きょうのコラム「時鐘」 2011年1月19日

 七尾出身の力士・栃乃洋の連勝が止まって、大相撲の楽しみがいささか薄れた。初日から7連勝、序盤の土俵を盛り上げた

東の横綱と西の幕尻、左上と右下だけに白星が並ぶ珍しい星取表が残念ながら途絶えた。白星と黒星。勝ち負けを星の黒白に見立てるのは、趣がある。平幕が横綱を負かすと星が金に輝く。相撲の世界にも風流がある

雪が一服して、所々で地肌が顔を出す。調子の上がらぬ力士の星取みたいに、黒の世界が増えていく。白と黒が交じるのも、ありがたくはない。冷え込むと、途端に雪道が滑って危うさを増す

年末以来の雪で、転んでけがをする人が増えている。暖冬が続いたせいで、雪道の歩き方を忘れたのか。これしきの雪で、と首をひねりたくなるが、車優先の除雪がまかり通って、でこぼこの雪の歩道は確かに歩きにくい。ドカ雪だけが、雪の難儀ではなくなった

勝ち負けが交互に続く相撲を、「ヌケヌケ」という。大事な白星が一日ごとに抜け落ちる。緊張の糸が抜けるからだろう。「曇り時々雪」と、天候もヌケヌケが続く。白黒交じる雪道、油断大敵と肝に銘じたい。