2011-01-19 送信可能化権の侵害又は公衆送信権の侵害

インターネットを通じて海外で日本のテレビ番組を視聴できるサービスを提供するのは著作権法違反だとして、NHKと在京キー局5社が、運営会社にサービス停止と計約1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷は18日、請求を棄却した2審判決を破棄し、サービスは著作権を侵害するとの判断を示し、知財高裁に差し戻す判決を言い渡した。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1101/19/news076.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110118-00000085-mai-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110118-00000847-yom-soci
報道によると,05年に現行のサービスを開始した永野商店の永野周平社長は「テレビ局の既得権益を守るため、便利なサービスを受けられる権利を奪うのはおかしい」と主張。差し戻し後に判決が確定するまではサービスを続ける意向だそうです。
判決文を読んだ私の個人的感想ですが,力ずくで,ちっぽけな新ビジネスを潰したという感じがします。後味の悪いこの最高裁判決には,法律家からだけではなく,経済学者からも批判が出ています。
最高裁判所第三小法廷平成23年01月18日判決
要旨
1 公衆の用に供されている電気通信回線への接続により入力情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,単一の機器宛ての送信機能しか有しない場合でも,当該装置による送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たる。
2 公衆の用に供されている電気通信回線への接続により入力情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置が,当該電気通信回線に接続し,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体である。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110118164443.pdf
主 文
原判決を破棄する。
本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。
(1) 送信可能化権侵害について
送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。
自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。
(2) 公衆送信権侵害について
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。
著作権法2条1項
七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
(vii-2) "public transmission" means the transmission, by wireless communications or wire-telecommunications, intended for direct reception by the public; excluding, however, transmissions (other than transmissions of a computer program work) by telecommunication facilities, one part of which is located on the same premises where all remaining parts are located or, if the premises are occupied by two or more persons, all parts of which are located within the area (within such premises) occupied by the same person(s);
八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
(viii) "broadcast" means the form of public transmission involving a transmission transmitted by wireless communication intended for simultaneous reception of identical content by the public;
九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
(ix-4) "automatic public transmission" means the form of public transmission which occurs automatically in response to a request from the public, excluding, however, public transmissions falling within the term "broadcast" or "wire-broadcast";
九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
(ix-5) "to make transmittable" means making an automatic public transmission possible by any of the acts set out below:
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
(a) to record information on public transmission recording medium of an automatic public transmission server already connected with a telecommunications line that is provided for use by the public; to add to such an automatic public transmission server, as a public transmission recording medium thereof, a recording medium which stores information; to convert a recording medium that stores information into a public transmission recording medium of such an automatic public transmission server; or to input information into such an automatic public transmission server. For the purpose of this item (ix-5), " automatic public transmission server" means a device which, when connected with a telecommunications line provided for use by the public, functions to perform automatic public transmission of information which is either recorded on the public transmission recording medium of the transmission recording medium of such device or is inputted into such automatic public transmission server; and in this item (ix-5) and below, "public transmission recording medium" means such part of the recording medium of an automatic public transmission server as is provided for automatic public transmission use.
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
(b) to connect with a telecommunications line that is provided for use by the public, an automatic public transmission server the public transmission recording medium of which stores information or into which information has been inputted. For the purpose of this provision, if connection with a telecommunications line that is offered for use by the public is made through a series of acts, such as wiring, starting of the automatic public transmission server and putting into operation computer programs for transmission or reception the last to occur of such series of acts shall be considered to constitute the act of connection.