コラム

2011年01月18日号

【鷲見一雄の視点】
指定弁護士による強制起訴の意味F石川被告の弁護士に送った手紙の証拠評価


●読売新聞配信記事
 読売新聞は17日、《「自白迫られた」石川議員ら手紙…陸山会事件》という見出しで次の記事を配信した。
 小沢一郎・民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、同会元事務担当者・石川知裕衆院議員(37)(起訴)ら元秘書2人が、逮捕後の取り調べで、検事から自白を迫られたという趣旨の手紙を、勾留中に弁護士に送っていたことが分かった。

 弁護側は5日、東京地裁に手紙を証拠申請した。

 石川被告らの弁護士によると、石川被告は手紙で、検事から「(虚偽記入の)判断を単独でできるわけがない」「このままだと保釈されない」と迫られたと主張。池田光智被告(33)(同)も弁護士に同様の手紙を送っており、弁護側は捜査段階の供述に任意性がないことを示す証拠としている。

 石川被告側は、石川被告が検察審査会の小沢氏に対する起訴相当議決後の再聴取の模様を録音した記録に基づき、「検事に供述を誘導された」と主張しているが、近く小沢氏を強制起訴する指定弁護士の大室俊三弁護士は17日、「あれだけの立場の人が誘導されたとは思わない」と述べた。 (読売新聞)

 弁護側は 取り調べた検事を証人申請するという。(西日本新聞)

●鷲見一雄の視点
 検察と「政治と金」をめぐって30年戦争を繰り広げている小沢氏の側近の弁護人が「何を寝ぼけた」証拠申請しているのか、と思う。起訴されている.3人の秘書は小沢氏の「いずれの年(注・04・05年度)の報告書についても提出前に確認せず、担当者(石川元秘書ら)が収入も支出もすべて真実ありのまま記載していると信じて、了承した」という供述に不利益証拠を供述しないという壁、小沢氏防御のプロフェッショナルなのである。プロならプロらしい裁きをうけるべきだと言いたい。3人は故意犯だと私は思う。

 一方、取り調べ検事は秘書の防御の壁を突破、本丸に迫るのが職務である。「(虚偽記入の)判断を単独でできるわけがない」という疑問は国民の声である。執拗に尋問して当然ではないか。私は取り調べ検事の尋問は正当な職務だと評価する。誘導と捉えるのは飛躍した評価である。石川氏は政界最高実力者の側近の衆院議員、検事の誘導に屈さざるを得ない、かよわき庶民、を時・場所・状況に応じて使い分けているにすぎない。
 石川氏は検察の横暴を裁判所に訴えようとしているのではない。「政治資金規正法を守りなさい」という姿勢の検事の取り調べに対し、小沢氏の「いずれの年(注・04・05年度)の報告書についても提出前に確認せず、担当者(石川元秘書ら)が収入も支出もすべて真実ありのまま記載していると信じて、了承した」に合わせようと必死にもがいていたのだ。自分が小沢氏に不利な供述をしてしまったものだから、拘留中に法外な手紙を弁護人に送ったにすぎない。石川氏は任意での再聴取の際、検事をペテンにかけ、5時間に亘る再聴取の全過程をICレコーダーでひそかに録音していた人である。検察の横暴に対する正当な対抗策とは私には認められない。こんなことをした国会議員を私は寡聞にして知らない。拘置中弁護士に出した手紙も証拠価値はない。かえって政界の「すれっからし」の演技と受け取られると思う。

戻る