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児童養護施設にタイガーマスク=伊達直人の名前で寄付をする運動が全国に広がっています。私はこうコメントしました。「これから、社会運動として、大きく育っていけばいいですね」。我ながら、風邪をひきそうなくらい寒くて陳腐なコメントです。だって正直なところ「どうせ、いつもの短い祭りで終わる」って考えてるんですから。
また、この騒動を「恵まれない子供をダシに、自己陶酔する偽善者の騒ぎ」と見る向きや、「手軽な優越感の発露」「愉快犯」と、冷笑している人の感覚もわかります。でもね、こう思うんです。偽善だって、何もしないよりいいんじゃないかって。
それにしても我々マスコミ人はほんとに不謹慎で、2人目の伊達直人が現れたころから、次は誰を名乗って寄付する人が出るかで大盛り上がりとなりました。「伊達直人と間違って伊達政宗が出るんじゃないか?」「いや伊達公子だろ」「鉄人28号やルパン三世は外せない」「星飛雄馬もな」「いや、それなら左門豊作の方が適役だ」。もう止まりません。
ネットの住民はさらに上手です。「伊達直人と菅直人の違いは何か?」「伊達直人は子供にランドセルを背負わすが、菅直人は子供に借金を背負わす」「伊達直人は仮面で勝負するが、菅直人は仮免で勝負する」。かくして新聞紙面はタイガーマスク話で埋め尽くされて行きました。
でもね、今回の騒ぎは無駄じゃなかったと思います。騒動を通じていろんなことを知りました。大阪だけでも37か所、全国には575の児童養護施設があり、そこに3万1000人の子供たちが暮らしていること。全く身寄りがないのではなく、身近な人物からの暴力の恐怖から保護されている子供たちが半数を占めること、等々。
そしてまだまだ知りたいことがたくさん生まれました。それらの施設は誰がどんなお金で運営しているのか。資金は足りているのか。新1年生は、タイガーマスクが現れない場合、お古のランドセルで入学式を迎えなくてはならないのか。マスコミも、そんな疑問に答える取材をしなきゃいかんと反省しています。
素朴に思います。施設から通う1年生が、お古のランドセルで入学式に臨むのはかわいそうだよなって。
この騒ぎ、もうすぐあっという間に消えるでしょう。でも毎年、年始の恒例行事にならないもんでしょうか。ん~俺も来年、伊達直人になるか。似合わないけど。((株)大阪綜合研究所代表)
(2011年1月19日09時05分 スポーツ報知)
1956年4月11日、鳥取県・米子市生まれ。54歳。早大法学部卒。80年、読売テレビにアナウンサーとして入社。ニューヨーク駐在員、報道局解説委員長などを歴任し、今年9月末で退社。現在はフリーキャスター、芦屋大学客員教授、自身が設立したシンクタンク「大阪綜合研究所」代表。家族は妻と2男1女。