2011年1月19日15時1分
東京都足立区で2009年、暴力団幹部が射殺された事件で、犯行に使われた拳銃を売ったとして、警視庁が指定暴力団稲川会系組長の石田謙次被告(66)=埼玉県三郷市=を銃刀法違反(譲渡など)容疑で逮捕していたことが同庁への取材でわかった。石田被告は既に起訴されている。
捜査関係者によると、拳銃と一緒に保管されていた軍手から検出されたDNAが石田被告と一致したのが決め手となった。拳銃を使った殺人事件の捜査で、実行犯の有力な供述がないまま拳銃の出どころを突き止めた珍しいケースという。
起訴状などによると、石田被告は09年6月下旬、配下の組員(63)らから回転式拳銃1丁とそれに合う実弾5発を20万円で購入し、同年12月30日午後、元タクシー運転手藤井勝被告(54)に30万円で売却したとされる。
藤井被告は同日夜、足立区椿2丁目のマンションで、指定暴力団松葉会系組幹部(当時68)の腕と腹をこの拳銃で撃ち、殺害。10年1月に警視庁に逮捕され、東京地裁で殺人罪などで懲役20年の実刑判決を受け、控訴している。
捜査関係者によると、この拳銃と実弾は、組員らが自分で使用する覚醒剤の購入代金などを得るため、石田被告に買い取りを持ちかけたという。購入した石田被告は「組事務所に置いておくのはまずい」と考え、拳銃と実弾をタオルにくるんでプラスチック容器に入れ、江戸川の中州の土中に埋めておいた。容器には石田被告が使っていた軍手も一緒に入れていたという。
石田、藤井両被告は約30年来の知り合いという。殺人事件前日の09年12月29日、藤井被告が石田被告に「拳銃が欲しい」と相談。石田被告は「50万円で売れるけど、お前だから30万でいい」と応じ、30万円で売ったという。