実戦オーラが充満していた。鎌ケ谷スタジアム横の室内練習場ブルペン。キレのいい直球で駒居ブルペン捕手のミットを響かせると、さらにカーブ、スライダー、チェンジアップ。この時期にしては異例ともいえる変化球を次々に披露。斎藤の肉体が躍動していた。
「変化球? 体の筋肉に(動きを)覚えさせたかった。刺激を与えたかったから投げたんです」
この日は1800人のファンが集結。熱い視線をシャットアウトして臨んだプロ初のブルペンは、実戦さながらの内容だった。昨年11月18日、明治神宮大会での決勝・東海大戦以来、約2カ月ぶりの“本格投球”。10球の肩慣らし投球後、投げ込んだ32球のうちカーブ6球、スライダー1球、チェンジアップ1球。実に計8球の変化球をまじえた。
プロの先輩たちでも、この時期は変化球は抑え気味。捕手を立たせて直球のキレを主体に調整を進めていく。右も左も分からないルーキーなら、プロとしての調整ペースをつかむことだけでも至難の業。だが、斎藤は違っていた。
「変化球を投げたのは(調整が)順調だから。捕手が座っている状態で投げる方がより実戦に近いです。次のクールでは座らせて投げられたらいいかなと思っています」。20日からの第3クールでは、さらに実戦モードに近づけることを宣言した。
実戦感覚を貫くのが佑ちゃん流だ。早大の4年間でも、この時期はブルペンで捕手を座らせた実戦投球で調整。東京六大学リーグで通算31勝という実績を築いた自負がある。
「マイペースでやりたい。人に流されず調整したいんです。普通通りに練習して(首脳陣に)みてもらいたい。(1軍の)実力がなかったら2軍で鍛え直してもらえばいい。格好つける必要はないと思う」
信じる道を進むだけ。斎藤が“佑々ペース”でさらなる実戦のステップを踏み越えていく。(山田利智)