【パンドラ映画館102】園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い
2011年01月19日18時20分
提供:日刊サイゾー
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『紀子の食卓』(06)で吉高由里子、『愛のむきだし』(09)で満島ひかり......とフレッシュスターを輩出してきた園子温監督が、R18指定の新作『冷たい熱帯魚』でまたまたフレッシュスターを生み出した。いや、フレッシュスターというよりは、フレッシュモンスターを解き放ったと言うべきか。'90年代に起きた"愛犬家連続殺人事件"をはじめ実在の犯罪事件を組み合わせた『冷たい熱帯魚』で、ニコニコ顔で殺人を重ねる庶民派俳優・でんでんの怪演ぶりが突出している。一見、人の良さそうな熱帯魚屋のオヤジだが、自分に逆らう人間は何のためらいもなく血祭りに上げてしまうシリアルキラーとしての裏の顔を持つ男なのだ。強烈なエロス&バイオレンス映画ながら、あまりに怖すぎて、ポン・ジュノ監督の『グエムル 漢江の怪物』(06)のように思わず笑ってしまうブラックコメディーでもある。テレビでレギュラー番組を持つ人気タレントを起用したがる近年の日本映画の流れから大きく逸脱した衝撃作だ。
本作の主人公は、小さな熱帯魚店を営む平凡な中年男・社本(吹越満)。若い巨乳妻・妙子(神楽坂恵)と再婚したが、先妻との間に生まれた娘・美津子(梶原ひかり)との折り合いが悪く、家庭内の空気は極めて重い。そんな折、美津子がスーパーマーケットで万引き騒ぎを起こし、警察沙汰になりそうなところを丸く収めてくれたのが村田(でんでん)だった。派手な経営で知られる大型熱帯魚店「アマゾンゴールド」のオーナーである村田は面倒見がよく、すっかり社本一家は魅了される。村田は人を惹き付けるカリスマ性の持ち主だった。社本一家を完全に手なずけた段階で、村田は本当の素顔を見せる。違法ビジネスで金儲けしていた村田は、妻の愛子(黒沢あすか)と組んで、邪魔者を次々と毒殺していたのだ。すでに村田夫妻の周辺では、30人以上の人間が行方不明となっていた。村田は「ボディを透明にしちまえば、警察には捕まらねぇよ」とのたまい、バラバラにした死体の処理を社本に手伝わせる。気の弱い社本はなすがままに共犯者に仕立てられ、ズブズブと"血の池地獄"へとハマっていく。
にっこり笑顔で殺人を犯す村田を演じた でんでんは、30年のキャリアを持つ名バイプレイヤー。90年代に舞台『星屑の町』で注目され、『湯けむりスナイパー』(テレビ東京系)の陽気な番頭、『ゴールデンスランバー』(10)の涙もろい巡査など、人のいいオッチャンを演じることが圧倒的に多い。人間臭さからヤクザ役を演じることはあるものの、ここまでの本格的悪役は初。巻き込まれ型の主人公を演じた吹越満といい、底力を発揮したでんでんといい、俳優のネームバリューに捕われずにキャスティングを決めた園子温監督の英断が冴える。でんでんにとっても普段とまるで違う大役での映画出演は、役者冥利だったに違いない。また、園子温監督作はシナリオが重視され、役者がシナリオ上の台詞をアドリブかと思わせるほど自然に口にできるようになるまで撮り直すことで知られていたが、今回はコメディアン出身のでんでんの持ち味を活かすために、あえてアドリブ演技を求めたそうだ。「オレはいつだって勝新太郎だ!」などの村田ギャグは、でんでんがその場で考えたもの。園監督は、でんでんのことを「日本のジム・キャリー」と誉め讃える。
妻の愛子と共に猟奇殺人の限りを尽くした村田は、警察に捕まれば死刑確実。今さら守るべき法律も社会的モラルもない。あらゆる束縛から解放されている村田夫妻には性のモラルもなく、毎日を欲望のおもむくままに面白おかしくゲラゲラと大笑いしながら生きている。社本一家だけでなく、いつの間にかスクリーンを見ている我々も、誰にも気兼ねせずに自由気ままに暮らす村田夫妻の快楽ライフに危険な魅力を感じ出してしまう。フィクションの世界だから許される"背徳の輝き"がそこにはある。
本作の主人公は、小さな熱帯魚店を営む平凡な中年男・社本(吹越満)。若い巨乳妻・妙子(神楽坂恵)と再婚したが、先妻との間に生まれた娘・美津子(梶原ひかり)との折り合いが悪く、家庭内の空気は極めて重い。そんな折、美津子がスーパーマーケットで万引き騒ぎを起こし、警察沙汰になりそうなところを丸く収めてくれたのが村田(でんでん)だった。派手な経営で知られる大型熱帯魚店「アマゾンゴールド」のオーナーである村田は面倒見がよく、すっかり社本一家は魅了される。村田は人を惹き付けるカリスマ性の持ち主だった。社本一家を完全に手なずけた段階で、村田は本当の素顔を見せる。違法ビジネスで金儲けしていた村田は、妻の愛子(黒沢あすか)と組んで、邪魔者を次々と毒殺していたのだ。すでに村田夫妻の周辺では、30人以上の人間が行方不明となっていた。村田は「ボディを透明にしちまえば、警察には捕まらねぇよ」とのたまい、バラバラにした死体の処理を社本に手伝わせる。気の弱い社本はなすがままに共犯者に仕立てられ、ズブズブと"血の池地獄"へとハマっていく。
にっこり笑顔で殺人を犯す村田を演じた でんでんは、30年のキャリアを持つ名バイプレイヤー。90年代に舞台『星屑の町』で注目され、『湯けむりスナイパー』(テレビ東京系)の陽気な番頭、『ゴールデンスランバー』(10)の涙もろい巡査など、人のいいオッチャンを演じることが圧倒的に多い。人間臭さからヤクザ役を演じることはあるものの、ここまでの本格的悪役は初。巻き込まれ型の主人公を演じた吹越満といい、底力を発揮したでんでんといい、俳優のネームバリューに捕われずにキャスティングを決めた園子温監督の英断が冴える。でんでんにとっても普段とまるで違う大役での映画出演は、役者冥利だったに違いない。また、園子温監督作はシナリオが重視され、役者がシナリオ上の台詞をアドリブかと思わせるほど自然に口にできるようになるまで撮り直すことで知られていたが、今回はコメディアン出身のでんでんの持ち味を活かすために、あえてアドリブ演技を求めたそうだ。「オレはいつだって勝新太郎だ!」などの村田ギャグは、でんでんがその場で考えたもの。園監督は、でんでんのことを「日本のジム・キャリー」と誉め讃える。
妻の愛子と共に猟奇殺人の限りを尽くした村田は、警察に捕まれば死刑確実。今さら守るべき法律も社会的モラルもない。あらゆる束縛から解放されている村田夫妻には性のモラルもなく、毎日を欲望のおもむくままに面白おかしくゲラゲラと大笑いしながら生きている。社本一家だけでなく、いつの間にかスクリーンを見ている我々も、誰にも気兼ねせずに自由気ままに暮らす村田夫妻の快楽ライフに危険な魅力を感じ出してしまう。フィクションの世界だから許される"背徳の輝き"がそこにはある。
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