2010年11月22日 12時7分
【ロンドン会川晴之】積極的な外資導入で90年代以後、めざましい成長を遂げ、「ケルトの虎」と呼ばれたアイルランドが21日夜(日本時間22日未明)、欧州連合(EU)などに財政・金融支援を仰ぐ事態に追い込まれた。放漫財政が主因のギリシャとは違い、不良債権の増加による金融システム危機が直接の原因。レニハン財務相は「金融機関をダウンサイズする」と、国の経済規模にあった金融システムに再構築する考えを示した。
アイルランドは90年代後半から不動産・建設ブームが起き、地価は07年までの10年間で4倍以上に上昇した。しかし、07年上期にバブルが崩壊し、不動産価格はピーク時から約4割下落、「不動産バブルが過度に膨らみ、過度に落ち込んだ」(ホフマン中央銀行総裁)。現在も年率約4%の下落が続く。
さらに、08年にはリーマン・ショックで金融機関の経営が悪化した。政府は、09年1月にアングロ・アイリッシュ銀行を国有化するなど、公的資金をこれまで330億ユーロ(約3兆8000億円)を投入した。だが、不動産価格の下落を背景に追加投入が必要になり、政府はこれまでの投入分を含めて最大500億ユーロの投入が必要と見積もる。同国の国内総生産(GDP)の3割以上に当たる額だが、市場では「800億ユーロは必要」(HSBC)など、それでも足りないとの見方が強い。
同国の金融機関は、市場から資金が調達できない状態が続き、欧州中央銀行(ECB)からの調達額は、10月末現在で1300億ユーロと、ECB供給量の4分の1を占める。さらに、同国の中央銀行が350億ユーロを供給しており、資金繰りは「最後の貸手」である中央銀行頼みという危機的状況に陥っている。
一方、政治面でも綱渡りが続く。カウヘン連立政権は、4年間で150億ユーロの財政赤字削減策を検討中だが、野党は「失業拡大を招く」として反対を表明。支持率は与党・共和党の18%に対し、野党・アイルランド統一党は32%と逆転している。失業率は14%と高く、10年の経済成長率は0.2%(中央銀行予測)と低迷、物価下落も重なるデフレスパイラルに陥っている。