2011年1月22日5時34分
一色元海上保安官は21日、記者会見などはせず、弁護士を通じ、「報道機関各位」とした紙1枚のコメントを発表した。起訴猶予について「寛大な処置」としながらも、「なぜビデオが国民に対して秘密とされ、公開が許されないのかが明らかにならないまま終わってしまうことを残念に思います」と国の方針に最後まで疑問を見せた。
コメントでは「何度もためらい、悩んだ末に、安定した職を捨てて、公開したのは、事件の真相を知って頂き、尖閣諸島の問題、日本の領海を脅かす外国船の問題など、どうすべきか考えて欲しかったことが唯一の理由」と動機を説明した。一方で、ネット上に流出させたことについて「方法が正しかったかどうかについては、自分自身今なお判断のつきかねるところ」としたが、「黙っていたら後悔していたとも思っています」と記した。
一色元保安官は、昨年11月に事件が発覚後、任意聴取を受けていた第5管区海上保安本部(神戸市)を出る際に報道陣の前に姿を見せたが、この時も弁護士を通してコメントを発表したのみだった。停職1年の懲戒処分を受けた昨年12月に辞職した後は公の場に姿を見せてこなかった。
親族らによると、今月8日に神戸市内の官舎を引き払い、家族と生活。現在は無職で、刑事処分が決まるまでは就職活動もしていないという。親族は取材に「なぜ映像を流出させたのか、本人から一切聞かされていない。職探しのめども立っていないのではないか」と話した。
所属していた5管の幹部は、「組織の情報管理の甘さが露呈した事件だった。(元保安官のことは)正直、思い出したくない」と語った。