コラム

2011年01月18日号

【鷲見一雄の視点】
指定弁護士による強制起訴の意味E小沢氏の事情聴取拒否


●毎日新聞配信記事
 毎日新聞は18日、「陸山会事件 小沢氏、聴取を拒否 週内にも起訴へ」という見出しで次の記事を配信した。
 小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る政治資金規正法違反事件で、小沢氏の弁護団は17日、検察官役の指定弁護士が要請していた小沢氏本人に対する任意の事情聴取について、応じない方針を決めた。小沢氏の了承も得ており、18日に指定弁護士に伝える。指定弁護士による補充捜査は最終段階に入っており、小沢氏は早ければ週内にも起訴される見通し。

 指定弁護士は「供述調書で確認したい点がある」などと聴取を要請した。弁護団は聴取時の弁護人同席の可否や聴取内容について確認し、指定弁護士は14日に ▽弁護人1人の同席を認める▽検察が確認していない点を聴取するが、事前に明らかにするのは相当でない−−と回答していた。

 これに対し、弁護団内部では「強制起訴される立場で、聴取に応じる必要はない」との意見が大勢を占めた。小沢氏は東京地検特捜部の4度の事情聴取に一貫して関与を否定。聴取要請については弁護団に「対応を一任する」と伝えていた。【和田武士、伊藤直孝】


●読売新聞報道記事
 読売新聞は18日付朝刊で「小沢氏聴取拒否へ 今日指定弁護士に回答」という見出しで次の要旨の記事を配信した。
 指定弁護士の大室俊三弁護士は「聴取が実現しなくても起訴はできる」としており、小沢氏側の回答を受け、東京第五検察審査会の起訴議決に基づき、速やかに小沢氏を政治資金規正法違反(虚偽記入)で強制起訴するとみられる。今週中に強制起訴される可能性が出てきた。

 小沢氏の弁護団は12日、指定弁護士に対し、聴取の際に弁護士立ち会いをみとめるかどうかや、聴取内容についての質問状を送付。指定弁護士側は14日、弁護士立ち会いは認めると回答したが、聴取内容については「これまでの(検察の)聴取で聞かれなかった点を聞きたい」とすることにとどめた。これを受け、小沢氏の弁護団が聴取に応じるかを改めて検討していた。


●鷲見一雄の視点
 指定弁護士の小沢氏に対する聴取要請の経過は報道されており、大室弁護士の言っているように「強制起訴」に支障はない。
 小沢氏の「いずれの年の収支報告書について、その提出前に確認することなく、担当者において収入も支出も全てありのまま記載していると信じて了承した」という検察官に対する供述が不合理だから、指定弁護士が「これまでの(検察の)聴取で聞かれなかった点を聞きたい」と聴取要請をしていたものだ。

 小沢氏は政治資金規正法を守ろうとする意識が欠如している。
 小沢氏は
@ 政権交代が確実視されていた野党第一党の党首
A 政権政党の最高実力者
B 与党最大派閥の長
C 代表選善戦したが、敗れた
 地位は4転。

 検察は多かれ少なかれ、時の政権に有利に働く仕組みになっている。検察は体制に順応する側面を持っているのである。私は50年間、政治と検察の接点を観察し続けてきた者として断言して憚らない。田中前首相逮捕は三木内閣でなければなかった、のである。検察官の不起訴処分の当否をチェックする検察審査会の存在理由はそこにある。

 検察の不起訴処分はA政権政党の最高実力者の時代の処分。それでなければ「いずれの年の収支報告書について、その提出前に確認することなく、担当者において収入も支出も全てありのまま記載していると信じて了承した」などという、供述を受け入れる理由はあるまい。

 しかし現在の小沢氏は菅内閣において支配権力を持っている訳ではない。私は指定弁護士の聴取要請に応じる訳がない、と思っていた。
 指定弁護士は「小沢氏は『体制モラルの象徴としての政治資金規正法を空洞化させようという挑戦的な行動に出ている』と認識すべきである。

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