イギリスの公共放送、BBCが先月放送したコメディ-番組の中で、広島と長崎で2度、原爆の被害に遭った被爆者の男性を「世界一不運な男」などとして取り上げたことに対し、ロンドンの日本大使館は「不適切で配慮を欠く」とBBCに対して抗議しました。
この番組は、BBCの人気コメディ番組「QI」で、クイズ形式をとりながら出演者がジョークを交え、番組を進めていきます。この番組の先月17日の放送の中で、広島と長崎で2度、原爆の被害に遭い、去年1月に亡くなった長崎市の被爆者、山口彊さんが「世界一運の悪い男」として取り上げられました。番組の中で司会者は、仕事で広島に出張していた山口さんが被爆してやけどを負い、列車で長崎まで帰った経緯を説明して、「そこでもう一度原爆が落ちたんだよ」と言うと、スタジオから大きな笑いが起きていました。ロンドンの日本大使館は、番組を視聴していたイギリスに住む日本人から指摘を受け、今月7日にBBCと番組の制作会社に対して、「こういった形で被爆者を取り上げるのは、まったくもって不適切で、日本国民の感情への配慮を欠いている」とする抗議の書簡を送りました。これに対して、BBCなどからは今のところ返答はないということです。広島で被爆し、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の代表委員を務める坪井直さんは「核兵器による被害の恐ろしさを分かっておらず、被爆者のことを何だと思っているのかと腹立たしくなる。被爆者たちが世界各地で核兵器の廃絶を訴えているのだから、海外でも理解してもらえたと思っていたが、それは間違いだった」と話していました。長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は「イギリスにも核兵器廃絶のために活動している人たちがいることを知っているので、そういう国ではないと思っていたが、被爆者を笑いの番組の対象にするなど信じられない。被爆者をなんと思っているのかと感じる。放送内容を確認したうえで、必要であれば私たちもきちんと抗議しなければならない」と話しています。山口さんの長女で、長崎市の山崎年子さんは「核保有国のイギリスで被爆体験を笑われるのは許せない。原爆の恐ろしさが、まだ世界には伝わっていないということだと思う。みたび原爆が落とされることのないよう、訴えていきたい」と話していました。