秋葉忠利広島市長(68)は13日の広島市議会決算特別委員会で、4選不出馬の理由などを問う質問を、「出馬、不出馬は市長の職務に入っていない」とかわした。「(委員会は)出馬、不出馬を議論する場ではなく、きちんと線を引きたい」とも述べ、一応の筋は通っているが、かつては議会で出馬表明をしようとしたこともあった。議会には「議員は市民の代表。誠意を持って答えるべきだ」と不満がくすぶる。
秋葉市長は委員会では「慣例として、議会や記者会見で表明することは否定するものではないが、区別したい」などと語るにとどまった。昨年11月30日の記者会見でも「市長としての職責の範囲内でいろいろ申し上げ、それを議論する場が議会」などと語っている。
しかし、秋葉市長は2期目に立候補する際は市議会での表明を考えていた。02年12月17日の出馬会見では「12月議会のどこかで(表明)するつもりだった。議会に発言をお願いしたが駄目だった」と語っている。
1期目の秋葉市長は公約の女性助役選任が否決されるなど、議会との関係に苦労した。ベテラン議員の1人は、議会の出馬表明拒絶を「いじめのようだった」と振り返る。3選出馬の際は、市役所で記者会見をして表明した。今回は記者会見もせず、動画投稿サイト「ユーチューブ」での説明という異例の形となった。
市長にとって最後となる2月議会(15日開会)での対応は不明だ。松坂知恒市議(市民連合)は「ユーチューブも一つの方法」と理解を示しつつ、「インターネット中継され、マスコミ取材もある議会が一番ふさわしい」と言う。一方、豊島岩白市議(新保守クラブ)は「ヒロシマ五輪のほか、広島西飛行場、旧広島市民球場、折り鶴ミュージアムなどの今後を説明しないと無責任。たすきを投げたも同然」と話す。
全国市民オンブズマン連絡会議事務局長、新海聡弁護士は「市長は地方自治法で公務を規定される一般職員ではない。選ばれた公職として説明責任がある。市長の職務ではないという発想は、いささか偏っている」と指摘する。【矢追健介、寺岡俊】
毎日新聞 2011年1月20日 地方版