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2011-01-02
『暗黒のシステムインテグレーション』森正久著
新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。
「暗黒のシステムインテグレーション」 ?コンピュータ文化の夜明けのために (ITブッククラシックス)
- 作者: 森正久
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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年末年始は実家に帰っていたのだが、実家に帰ったところで特にすることがあるわけでもない。ネット環境も貧弱だし、酒を飲む相手もいない。だから、新年の挨拶に来る兄一家に会って一歳半の甥っ子に遊んでもらったら打ち止めだ。
そんなわけで年末に買った本書も結構な厚さの割にあっさりと読了してしまった。
本書は「月刊ウィンドウズNTワールド」の連載を書籍化したものに加筆して再び刊行されたものである。2002年に最初に刊行されて、2004年には続編が刊行されている。その前に『システム管理者の眠れない夜』という類書がベストセラーになっていたからそっちの方が聞き覚えのある人の方が多いかもしれない。
ぼくも10年以上システムインテグレーション事業に従事してきた人間であるから、本書が発売当初に話題になっていたのは知っていたが、当時はまだ就職して数年程度でもっと技術寄りの本を必死で読んでいた頃だし、ぱらぱら読んだ感じでは軽い感じで実になるものが少なそうに見えたので、ついぞ読む機会が無く現在に至っていた。
最近『システム管理者の眠れない夜』と同時に新たに刊行されたことを知り、そろそろこの業界から足を洗おうとしている今、本書を読みながら思い返してみるのも良いかと手に取った次第だ。
テーマはかなり広範囲に及んでいる。また、記事の初出が2000年から2005年くらいのようである。そのせいか、実感を以て共感できる章もあれば、ピンとこない章もある。今から見るとちょっと的外れな感じがする章もある。(そういう記事には筆者が末尾に追記を入れている。読んでいて違和感を感じる記事には大抵追記が入っていて、自分の同業者としての感覚がずれていないのが確認できるのもちょっと嬉しかったりする。)
でもほとんどはぼくも同じような体験をして同じようなことを考えながら生きてきたわけで、「みんな同じような中でやってるんだな」と溜飲を下げる思いである。
おそらく割と新しい職業だからだと思うが、"SE論"的な本は意外と多かったりする。でも大概は現場のSEを引退して後進の指導的立場になった人が書いていたりして、誤解を恐れずに言うと「説教臭い」ものが大半だ。そんな中で正に現場で、顧客と元請けと営業と上司と下請けと部下の狭間で体験した出来事を紹介しつつ問題点や教訓を浮き彫りにする筆者の筆力には脱帽する。
どちらかと言うとSE向けに書かれた記事なのだと思われるが、これからSEになろうとしている学生やSEになったばかりの若手に是非ご一読いただきたい書である。
ちなみに、ぼくが特に共感を覚えたのは以下の章である。
- 暗黒の「転職事情」
- 暗黒の「年棒制」
- 暗黒の「バーター取引」
- 暗黒の「プリセールス活動」
- 暗黒の「家電化」
どうしても人事制度や商慣習あたりに目が行ってしまうなぁ。
特に『暗黒の「家電化」』は、現在進行形でやばいよね。
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