各地の大学医学部を卒業した後、県内の病院での研修を希望する新人医師が増えている。募集定員に占める希望者の割合を示す充足率が来年度は8割を越え、全国6位(前年13位)。5割に満たない県も少なくなく、大都市人気の前に苦戦する地方にあって、異例の人気を集めている。研修医の大半を抱える県立医大病院(和歌山市)は、医師不足が深刻な和歌山市外の病院とも連携する独自プログラムなどで、「医師として必要とされていることを実感できる」と好評を得ている。【藤顕一郎】
新人医師は04年度から、大学を卒業して医師免許を取得した後に2年間、内科や救急、地域医療などの臨床研修を義務づけられた。従来は出身大学病院の医局に所属する傾向が強かったが、全国約1000カ所の病院から選べるようになった。だが東京や大阪などに集中し、地方との格差が広がっている。
島根大医学部を09年3月に卒業した寺田弘子さん(26)は、県立医大病院での2年間の研修を3月に終える。出身地の大阪など関西圏での研修を希望し、「雰囲気で」和歌山を選んだ。実際の研修は、診療科を自分で選択できるうえ、紀南病院(田辺市)や那賀病院(紀の川市)など地方の病院で研修することもでき、充実した日々を送った。「実践の機会もたくさん与えてもらったし、熱意のある指導医が多く、和歌山に来てよかった」と話す寺田さんは、4月から県立医大病院で内科医として勤める。「住環境もよく、和歌山での生活を楽しんでいる。ずっと住むかは分からないが、和歌山で力を付けたい」
県立医大病院の充足率は89・7%と全国平均74・7%を上回る。都道府県別でも、東京や大阪など大都市部に続く。県立医大卒後臨床研修センターの上野雅巳センター長は、「大学病院として高度医療に携わりながら、和歌山市内に市民病院がないため患者数が多く、地域医療にも触れられる」と人気の要因を分析している。
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◆臨床研修の充足率順位(充足率)
(1)東京都 92.90%
(2)大阪府 91.10%
(2)京都府 91.10%
(4)岡山県 89.00%
(5)兵庫県 88.60%
(6)和歌山県 85.70%
(7)福岡県 85.20%
(8)愛知県 84.60%
(9)神奈川県 84.30%
(10)沖縄県 82.00%
※11年度研修予定者が対象。10年10月現在、医師臨床研修マッチング協議会調べ
毎日新聞 2011年1月21日 地方版