熱血!与良政談

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熱血!与良政談:覚悟と迫力をもっと=与良正男

 まだ分かっていないのかなあ、菅直人首相は……というのが、今度の内閣再改造の感想だ。

 社会保障制度を再構築するため消費税率を引き上げる。与謝野馨さんを一本釣りして経済財政担当相に起用したことをはじめ、再改造の狙いがこの点にあるのは明らかだ。そして、もう一つが環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加なのだろう。

 政権の目標がクリアになったのは、とてもいいことだと私は評価している。「菅さんは何をしたいのか分からない」と批判していた人たちが、それを人事で明確にすると、今度はまだ結果も出ないうちから「与謝野さんは元々、自民党。節操がない」と文句をつけるのもフェアでないと思う。

 ところが、そんな私でも再改造直後の記者会見を聞いて拍子抜けしてしまった。「消費税率引き上げ?」と記者が単刀直入に質問した途端に菅さんはムキになって「はじめに増税ありきではない」と否定したのだ。参院選敗北のトラウマなのか、ここまであからさまな内閣の顔ぶれにしておいて、今さら「まだ白紙」では、またまた振り出しに戻ってしまう感じになる。

 私だって今の財政状況では年金も医療も介護も早晩、破綻するだろうと思うから、悪役になるのを承知のうえでテレビで顔をさらしながら「消費税増税は待ったなしです」と話しているつもりだ。「増税の前にもっとすることがある」とコメントした方が無難で楽だと思うけれど、そう言っているだけでは結局、問題は先送りになるだけだと考えるからでもある。

 確かに具体的な議論はこれからだ。菅さんは「みなさんの意見も聞く」と謙虚さを見せているつもりなのかもしれないし、菅さんが言うように国民的議論も必要だ。そうだとしても、せめて「私は消費税増税が必要だと思う。だが、他にもっといい方法があれば、それも聞く」くらいは言わないと議論は始まらない。

 菅さんの「日本は危機的状況にある」という言い方もどこか評論家風だ。危機を招いた一番の責任は政治にある。まず、それを謝る。民主党が政権交代すればいくらでも財源は出てくるかのような幻想を振りまいたことも、きちんと謝罪する。そのうえで土下座せんばかりに国民に負担増をお願いする。それがまっとうな手順だと思う。

 「真意が国民になかなか伝わらない」とぼやく前に、政治生命を懸ける覚悟と迫力を。(論説副委員長)

2011年1月20日

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