマッチをやったときの方が緊張しました。試合の前は本当に怖かったが、リングに上がったら吹っ切れた。野球やっていて、満員の東京ドーム、広いところで9人でやるのと違って、集中して1対1でやるのが楽しかった」
――金メダリストでも頭が真っ白になって、何もできなかったという人が多いのに
「そういう話を聞いていたから、逆によかったのかもしれない。思ったことはできてない。反省点だらけですけど、できていた部分もあった。テークダウンを取ったときも、寝技の練習をやってなかった割には、そこそこできた」
――反響は大きかったのでは?
「『みんな、あそこまでできると思っていなかった』と言ってました。自分でもあそこまでやれるとは思っていなかった」
――格闘技を始めたキッカケは?
「簡単に言えばオリックスをクビになって、どこも話がなくて。スマッシュの酒井(正和)社長から高木由一さん(横浜打撃コーチ)を通じて電話があって、野球の相談をしようと思ったら『格闘技やらないか?』っていう感じで。悩みましたけど」
――昔からケンカしたりしていた?
「まったくないですよ。体もデカイし、ケンカも売られなかった」
――野球選手ではロッテにいた立川隆史選手もK−1のリングに上がったことがある
「立川さんに相談したときに『総合(格闘技)は止めておけ』と言われたんですけどね」
――他の野球選手からは?
「昨年東京駅で巨人と一緒になった。ベイスターズにいた鶴岡を待っていたら、原監督が来て、『格闘技やるんだって? 頑張れよ』と声を掛けてくださった。ボクのことなんか見てもわからないと思っていたのに。うれしかったです」
――ベイスターズの選手は格闘技好きが多いが
「鈴木尚典さんと一緒にシーズン中にしょっちゅう観にいってました。尚典さんはWWE(米プロレス)が好きで、いつも家までDVDを観に行ってました」
――総合では、顔を殴るのが一番大変だと聞く
「自分はスポーツとして考えて割り切って、試合だと思ってやっている。だから殴れたのかもしれない」
――野球と格闘技に通じる点は?
「ウエートやったり、走り込んだりもして、下半身も強いし、基礎体力はあると思う。岩崎達也さん(空手家)の指導を受けているが、武術を通じて野球に応用できることもある。もっと早く知り合っていれば、すごいバッターになって、野球人生が長かったかもしれない(笑)」
――試合を観て「オレも」と思う野球選手が出るかもしれない
「いたらうれしいですね。そういうのも含めて、やりたいと思ったんですよ。セカンドキャリアを考えて」
――古木選手をトレードで出してから、古巣のベイスターズが3年連続90敗になっているが、どう思う?
「古木の呪いですかね(笑)。ベイスターズは何だかんだ言って、若手を育てるのがうまい。石川もレギュラーになったし、吉村も、筒香もいる。勝とうという意識はあるけれど、バラバラで1本になっていない気がする」
――今後の目標は?
「デビューしたばかりで、負けてますし、とりあえず1勝。勝たないと、何もスタートしないと思う。次の試合は絶対勝ちたい」
――次の試合のメドは? 野球は毎日試合があるが、3、4カ月に1度の試合に合わせるのは難しい
「まだ次は決まってません。野球も格闘技も両方大変ですね。毎日あると、いいところもあるけど、毎日叩かれるようなことも多いし。そういうプレッシャーがあった。格闘技もいろんなプレッシャーがある。死ぬかもしれないわけですから」
■ふるき・かつあき 1980年11月10日生まれ、30歳。三重県松阪市出身。豊田大谷高から98年ドラフト1位で横浜入団。2003年には三塁のレギュラーに定着し、22本塁打。08年から2年間オリックスでプレー。通算打率・247、58本塁打。右投げ左打ち、182センチ、82キロ。引退後は格闘技団体「スマッシュ」に所属している。