税制改正:民主、税調の増税路線にクギ 慎重判断求める

2010年11月21日 9時34分 更新:11月21日 17時34分

11年度税制改正の検討項目を巡る議論の状況
11年度税制改正の検討項目を巡る議論の状況

 所得税や法人税の増減税を巡る政府税制調査会(会長・野田佳彦財務相)と民主党税制改正プロジェクトチーム(PT、中野寛成座長)の議論が、12月の税制改正大綱とりまとめに向け、大詰めを迎えている。配偶者控除の縮小や、法人税率引き下げの代替財源探しなど、増税論議を進める税調に対し、民主党側は「慎重に検討を」とクギを刺す提言を近くまとめる方針。12月の税制改正大綱とりまとめを目前に控えながら、政府・与党の調整は着地点が見えない状況だ。

 「最後までおりましたので、せっかくなので意見を。上の方(富裕層)の基礎控除引き下げで(相続)税収を確保するのがいいのではないか」。11日の税調全体会合で、篠原孝副農相が遠慮がちに、事務局の提示した相続税増税案に賛意を示した。だが、法人税、金融所得課税、相続税の順で議論したこの日の会合は、後半から途中退席者が続出。相続税についての意見交換はほとんどなかった。

 相続税以外でも、11年度の税制改正論議では、増税案件が目白押しとなっている。

 所得税と住民税について税調は「所得格差の拡大に、これまで税制面で十分な対応を(政府が)取っていなかった」(尾立源幸財務政務官)として、高所得者の負担増につながる控除制度の縮小を検討。所得が一定額以下の妻または夫を持つ世帯などの所得税を軽減する「配偶者控除」(年38万円)には年間所得1000万円の上限を設ける方向で、年間所得1500万円の場合、単純計算で年約12万円の増税になる。

 サラリーマンの必要経費として一定額を年収から差し引く「給与所得控除」も、1000万円の上限を設ける案が有力になっている。23~69歳の扶養親族がいる納税者の所得から38万円を差し引く「成年扶養控除」は、400万円以下に限る案が浮上している。

 これらの増税案に、各省政務三役で構成する税調メンバーから目立った反対論は出ていない。だが、粛々と進む税調の議論に、民主党の税制改正PTの中野座長は「あまり先走られて(増税を決められて)は困る」との不満を隠さない。

 PTのまとめた提言案は、給与所得控除の見直しに賛成する一方、配偶者控除や成年扶養控除の縮小について「慎重に判断すべきだ」と要請。来春の統一地方選を控え、「増税色の強い大綱にしてほしくない」との思いが透けて見える。

 増税案が今後、具体化していくほど、与党内の反発が強まるのは必至。財源確保を目指す税調と、けん制する民主党側との攻防は激しさを増しそうだ。

 ◇法人税下げ 財源の議論白熱

 一方、法人税率の5%引き下げの財源確保策を巡る税調の議論は白熱している。

 さまざまな業界に対し税を優遇する租税特別措置の見直しなどで約2兆円の財源を確保する案を提示した税調事務局に対し、各省庁は反発。税調の会合では「研究開発税制の廃止・縮小はどう考えても納得できない」(文部科学省)、「(石油製品の原材料の)ナフサへの課税は到底受け入れられない」(経済産業省)など、各省の所管業界の利益を代表するかのように、政務三役が反対論を展開している。

 民主党の提言案も、税調の提案するナフサ免税の縮小や研究開発税制の廃止を「行き過ぎ」と批判。代替財源確保のために企業への課税を強めれば「経済成長を阻害する恐れがある」として、法人税の実質減税を促した。

 だが、減税分を国債増発で賄えば、財政への信頼が損なわれかねない。五十嵐文彦副財務相は「減税分の恒久的な財源を見つけなければ、後世につけが回る」と一歩も引かない構えだ。【久田宏】

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