過激な性表現を含む漫画やアニメの販売を規制する東京都青少年健全育成条例」に対して、漫画・アニメの関係者に波紋が広がっているが、現実的な行動を起こすクリエイターも出てきた。「エロ漫画家」の浦嶋嶺至さんだ。東京都の猪瀬直樹副知事と対談するため、その要求にしたがい、北海道に「雪かき」をしに行ったのだ。
発端は2010年12月。都条例改正案の可決直前に、猪瀬副知事が都条例に異を唱えるネットユーザーに向かって「財政破綻した夕張を助けに行け。雪かきして来い。それならインタビューうけてもよい」とツイッターで挑発したことにある。これに対して、浦嶋さんが「不快なのは『どうせお前ら吠えてるだけだろ』という相手を見下した態度」「だから今回もやるよ、夕張で雪かき」と応じたのだ。
浦嶋さんは2011年1月21日、実際に夕張市に赴き、雪かきを実行した。雪かきを終えたばかりの浦嶋さんに電話で取材してみると、「大変だった。午前中は2時間弱、午後は1時間くらい雪かきして、明日には筋肉痛になりそう」と答えてくれた。浦嶋さんの行動のきっかけとなったのは、1年ほど前の猪瀬副知事の言葉だ。
「昨年(2010年)3月、テレビに出られた猪瀬さんが、アダルト漫画3冊を持って、『こういう本が誰でも買える、野放しになっている』と言っていた。しかし、その時点でそれら漫画は不健全図書に指定されて区分陳列され、『野放しになっている』ということは無かった。事実と違うことを言って、世論を誘導するのは間違っている。腹立たしいと思った」
浦嶋さんは、現在はネットを中心に、22年間「エロ漫画」を描いているとのこと。不健全図書の区分陳列が行われるようになった1991年の「有害コミック騒動」のときも、"エロ漫画家"として当時を経験している。それゆえ想いは人一倍で、今回の都条例改正についても「許されざる行為」と憤る。
「業界の努力をないがしろにしている。『ドラえもん』の横に『エロ漫画』があると、事実とは違うことを言って、それを流布する。私が漫画を描いている出版社からも『セーラー服を書いたらいけない』と言われた。これは萎縮効果以外のなにものでもない」
浦嶋さんによれば、「猪瀬副知事の秘書を通じて雪かきを条件とした対談を確約してもらった」とのことで、二人の間でどんなやりとりが交わされるのか注目される。「都条例に関心を持つ漫画・アニメファンに向けて、何かメッセージはありますか?」と浦嶋さんにたずねると、こんな答えが返ってきた。
「今回の件に疑問を持った方はたくさんいたが、都議会で負けてしまった。次は数の論理でも勝てるようにしなければいけない。都民の方だったら、まずは都議選挙・都知事選挙へ行きましょう。オタクなら、オタクのために頑張ってくれる人に投票しましょう!」
(丹羽一臣)
