電子顕微鏡を操作する花岡君=長野市若里の信大工学部 |
長野工業高校(長野市)機械科3年の花岡直紀君(18)=長野市若槻東条=が20日、都内で開かれる社団法人・日本非破壊検査協会の第42回学会で、短時間に常温でチタン粉末を固める方法について発表する。同校と信大工学部(同市)の共同事業を活用して研究を進めてきた。指導した信大教員は「応用の利く重要な研究」と評価。同協会によると、学会で高校生が発表するのは初めてという。
花岡君は昨年6月、「信州大学高校生研究体験プロジェクト」に参加。工学部機械システム工学科の中山昇准教授(40)の下で研究を始めた。チタン粉末を圧縮しながら攪拌(かくはん)して固める実験装置を使い、攪拌する回転数の違いでチタンの強度がどう変わるかを調べた。
7カ月余の研究で、回転数を上げるほど強度が高くなり、形も整うことが判明。中山准教授によると、現在の工業生産では、チタン粉末を約1600度の高温で数時間焼いて固体にしている。今回の研究が実用化されれば、常温下で圧縮しながら数十秒間、攪拌することで、強度の高いチタンの固体ができるという。
中山准教授は「歯科用インプラント(人工歯根)や骨の固定ボルト、航空機の材料などに応用できる。高校生による学会発表は珍しく、今後も研究をしていってほしい」と期待する。
花岡君は放課後に信大工学部に通い、装置や電子顕微鏡に向き合い続けた。「新しく知ることばかりで、覚えるのが大変だった。将来は工業分野でものづくりに関わる仕事をしたい」と話している。
非破壊検査は、物を壊さずに内部や表面の傷、劣化状況を調べる検査技術。同協会は「応力・ひずみ測定と強度評価シンポジウム」と題して毎年、学会を開いている。