柳田法相更迭:「補正」成立確証なく、見切り発車

2010年11月23日 2時36分 更新:11月23日 9時30分

参院予算委で自民・丸川珠代氏の質問中に言葉を交わす菅直人首相(右)と仙谷由人官房長官=国会内で2010年11月22日午後3時33分、藤井太郎撮影
参院予算委で自民・丸川珠代氏の質問中に言葉を交わす菅直人首相(右)と仙谷由人官房長官=国会内で2010年11月22日午後3時33分、藤井太郎撮影

 政府・与党は22日、10年度補正予算案の参院予算委員会での採決を25日以降に見送る方針を決めた。22日、国会軽視と受け取られる発言をした柳田稔前法相を更迭したが、その後も、野党が民主党の小沢一郎元代表の国会招致などに応じるよう政府・与党に求めるなど与野党対立が続き、当初目指していた24日の補正予算案成立を断念せざるを得なくなったためだ。野党は菅直人首相の任命責任も追及しており、菅政権にとっては厳しい局面が続いている。

 柳田稔前法相が首相官邸で菅直人首相に辞意を伝えた直後の22日午前8時半ごろ、民主党の鉢呂吉雄国対委員長は公明党の漆原良夫国対委員長の部屋を訪ねた。仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案を提出しないよう頼んだが、断られた。するとこう打ち明けた。

 「自民党とも話はついていません」

 参院民主党も水面下で動いた。先週末、幹部が自民党幹部に接触。「柳田法相を更迭するので仙谷氏らの問責決議案は出さないでほしい、と持ち掛けられた」とこの自民党幹部は明かす。だが、応じなかった。

 菅政権は前法相辞任をカードに10年度補正予算案の早期成立に道筋をつける筋書きを描いた。だが、内閣支持率急落で野党は足元を見透かした。22日の更迭劇は補正成立の確証を得られないままの「見切り発車」だった。

 21日夜、首相公邸で約2時間にわたった菅首相、仙谷氏、岡田克也幹事長、輿石東参院議員会長らの鳩首(きゅうしゅ)会議では、自民党だけでなく公明党や社民党の出方を見極められず、首相が一時、「(柳田氏を)続投させるしかないか」と漏らす場面もあったという。

 しかし、最後にとった選択は、「自発的辞任」の形をとった更迭だった。

 柳田氏を擁護してきた首相が罷免に踏み切れば、自身の態度の一貫性を失う。首相は22日、記者団に「本人から辞任するという申し出で辞表を受け取った」と述べた。柳田氏の辞表提出の形をとったのは「最低限のライン」(政府関係者)を守ったはずだった。

 しかし、柳田氏本人は辞任会見で、首相から早期の補正予算成立のためと説得されたことを明らかにしてしまい、この構図も崩れる。事実上の更迭に追い込まれた色彩が強まり、野党との交渉力は一段と低下した。国対幹部は官邸の方向を指さし「クビを差し出すならできるだけ高く売らないと意味がない」といら立ちを見せた。

 「民主党は仲間を守るという文化に乏しい。参院で民主党の数が少ないことにおびえすぎだ。問責決議案が出てもうろたえることはない」。輿石氏は辞任後の党役員会で野党に強硬姿勢で臨むよう主張した。しかし、すでに目指していた24日の補正予算案成立はあきらめざるを得ず、政権の行方自体に暗雲が漂い始めている。【須藤孝】

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