◆精神と身体の「合併症」
東京都東久留米市で体調不良を訴えた統合失調症の男性(当時44歳)の救急搬送先が見つからず翌日死亡した問題を取り上げた記事に、多くの反響が寄せられた。「統合失調症のめいが気絶して救急搬送を頼んだが、数カ所の病院に受け入れてもらえなかった」「精神科の治療をしてからでないとやけどの治療はできないと言われた」。読者の声からも精神と身体の「合併症」をめぐる治療体制の不備が浮かび上がった。
大阪府の男性(69)は昨年12月27日午後10時ごろ、統合失調症のめい(22)が外出先で突然気絶したため、救急搬送を要請した。しかし数カ所に受け入れを断られ、病院が見つかるまで20~30分かかった。男性は「大阪でも東京と同じようなことが起きている。受け入れ体制の整備をしてほしい」と訴える。
関東地方の20代の男性は軽度のうつ病などの治療を続けていた昨冬、事故で手足をやけどするなど重傷を負い、救急搬送された。検査の結果、手術が必要と診断されたが、医師は「命に別条はない。先に精神科の治療を終わらせてから来てほしい」と話した。
男性の母親は「手術後は息子を家族が監視し、病院には一切迷惑はかけません」と約束して手術をしてもらった。「うちは病院で診てもらえただけよかった」と振り返る。
東京都の30代の女性は記事を読み、精神科にかかっていた40代の知人男性を思い出したという。
男性は金曜日の夜、嘔吐(おうと)と激しい腹痛に襲われ、タクシーで総合病院に向かった。内科医に「処方された向精神薬の影響による腸閉塞(へいそく)で入院が必要」と診断されたが、「月曜日まで待ってかかりつけの精神科医に入院先を探してもらってください」と言われ、帰された。後日別の病院に入院して治療を受けられたが、病院側の対応に疑問を持ち続けていたという。
一方、東京都の大学病院の看護師長(44)は「(心身合併症患者の)受け入れ拒否ではなく不可能な状態」と指摘する。
夜勤時間帯は看護師が少なく、多忙を極める。合併症患者を受け入れれば患者につきっきりになり、他の仕事に手が回らなくなる。「医療現場の人間には大きなジレンマがある」と言う。【奧山智己】
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毎日新聞 2011年1月19日 東京朝刊