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大阪地裁所長襲撃:損賠訴訟 「捜査で暴行」認定 府警側に賠償命令--地裁

 ◇5人の訴え認める

 大阪市住吉区の路上で04年2月、大阪地裁所長(当時)が襲われた強盗致傷事件で、無罪判決が確定するなどした5人が、国と大阪府、大阪市を相手取り計約6900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、大阪地裁であった。吉田徹裁判長は「取り調べ中に警察官の暴行や不当な誘導があった」と5人全員について大阪府警の違法捜査を認定。計約1500万円の賠償を府に命じた。刑事処罰の対象とならない当時13歳の少年も含まれるが、判決は、この少年にも児童相談所(児相)内で暴行があったと認定した。【日野行介】

 大阪地検(国)と児童相談所(市)に対する請求は棄却した。

 原告は、2審で無罪が確定(08年4月)した曹(そう)敦史さん(36)と岡本太志さん(33)▽少年事件の「無罪」に当たる処分を受けた当時16歳と14歳の兄(23)と弟(21)▽当時13歳の少年(20)--の5人。

 吉田裁判長は、児相で行われた当時13歳の少年の取り調べについて、「(刑事が)机を蹴ったりした」などと書いた少年の日記、「少年が『髪の毛をつかまれた』と訴えた」「刑事の怒鳴り声が聞こえた」などとする児相の記録--を理由に暴行を認定。捜査段階で自供した兄弟の取り調べについても「刑事による不当な誘導があった」と指摘した。その上で「違法な取り調べで得た供述を証拠に逮捕状が請求されている」と逮捕自体を違法と判断した。

 13歳少年を巡っては、成人2人の1審公判でアリバイが立証されていた。この点について、原告側は「府警は必要な捜査を怠った」と主張していたが、吉田裁判長は「13歳少年が取り調べ中にアリバイを主張していたとは認められない」と違法性を認めなかった。

 一方、大阪地検による勾留や起訴、家裁送致の判断は「誘導による自供と認識するのは困難で、当時は犯罪の疑いについて相当な理由があった」と違法性はないとした。また、児相の対応も「取り調べに立ち会うこともあり、13歳少年の違法な取り調べを放置したとは言えない」とした。

毎日新聞 2011年1月21日 東京朝刊

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