爆発的ヒットを記録した同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』の原作者として知られる、竜騎士07さん。もともとは公務員をしながら趣味のゲーム作りに取り組んでいましたが、作品のヒットを受けて、シナリオライターとして独立することとなりました。そんな竜騎士07さんの、「ものづくり人生」とは? 名作『ひぐらしのなく頃に』が生まれるまでの紆余曲折について語っていただきました。
―しかし、そう思うだけで終わってしまうか、実際に物語を形にするかでは、大きな違いがありますよね。
そうですね。私はアニメやゲームに触れているうちに、物語の作り手になって、人に伝えたいなと本気で考えるようになってしまったんです。けれど、物語をどういう方法で伝えたらいいのかがわからなかった。イラストなのか、漫画なのか、それともゲームなのか……。この辺りはかなり迷いましたね。「文章なら書けそうだ」と思い至ったのが20代の中盤頃だったので、それまでの10年くらいは「自分に合った表現の方法」を模索し続けていたように思います。
―具体的にはどんな表現に挑戦されたんですか?
一番長いことこだわり続けていたのが漫画を描くということでした。アニメやゲームで育ってきたので、「物語を表現するなら漫画やイラストだろう」という思い込みがあったんでしょうね。
ところが私は、あまり漫画が上手じゃなかったんですよ(笑)。下手なりに一生懸命描きましたし、同人誌を出したり、美術系の専門学校に通ったりもしましたが、どうにもこうにも芽が出ませんでした。「物語=漫画・ゲーム」みたいな呪縛から解放されるには、かなりの時間がかかりましたね。
そんなこんなで迷走しまくっていたんですが、たまたま知り合いの声優さんがお芝居に出演するという話を聞いたのをきっかけに、舞台演劇というものに興味を持つようになって……。なんだか面白そうだと感じて、戯曲(芝居の台本)を書いてみることにしたんです。それが、『ひぐらしのなく頃に』の原型になった『雛見沢停留所』というお話。知人の舞台を観た直後にバババーッと書き上げて、すぐとあるシナリオコンテストに送りました。素人が勢いに任せて書いた作品だったので、見事に落ちてしまいましたけどね。
―えっ、落ちてしまったんですか?
はい。箸にも棒にもひっかかりませんでした(笑)。でも、もしこのとき、シナリオコンテストで賞かなんかもらっていたら、私は戯曲家になっていたかもしれません。
その後、「サウンドノベル」というジャンルの、小説みたいなゲームがあるということを知りました。たまたま弟がサウンドノベルの勉強をしていたこともあって、「よし、それじゃ次はサウンドノベルのシナリオを書いてみるか」と。
―なるほど。それで紆余曲折の末に、20代半ばで、文章やサウンドノベルに行き着いたということだったんですね。
ええ。ちなみに僕がサウンドノベルに興味を持つきっかけになったのが、コミックマーケットで販売された『月姫』というゲームでした。とある同人サークルが作った完全オリジナルのサウンドノベルだったのですが、これがすごく話題になった。プロではなく有志の集まりが作ったもので、しかもコミックマーケットという限られた場所で販売された作品なのに、これだけの評価を集めたということに、とても驚いたことを覚えています。実際内容も素晴らしいものでした。これに勇気付けられて「よし、僕も精一杯頑張って、自分の作品を作ってみよう!」と思ったわけなんです。それで、『雛見沢停留所』をきちんと整理して、『ひぐらしのなく頃に』のシナリオを書き上げたんです。