水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく一時金210万円を支給された被害者のうち、熊本、鹿児島両県で少なくとも50人がこの一時金を「収入」と見なされ、生活保護を打ち切られたことが分かった。熊本県の蒲島郁夫知事は19日、打ち切りが回避されるよう弾力的運用を国に求める考えを示した。
両県によると、水俣病の一時金は、厚生労働省の通知などで家屋補修や技能習得など自力での生活を可能とするために必要な経費を差し引いた残額が「収入」と認定される。この収入が生活保護費の半年分を上回れば、生活保護の打ち切り対象となる。
熊本県では、生活保護世帯で一時金を受け取った35人のうち、29人が最低生活費の基準を超えたとして保護を打ち切られた。一時金を既に申請した生活保護世帯の人はさらに46人いるという。鹿児島県では21人が同様に保護を打ち切られた。
一時金を受け取りながら12月に生活保護を打ち切られた鹿児島県出水市の男性(73)は20日、打ち切りを不服として処分取り消しを求め、伊藤祐一郎知事に審査請求する。男性側は「一時金は水俣病被害者に対する慰謝料で、収入には当たらない」と主張している。
蒲島知事は特措法が国、県の責任を認めた04年の最高裁判決を受けて制定されたことから、95年の政治決着時の一時金とは性質が違うとして「これまでの苦しみに対する補償の性格があり、弾力的運用が可能にならないか要望したい」と述べた。【結城かほる、福岡静哉】
毎日新聞 2011年1月19日 21時10分