2011年1月20日3時2分
大阪府警に現住建造物等放火などの容疑で逮捕・送検された男性(29)に知的障害があり、物事をうまく説明できないのに、男性が取り調べで詳細な犯行状況や謝罪の言葉を述べたとする「自白調書」を大阪地検堺支部の男性検事(41)=当時=が作成していたことがわかった。朝日新聞が事件関係者を通じ、同支部が取り調べの様子を撮影・録画したDVDを分析。何度も説明に詰まる男性に対し、検事が調書の内容に沿うように事実上誘導しながら確認する場面が残されていた。
検察側は昨年1月に男性を起訴したが、補充捜査で自白調書の信用性に疑いが生じたとして、同11月に起訴の取り消しを求める異例の措置をとり、約11カ月間勾留していた男性を釈放した。この調書について、複数の地検幹部は朝日新聞の取材に「検事が男性の言葉をまとめすぎた」として不適切だったことを認めており、郵便不正事件の捜査で浮き彫りになった調書作成の在り方が改めて問われる。
男性は2009年12月、大阪府貝塚市内の長屋に侵入し、ライターですだれなどに火をつけたとして昨年1月5日に府警に逮捕され、地検堺支部に送検された。
関係者によると、問題の自白調書は起訴5日前の同21日に作成され、A4判11枚にわたり「ライターを取り出すと、利き手の右手に持ちました」「(住宅の)窓の右下隅あたりの木か何かや紙のようなものに近づけました」「ライターの炎であぶるようにすると火が燃え移りました」などと書かれ、男性が取り調べで犯行状況を細かく説明した内容になっていた。被害者にも「火をつけたことに間違いなく、償いをしなければいけない」と謝罪の言葉を述べたと記されていた。