2010年11月21日 20時54分 更新:11月21日 21時44分
【ワシントン草野和彦】ヘッカー米スタンフォード大教授(元ロスアラモス国立研究所長)は米紙ニューヨーク・タイムズの取材に、今月訪問した北朝鮮で秘密裏に建設されたウラン濃縮施設で「数百の遠心分離機を見た」と証言した。北朝鮮側は「2000台が既に稼働中」と主張したという。北朝鮮は09年6月、ウラン濃縮作業への着手を表明していたが、実際に確認されたのは今回が初めて。大規模濃縮が事実なら核実験に使われたプルトニウム型のほかに、新たにウラン濃縮による核兵器開発への道が開かれたことになる。
米国務省はボズワース北朝鮮担当特別代表が20日、韓国、日本、中国を訪問すると発表した。北朝鮮では最近、過去に使われた地下核実験用の坑道の修復の動きのほか、実験用軽水炉とされる構造物建設が確認されており、対応を協議する。
20日の同教授の報告によると、施設は「超現代的な制御室」で操作されていた。北朝鮮側は遠心分離機は「国内で作ったが六ケ所村の施設などをモデルにした」と説明した。
同紙は、国際原子力機関の査察員らが国外退去させられた09年4月までは施設の存在は知られておらず、建設スピードは外国の支援を受けていることを強く示すと伝えている。
核兵器には、高濃縮ウランを利用したウラン型と使用済み核燃料から分離・生成されたプルトニウムを使うプルトニウム型がある。06年と09年に北朝鮮が行った2度の核実験で使用されたのはプルトニウム型とみられる。
澤田哲生・東京工業大原子炉工学研究所助教(原子力工学)は「理論上、2000台の遠心分離機があれば原発燃料は作れ、作業を繰り返せば核兵器に必要な高濃縮ウランを生産できる。1年くらいで核兵器1個分になるかもしれない」と話す。