北九州市に拠点を置く指定暴力団工藤会が、昨年末に全国各地の暴力団に大量の歳暮を送る際、送り主や送付先の記入欄に暴力団の組織名や肩書を書かず、個人名にしていたことが福岡県警などへの取材で分かった。工藤会は昨年夏、同県暴力団排除条例を理由に中元の発送を運送業者から断られ、同様の条例がない山口県で発送していた。県警は、今回も条例による規制を逃れるため、暴力団の体面にこだわらずに一般人を装った、とみている。
捜査関係者などによると、工藤会は昨年11月末-12月上旬、北九州市の運送会社支店を通じ、食料品など歳暮数百点を、山口組(神戸市)をはじめとする全国の指定暴力団やその傘下組織に送付。送り主欄には「工藤会」の組織名や肩書は書かず、幹部の個人名のみを記入し、送り先も組幹部の名前だけだったという。
昨年4月の暴排条例施行後、県警は送り主や送付先に暴力団名やその肩書があった場合、暴力団活動の助長を禁じた条例に抵触する恐れがあるとして、配送を断るよう県内の運送会社を指導している。
条例施行以前、工藤会は歳暮を出す際、運送会社の担当者を組事務所に出向かせていたという。今回は、歳暮を担当する組員たちが車で複数回に分けて、品物を運送会社に持ち込んだらしい。
工藤会は昨夏、暴排条例がない山口県の運送会社の支店から中元を送っている。その後、運送会社に対し、工藤会の傘下組織から「こういう表現ならいいのか」などと、条例への抵触が回避できるような宛名書きの問い合わせもあったという。
ある運送会社関係者は「自社の運送約款に暴力団を拒絶する規定がないため、個人名で注文されたら発送を受けざるを得ない」と現状を説明する。
このため県警は警察庁を通じて運送業界を所管する国土交通省に、暴力団の利用を拒否できるよう、運送業者の標準運送約款の変更を要請した。ただ国交省自動車交通局は「利用者が暴力団員と判明した場合に運送を規制できるのか検討を進めているが、利用者にもたらす不利益なども考慮して考えなければならない」と慎重な姿勢だ。
=2011/01/19付 西日本新聞朝刊=