2011年1月21日15時0分
殺処分される直前の犬=12月14日、松山市東川町、中田写す
「犬たちをおくる日」(今西乃子著、浜田一男写真)。1300円(税抜き)
■ボタン押して10秒、犬が次々と倒れた
センターを訪ねると、けたたましい鳴き声が管理棟から聞こえてきた。元の飼い主が現れなければ、多くの犬や猫たちは収容されてから5〜7日で、幅1.35メートル、奥行き1.4メートル、高さ1.2メートルの金属製の箱の中で、二酸化炭素を充満させて殺処分される。
処分日は、毎週火、木曜。犬たちは毛布の上で身を寄せ合っていた。犬舎には暖房器具がない。「命が絶たれる最期までは、少しでもいい環境で」と職員が毛布を提案したという。シバイヌのような一匹が人なつこい様子で近づいてくる。岩崎さんは「元々は飼われていた犬が多いです」と厳しい表情を見せた。
午前9時半、処分が始まった。本の主人公となった職員、滝本伸生さん(43)が慎重に機械を操作し、15分ほどかけてゆっくりと犬を処分機に追い込む。二酸化炭素注入ボタンを押すと、10〜15秒で次々と犬が倒れていった。
さきほど近寄ってきたイヌのなきがらをなでてみた。温かく、柔らかい。目はうっすらと開いていた。
滝本さんは言う。「センターの犬猫は人間の身勝手のためにただ死んでいく。殺処分数がゼロになるまで、この仕事を続けることが使命だと思うようになりました」。本のサブタイトル「この命、灰になるために生まれてきたんじゃない」は、自身の言葉だ。
しつけがうまくいかずに関係が悪化することが、ペットを手放す大きな原因となっている。このためセンターは、健康で人なつこい一部の子犬や子猫は譲渡用とし、引き取る人を対象に「しつけ方教室」にも力を入れている。
岩崎さんは「責任を持って命を預かることに、理解を深めることが大切。犬猫を殺す社会をつくったのは自分たち。一人一人に何ができるのかを考えてほしい」と語る。(中田絢子)
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〈動物愛護センター〉 動物愛護の啓発活動や、捨てられた犬猫の処分を目的に自治体が設けている施設。保健所が同様の業務を行う自治体もある。殺処分では二酸化炭素を充満させる処分機を使用するところが多いが、山口県下関市のように、苦痛を軽減しようと吸入麻酔を使う場合もある。環境省動物愛護管理室によると、2008年度は全国で約28万匹が殺処分された。