広島市は、広島電鉄(中区)と共同で路面電車の軌道敷の緑化に本格的に乗り出す方針を固めた。2011年度は、都心の一部を緑化する社会実験の実施を目指す。放射熱によるヒートアイランド現象を抑制するのに加え、都市景観への配慮をアピールする狙いもある。
市は都心部に数十メートル規模で軌道緑化するよう広電と協議に入った。市民や観光客へのPR効果も考慮し具体的な場所を選定する。社会実験に向けて市は、広電や市造園建設業協会と連携。09年秋から1年間、市植物公園(佐伯区)に芝生を植えて、気候や交通事情に適した芝生の種類などを調べてきた。
芝生による軌道緑化は既に、広電が独自に南区の海岸通―広島港電停間の2カ所の計252メートルで実施している。03、08の両年に広島港や広島南道路の整備に伴い軌道を変更する際、騒音・振動軽減策として進めた。
最大の課題はコスト面とされる。先進地の鹿児島市では、市内電車全路線のうち約半分の5キロを緑化したが、基盤整備や植え付け費用が1メートル当たり約20万円。鹿児島と同じ方法で広電市内線全19キロを緑化すると、費用は約38億円かかってしまう。これとは別に散水や芝刈りなどの維持管理費も必要となる。
【写真説明】芝生で緑化した広島電鉄の路面電車の軌道(広島市南区宇品御幸)
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