チョ・ボンアム事件:処刑から52年ぶりに無罪判決

大法院「内乱を目的に結成されたとは考えられず」

 大法院(日本の最高裁判所に相当)大法廷(裁判長:李容勲〈イ・ヨンフン〉長官)は20日、間諜(かんちょう=スパイ)罪で起訴され、1959年に死刑を執行されたチョ・ボンアム元進歩党党首に対する再審で、「北朝鮮の指令を受けスパイ行為をしたと判断できる証拠がない」として、無罪判決を言い渡した。チョ元党首は、北朝鮮と密通して進歩党を結成し、内乱を企てた容疑(国家保安法違反)で58年1月に逮捕された。そして同年2月、陸軍の特務部隊による捜査を受けた際、関係者が「北朝鮮の指令をチョ元党首に伝えたり、工作資金を渡したりした」と証言したため、刑法の間諜罪も追加された。

 チョ元党首は1審で懲役5年の判決を受けたが、控訴審と上告審では死刑判決を受けた。大法院は当時、チョ元党首による再審請求も却下し、その翌日の59年7月31日、チョ元党首は死刑を執行された。

 今回、大法院が審理を行った再審は、チョ元党首の長女ホジョンさん(82)など遺族が2008年に請求したものだ。大法院大法廷は昨年末、「軍人・軍属ではない人物に対し、陸軍の特務部隊が捜査を行ったということ自体が違法だ」として再審開始を決定した。20日の判決で大法院は「進歩党は社会民主主義を標榜(ひょうぼう)し、資本主義経済の副作用や矛盾点を指摘して、改善していこうとしたにすぎず、内乱を目的に結成されたとは考えられない。被告人に国家保安法違反罪を適用した判決はこれ以上維持できない」と述べた。

 左派の独立運動家を代表する人物だったチョ元党首は、48年の韓国政府樹立以降、制憲国会議員や初代農林部(省に相当)長官を務めた。なお、チョ元党首が処刑された事件については、当時の李承晩(イ・スンマン)政権(自由党)が政敵のチョ元党首を排除するためにでっち上げたもので、「司法による殺人」だったとする指摘がなされてきた。

李明振(イ・ミョンジン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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