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都教委:都立高校生へ進学指導強化 受験優先に疑問の声も

「進学指導重点校」の東京大学合格者数(現役)
「進学指導重点校」の東京大学合格者数(現役)

 東京都教委は来年度、難関大学を目指す都立高校生への支援策を強化する。東大などの入試問題を分析して作る「虎の巻」を配ったり、有名大の学生をアルバイトで雇って受験生に助言してもらうなど、あの手この手を繰り出す。「進学指導重点校」を指定するなどして取り組んできたが、東大などの合格者数が思うように伸びないためだ。勉強時間の確保へ向け、部活動の時間制限を始める学校も多いが、専門家からは過度の受験優先に疑問の声も出ている。【田村彰子】

 都教委は01年以降、日比谷高や戸山高など7校を進学指導重点校に指定。これらに次ぐ5校を「進学指導特別推進校」に、14校を「進学指導推進校」とし、進学実績作りに力を入れてきた。重点校の東大合格者は、01年春の49人から10年春は83人に増えたが、学校別で大きく増えたのは日比谷だけ。減少傾向の学校もあり、教育委員からは「重点校の入れ替えが必要では」との厳しい意見も出ている。

 このため都教委は昨年7月、13年度からの重点校の新たな指定基準を「東大など難関国立大に現役で15人が合格」などと設定。来年度は約1億2800万円をかけ、支援を充実することにした。

 「虎の巻」は重点校の教員らが東大や一橋大、早稲田大、慶応大などの入試問題を基に作成し、2500部を全都立高に配布。受験生だけでなく、教員にとっても「どこまで教えれば試験に役立つか」分かる内容にする。

 進学指導経験が豊富な教員OBにも協力を依頼する。重点校などの生徒が受けた校内外のテストの結果を分析し、各校を巡回して進路指導のあり方を指南してもらう。

 また、重点校と特別推進校、推進校、中高一貫校の計36校は、難関大の学生アルバイトを3~5人ずつ雇う。各校OBなど身近な学生を中心に募り、放課後や土曜日の自習時間に受験のアドバイスをしてもらう。

 また、都教委が各校にも具体的な取り組みを提出させたところ、「下校時刻6時(冬季は5時半)の厳守」「1日3時間の自宅学習時間を確保できるよう、練習計画を各部で作成」などと、多くが部活動の時間短縮に取り組むことを示した。都教委の担当者は「進学を重視して指定されている学校なので、最終的には学力を重視してほしい」と話す。

 これについて教育評論家の尾木直樹・法政大教授は「都教委は進学実績を上げることに必死だが、高校生活を受験勉強に特化させて東大に入っても、国際社会では全く通用しない。そんな高校教育は疑問だ。豊かな文化活動をする思春期を過ごした人間こそ、将来世界で活躍することができるのではないか」と話している。

毎日新聞 2011年1月19日 10時52分(最終更新 1月19日 12時40分)

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