天才小４　愛ちゃん超えた！！　１０歳の伊藤美誠＆平野美宇

　▽第２日▽１９日▽東京体育館▽女子シングルス１回戦、男女ダブルス１回戦、混合ダブルス４回戦ほか

　小４コンビが愛ちゃん超え！　女子シングルスは、小学４年の伊藤美誠（みま、１０）＝豊田町スポーツ少年団＝が松田亜由美（東北福祉大）に３−１で勝利、平野美宇（１０）＝ミキハウスＪＳＣ山梨＝も高校３年の市原芹菜（高知・明徳義塾高）にストレート勝ち。そろって１回戦を突破した。伊藤は１０歳２カ月、平野は１０歳９カ月で福原愛（２２）＝ＡＮＡ＝が持つ１１歳１カ月の最年少勝利記録を１１大会ぶりに更新した。また、小学５年の加藤美優（１１）＝ＴＯＭ＝も高校生を撃破した。卓球界に吹き荒れる“小学生旋風”が止まりそうにない。

　「入ったよ！」。小学４年生のあどけない叫び声が会場に響き渡る。マッチポイント、伊藤の一番の武器、サービスエースが決まる。この瞬間、全日本選手権の最年少勝利記録を更新。「愛ちゃんを抜いたことはすごくうれしい。ずっと抜かしたい、抜かしたいと一生懸命練習をやってきて、試合で成果を出せたのが良かった」。目標としていた“愛ちゃん超え”に声をはずませた。

　記録更新がかかった一日だったが、出だしはつまずいた。ジュニア女子シングルス２回戦で石川佳純の妹・梨良（エリートアカデミー）に１−３で敗れ、悔し涙を必死でこらえた。だが、コーチでもある母・美乃りさん（３５）に「やりたいことをやっておいで」と声を掛けられ「次にまた頑張ろう」と気持ちを切り替えた。約６時間後に行われた女子シングルスで大学生の松田に完勝し、見事快挙を達成した。

　嵐の櫻井翔や韓流アーティストのＫＡＲＡ、少女時代が好きで踊ったりもするという今どきの小学生だが、ラケットを持つと秘めた負けじ魂を発揮する。「何でもかんでも負けず嫌い」と母。練習は自分が納得するまでやめることはない。特に意識しているのはやはり同い年の平野美宇だという。「ライバル視というのはあるはず」。くしくもこの日、平野がまず最年少記録を更新したが、ほぼ同時進行だった伊藤がわずか８分後に負けじと塗り替えた。狙った獲物は逃さない。ちなみに好物は「嫌いなものはないが、肉が好き」（美乃りさん）という正真正銘の“肉食”だ。

　美誠という名前は「勇ましい、男の子に負けない子に育ってほしい」という両親の願いから、父・誠さん（３５）の名を受け継いで命名された。「将来は世界チャンピオンになりたい。明日はもっと強い選手が相手なので、向かっていきたい」。テレビカメラとフラッシュの放列に、物おじせず言い切った１０歳２カ月。日本卓球界に、次代を担う新星が誕生した。　（川村庸介）

　笑顔もガッツポーズもなかった。高校３年生にわずか２０分でストレート勝ち。女子シングルスで福原超えとなる歴史的１勝。平野は淡々と試合を終えた。ベンチに戻り、無数のフラッシュを浴び、１０歳の少女らしくようやくニッコリ笑った。

　「絶対勝ちたかった。相手が強かったのでうれしかったです。（愛ちゃんを超えて）それはまあまあうれしいです」

　この日は午前１０時３８分からジュニア３試合、ダブルス１試合、そしてシングルス１試合の計５試合に出場。最後にあったジュニア４回戦はフルセットの末、敗退した。「ここまで全勝で来てたのに…。もうちょっとで勝てる試合だった」と唇を噛んだ。試合終了は午後７時５０分を過ぎていた。

　女子シングルス１勝は通過点。母・真理子さんは「最年少勝利より、将来的な最年少優勝にこだわりたい。世界へ出て行きたいので」と話す。２０日はシングルス２回戦で大学生と激突。平野は「まだあと２勝くらいはしたい」と、あどけない笑顔を浮かべた。スーパー小学生の快進撃はまだまだ止まりそうもない。　（森合正範）