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社説:小沢氏招致先送り この期に及び茶番とは

 茶番と言われても仕方あるまい。小沢一郎民主党元代表の「政治とカネ」の問題をめぐる国会招致問題で民主党は衆院政治倫理審査会への同氏出席を事実上断念、国会での説明はまたも暗礁に乗り上げた。

 この期に及んで説明を拒んだ小沢氏には、もはやあぜんとするばかりだ。同時に小沢氏や野党の対応を理由に出席の議決方針をあっさり転換した党執行部にも問題がある。

 これ以上の先送りは許されない。国会での証人喚問を真剣に検討すべきである。

 遅ればせながら招致問題を決着させたかに思えた昨年末の一連の動きはいったい、何だったのだろう。

 民主党は衆院政倫審への小沢氏出席を議決する方針を菅直人首相が出席した役員会で決め、小沢氏は通常国会で出席する考えを表明した。小沢氏は時期について状況次第で11年度予算の成立後とする考えをいったん示したが、その後「条件はつけていない」と党側に回答していたはずである。

 ところが結局、小沢氏は「予算成立を最優先させ、国会の状況をみながら判断する」との表現で、事実上の出席拒否を通告した。さまざまな理由をつけながら先送りする、いつもの展開である。

 民主党の対応も解せない。たとえ小沢氏が出席を拒んだとしても、あくまで政倫審で出席を議決し、小沢氏に翻意を促すというのが筋道ではないか。

 民主党が単独で議決した場合、証人喚問を要求する野党が反発する事態も執行部は懸念したという。だが、審査会の小沢氏系議員を差し替え議決した場合の対立激化を警戒し、腰が引けたとみられかねない。

 小沢氏は近く資金管理団体「陸山会」を舞台とする土地取得事件をめぐり、政治資金規正法違反で強制起訴される。だからといって、小沢氏の国会での説明責任の問題がこれで消え去るわけではない。

 政倫審の道が事実上閉ざされた以上、国会での早期の説明を実現するには、野党が求める証人喚問も検討せざるを得まい。偽証罪も適用される喚問の予算委員会での実施は全会一致が慣例だ。しかも起訴された議員の喚問実施はハードルが高く、実現は難航が予想される。だが、このままでは「政治とカネの問題に対する失望を解消する」という首相の年頭所感が宙に浮いてしまう。

 内政、外交に政策課題が山積する中、国会招致問題でエネルギーを費やし、政治の停滞を招き続けた責任はあまりに大きい。小沢氏が強制起訴された場合、小沢氏や党は明確なけじめをつけ、国民に示さなければならない。

毎日新聞 2011年1月22日 2時33分

 

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